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2017年7月9日日曜日

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Photo : 2017.06.04  10:17 JST

2017年6月24日土曜日

【部品】Transition Frequency : fT

【トランジスタのfT
トランジスタのfT測定
 トランジスタのfTについてエミッタ電流:Ieとの関係を調べてみました。Ieはコレクタ電流:Icと考えても良いでしょう。
 トランジション周波数:fTは各トランジスタ固有の一定した値のように思いがちです。しかし同じトランジスタであっても動作電流によって大きく変化します。 従ってその使い方によって高周波特性も大きく違ってきます。

測定したトランジスタ
2SA70、2SA101、2SA495Y(旧型)、2SC372Y(旧型)、2SC1815Y、2SC1855(フォワードAGC用)、2SC2668Y(2SC1923Y同等)、S9018H(中華石)

 測定した中から代表的なものをグラフにしました。旧型と言うのはいわゆる「袴(はかま)」付きシルクハット型パッケージです。

測定条件
 コレクタ・エミッタ間電圧:VCE=10V(DC)。 測定周波数は仮測定して適宜選択します。グラフ中に記載。 エミッタ電流を変化させながらfTを測定します。 空調の効いた25℃の環境で測定しました。 比較によれば精度は±20%くらいのようです。  研究のため、一部で規格をオーバーする条件で測定しています。

                   ☆

 2SC372Yの代替は2SC1815Yが定番ですが、HF帯では意図した性能が得られないことがありました。特に小さい電流で使うと芳しくありません。 グラフを見ると2SC372Yの方がRF向きだったようです。
 中華トランジスタ:S9018Hは、以前の予想(←リンク)とは違いました。実測してみたら使い易い所にfTのピークが来ています。これは好都合な結果でした。
 2SA70と2SA101はRF用のゲルマニウム・トランジスタです。高周波用とは言ってもせいぜいこの程度でした。周波数特性が良くなかったゲルマの石で四苦八苦した当時が思い出されますね。

                  ☆ ☆

 トランジスタの高周波性能はfTだけでは決まりません。Cob や rbb' が小さいことも重要です。 しかし多くの場合fTの高いトランジスタが有利なのは間違いないでしょう。 目的に合ったトランジスタを選び最適な動作条件で使うことがRF回路成功の秘訣でしょうか?  トランジスタのfTなんて規格表に載っているデバイスの基本的な項目です。どちらかと言えば地味なテーマでしょう。しかしこうして実際に求めてみると色々なことが見えてくるものです。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2017年5月29日月曜日

Moon


2017.05.29 18:54 JST

2017年4月26日水曜日

【回路】RC Phase Shift Oscillator

【回路:RC位相シフト型正弦波発振器】
2石のRC位相シフト型発振器
 簡単に作れる正弦波発振器として、RC位相シフト型発振回路があります。 左の回路は意外に人気があるようで、Web上では良く見掛ける低周波の『正弦波発振器』です。だいたい数10Hzから20kHzのような可聴周波数域の発振に使います。

 左図は「定本:続トランジスタ回路の設計」(CQ出版社)の回路をアレンジしたものです。この本を参考にした回路はネットでも良く見掛けます。理論的な解析は検索で容易に発見できますし教科書にも載っているポピュラーな回路です。「Phase shift oscillator」(←リンク) ここでは実験結果に基づきRC移相シフト型発振器を製作する際の要点などを自家用の資料として纏めます。 トランジスタ2石の回路と、OP-Ampを使った回路の2種類についてテストします。

 『確実に起動でき歪みの少ない低周波の正弦波発振器』を作ることは一つのテーマのようになっているので過去のBlogで何回も扱っています。 低周波の正弦波発振器にあまり興味を覚えないようでしたら退屈で面白くないと思いますので・・・。以下略。

                   ☆

 まずはトランジスタ2石で作ってみます。発振周波数は1kHzで設計しましょう。 この発振器は1石で作ることもできまが、2石使うことで発振が容易で、発振周波数の誤差が少なく、歪みも小さくできます。同じ2石でも幾つかのバリエーションがありますが、図の回路は最も合理的なものだと思います。 今ではトランジスタは抵抗器:Rやコンデンサ:Cと言ったRC部品並みのお値段なので倹約せずに2石使うと有利です。 但し、図の回路はトランジスタ・アンプ固有の非直線性が現れるので、入念に調整してもあまり低歪みは期待できません。

 バルクハウゼンの発振条件(←リンク)には「振幅条件」と「位相条件」の2つがあります。両方が満たされる周波数で発振します。これは必要条件です。 図の発振回路は3段のRC移相回路を使い、そこで位相が180度が回る(進む)周波数にて発振させようとするものです。RC回路を3段通過する信号はその周波数に於いて1/29に減衰するのでアンプは29倍以上増幅しなくてはなりません。反転型アンプを使うと位相は-180度回わるので、合計の移相は0度となって位相条件も満足されます。(ループを一巡した位相の回りが、0度あるいは360度の整数倍が位相条件です)

 アンプは反転型で利得(ゲイン)が29倍以上あるものを使います。ゲイン過剰だと飽和して歪みますが、29倍ちょうどでは他の何らかの原因によって発振しないことがあります。従って具体的には作ってからQ1のエミッタにある可変抵抗で波形を見ながら丁度良い所に調整します。 RC移相回路は図のようなハイパス型(進み移相型)と後述のOP-Ampを使う例のようなローパス型(遅れ移相型)があります。

 発振周波数は図中の式の通りなのですが、計算と完全には一致しません。アンプの入力インピーダンスは無限大ではない、エミッタ・フォロワの出力インピーダンスはゼロではないなどの誤差要因が存在します。 またRC部品には誤差が付き物です。何らかの調整箇所を設けないとジャスト目的の発振周波数にはなりません。発振周波数は図のように位相シフト回路の一部を加減して調整することができます。この方法は大きく周波数を変えるのには向かないので微調整専用でしょう。

 発振の振幅と歪みには密接な関係があり、Q1のゲインを調整して小さめの振幅で発振させればトランジスタの非直線性から逃れられます。 しかし発振条件ギリギリに合わせれば周囲温度や電源変動などの影響を受けやすくなります。電源のON/OFFで発振が再起動しなかったり振幅が不安定になりがちです。従って確実に発振が起動でき、発振振幅も安定する状態に調整します。その結果、歪み率は幾らか悪くなりますがやむを得ません。調整如何ですが、歪み率は悪くても5%以下にはできるでしょう。

 実際に製作して感触を確かめてみました。トランジスタは電流増幅率:hFEの大きなものを使うと発振が容易です。 2SC1815で言えばYよりGRランクの方が良さそうです。hFEが非常に大きなSuper-βトランジスタ:2SC3112、2SC3113も良好でした。内部ダーリントン構造の2SC982でも旨く行きます。 良い性能を得るためにはバイアス調整が大切です。図中に青字で記入されたDC電圧よりも大きく違うようなら、R4を加減して調整します。

                   ☆

 意外に使い物になりそうな感触を得ました。 シンプルさが取り柄ですから、さらなる発振振幅の安定性や低歪みを追求するなら他の回路にすべきでしょう。 しかし数%の歪みを許容できるなら良い回路です。それに人が耳で聞くだけの用途ならその程度で十分な性能です。当然ですが弛張発振器よりも遥かにきれいな澄んだ音がします。

                  ☆ ☆

【 OP-Ampを使った位相シフト型発振器
 RC回路を使った正弦波発振器としては、Wien Bridge発振器(←リンク)がポピュラーです。市販の多くの低周波発振器でも使われています。
 しかし、RC位相シフト型で作ることも可能で、左図の回路で歪みが0.01%以下のたいへん奇麗な正弦波が得られます。

 ひと言で言えば上記の回路をOP-Amp化したものです。但しOP-Ampは2石のアンプと比べれば遥かに高性能ですから発振周波数の再現性が良く、直線性も良いので歪みは小さくなります。 テスト回路の発振周波数は同じく1kHzです。

 OP-Ampは1回路でも作れます。 その場合はダイオード・クリッパ式で振幅安定することが多いようです。 ここでは歪みの増加を嫌って豆電球による「振幅安定回路」を使いました。 その都合でOP-Ampを2回路使いますが安価なOP-Ampなのでコスト・パフォーマンスは悪くありません。これで発振の起動が確実で振幅の安定化と低歪みが両立できます。

 2石の回路では振幅とゲイン(増幅度)が負の関係・・・発振振幅が大きくなると増幅度が下がる特性・・・を利用して発振振幅を保っていました。しかし、その方法では低歪みになりません。要するにアンプの非線形性を利用して発振振幅を保っている訳です。発振振幅はトランジスタの動作状態の影響も受けて変動します。
 ここでは豆電球に加わる電圧と抵抗値の特性を利用して振幅を安定化します。 以前テストしたWien Bridge発振器と同じ豆電球を使っています。 何かの原因で発振振幅が大きくなると、電球に加わる電圧も大きくなります。 その結果、電球の抵抗値が増加してアンプの増幅度が下がります。 逆の場合は電球の抵抗値が減少するので増幅度が上がって振幅が増えるように作用します。電球の働きで発振振幅の変動が抑えられほぼ一定の発振振幅が維持できます。

 このような目的に適した電球が手に入れば製作・調整は容易です。歪み率は難しいこと抜きで0.01%くらいにできます。こうした豆電球は特殊に思えますが、インターネット時代の今となってはそれほどでもありません。見付け方と入手方法については後ほど触れます。

 発振周波数はR1(=39kΩ)で微調整できます。 R1として33kΩの固定抵抗器と10kΩの可変抵抗器を直列にします。 この方法は大幅な周波数可変には向きませんが微調整なら支障ありません。 回路としての発振周波数の再現性は良好なのですが、RCの誤差が影響します。ピッタリ合わせるには調整を要します。

参考:OP-Amp自身の位相回転があって発振周波数に誤差を生じます。但し、1kHzあたりなら影響は大きくありません。

 発振振幅を約7Vrms(=19.8Vpp)に調整すれば歪み率は0.01%あたりになるので、2石発振器の1/100以下です。高調波は-80dB以下ですからHAM局の2トーン発振器にも最適です。 汎用の発振器としても使い易いです。

試作の様子
 OP-AmpにNE5532Pを使います。 振幅安定化に豆電球を使ったので、低い負荷抵抗を十分ドライブできるOP-Ampを選びます。NE5532Pは2回路入りなのでワン・パッケージです。

 5532型はオーディオ用の設計で、負荷ドライブ能力のほか歪みやノイズも良好なのでこの回路に向いています。Signetics社が開発した傑作OP-Ampの一つです。 今では5532型も高くありませんが手持ちがあるなら4558型でも良いでしょう。但し幾らか歪みは大きくなります。なお、OP-Ampを換えても回路定数の変更は不要です。

 部品数が少ないので容易に作れます。 豆電球は端子間抵抗が約200Ωの状態で動作しています。その状態のとき振幅の制御が旨く効くように設計してあります。振幅が大き過ぎるとクリップ歪みが現れます。小さすぎると制御範囲が狭くなって安定性が悪くなります。また、振幅が落ち着くまでの過渡応答時間が長くなります。 従って設計条件の付近に調整すべきです。VR1で発振振幅を6〜8V(rms)にします。4558型OP-Ampの時は5〜7V(rms)が良いです。 なお、OP-Ampによる性能の違いを纏めた一覧表を後ろの方に掲載しています。

 観測・評価や調整にはオシロスコープや歪率計を使いました。 そのような測定器がなくても、発振電圧の調整はマルチメータ:テスター(アナログ、デジタルを問わず)だけで十分可能です。メータの表示は実効値(rms)ですから、その読みが6〜8VになるようVR1を調整すればOKです。 詳細な評価や検討にはそれなりの測定器が必要ですが、評価が済んだ回路はごく一般的な測定器だけで調整できます。手近の道具だけで十分作れるのです。


位相シフト部
 RCによる三段の位相シフト回路です。 1段当たり60度位相が遅れます。 四段や五段の移相回路も考えられますが、複雑さや信号の減衰度を考慮して三段が最もポピュラーなのでしょう。

 コンデンサ:C及び抵抗器:Rの誤差で発振周波数に誤差を生じます。また周波数安定度も影響されます。

 写真ではマイラー・コンデンサ(緑色)を使っています。 低周波回路では一般的ですが温度特性はまあまあの所です。 フィルム系コンデンサならスチロール型やポリカーボネート型が最適です。 ほかにNP0特性のセラコンやマイカコンデンサも良くて、周波数安定度は向上します。間違ってもバイパスコンデンサ用のセラコンを使ってはダメです。発振はしますが・・・まあ、やってみればわかります。 抵抗器もカーボン型ではなく金属皮膜型にします。

発振振幅安定化回路
 豆電球の特性を使って発振振幅を一定に保つ回路です。 ここで使った電球は加わる電圧が2Vの時、約200Ωの抵抗値を示します。 

 電源が投入されたとき、まだ電球は冷えているので抵抗値は50Ωくらいです。 従って、U2の部分のゲインは、G2=620/50=12.4倍です。 U1の部分のゲイン:G1は設計上では約9倍です。 従って起動時には全体でG1×G2=9×12.4=111.6倍くらいのゲインになっています。 発振の持続に必要なゲインの29倍を大きく上回るので発振は容易にスタートします。(注:ゲインは絶対値で考えています)

 発振が始まると電球に加わる電圧は急上昇します。 その結果、電球の抵抗値は200Ω前後に上昇してU2部分のゲインが約3.2倍になって、全体のゲインが29倍付近になるところで安定します。 電球の抵抗値が200Ωになるのは、加わる電圧が約2V(rms)のときです。U2の出力はその約3.2倍となり、発振器としての出力電圧は約7V(rms)になる筈です。

                   ☆
コラム:電球の入手方法】
 ここで使ったような豆電球も今ではMouserJapanの通販で入手できます。 例えば低周波発振回路によく使われる電球として#327(←リンク)と言う28V/40mAの電球が売られています。ほかにも#1869(←リンク)も使えます。 なおLED化された代用品も売られていますが、光らせるのが目的ではないためここでは使えません。ご注意を。

振幅安定に向いた豆電球の探し方
 手持ちから使えそうな豆電球を探すには12V加えた時の抵抗値に着目します。400〜600Ωになるような電球を見付けます。12V加えたとき20〜30mA流れる豆電球です。そのような豆電球なら2V加えた時200Ω前後の抵抗値を示すでしょう。

 24V用の電球にも適したものがあって、24Vで40mAくらい流れる電球が良さそうです。こうした電球の特性を評価した例がこちら(←リンク)にあります。

 なお、3V程度で点灯させる懐中電灯用の豆球には適したものはありません。 回路中では『2〜3Vの電圧が加わった状態で使う』と書いてあるため、そのような豆電球が良いと思うのかも知れません。 しかし、光らせるのが目的ではないので3V用の豆電球では抵抗値が低すぎるのです。OP-Ampに電流ブースタを追加して無理矢理使う手もない訳ではありませんが、たぶん電気のムダです。(笑)

 どうしても電球を使いたくないのなら回路は複雑化しますが、発振振幅の安定に整流回路+FETを使う方法や、LED+CDSを使う光を介した利得制御方法もあります。 しかし豆電球を使う方法が最もシンプルです。

発振波形】 
 発振波形です。この状態で歪み率は約0.01%です。 オシロスコープでの観測では歪みを見分けることはできません。また、デジタル・オシロにはFFT機能が付いていることも多いのですが、オシロのA/D変換器は8bitかせいぜい10bitなので分解能不足のため正しく評価できません。最近では12bit分解能の高性能デジタルオシロも登場していますが、それでも不足です。0.01%と言う歪み率はそれくらい小さいのです。

 この写真のように、19〜20Vppになるように調整します。それだけで0.01%の歪み率になります。 OP-Ampに4558を使った時はやや小さめの16〜18Vppにします。4558型ではやや歪みが増えて0.015%くらいになるでしょう。

 豆電球の種類が異なる場合は、R6(=620Ω)を加減します。 具体的には電球にDC2Vを加えて電流を測定しその電流値から抵抗値を求めます。(テスタで抵抗値を測ったのではダメです) その計算値の約3倍になるようR6の抵抗値を決めれば良いです。 電球の抵抗値が大きいならR6も大きく、小さい時にはR6を小さくしますが、OP-Ampでドライブできなくなるため限度があります。現状の620Ωあたりが下限です。 従って、なるべくなら抵抗値が大きめの豆電球が良いことになります。 しかしAC100V用のナツメ電球は旨くありませんでした。抵抗値が高いのは良いのですが、加わる電圧が2V(rms)程度ではフィラメントの温度が十分上がらないのです。

 類似の方法にはビード型サーミスタを使う方法があります。但しサーミスタの特性は電球とは逆なので位置を入れ替えます。 豆電球のところを普通の抵抗器に置き換え、R6の部分をサーミスタにします。 なお、トランジスタ・ラジオに使うディスク型サーミスタ(例:D-22Aなど)は使えません。 周囲温度の影響を受けて発振状態が変動する発振器になってしまいます。

発振周波数と歪み
 移相回路は抵抗器:R1〜R3は39kΩ(±1%)で、コンデンサ:C1〜C3は0.01μF(±20%)で設計しました。 計算上の発振周波数は1kHzになるのですが、実測では2%くらい低くなりました。これは主にコンデンサの容量にプラスの誤差があったためです。

 コンデンサの容量を加減するのは容易でないので、抵抗値を調整して周波数を合わせます。 具体的には、R1を33kΩ+10kΩの可変抵抗器に変更します。これで1,000Hzちょうどに調整できます。

 SSB送信機テスト用のツートーン発振器は、1kHzと1.575kHzの2周波数を使うのが標準的です。 1.575kHzの発振器を作るには、R1〜R3を24kΩで設計して微調整します。コンデンサ:C1〜C3は0.01μFのままで良いです。 写真は1,000Hz、7V(rms)の実測状況です。 周波数はVR2によって1,000Hzちょうどに合わせています。 表示の歪み率は出力が6.8V(rms)の状態です。

OP-Amp比較まとめ
 一覧表は各種OP-Ampについて歪み率の実測結果を示しています。 発振周波数は1,000Hzです。 発振振幅は回路図のVR1で幅広く調整できます。

 表は発振振幅を3V(rms)から1V(rms)刻みに大きくしたときの歪み率です。 また、オシロスコープの管面で見て明確な歪みが現れる寸前の出力電圧を最大出力電圧としました。その時の歪み率も参考に記載しています。もちろん、その最大出力電圧で使うものではなくて、実用上は必ず内輪の出力電圧までで使います。 OP-Ampの負荷ドライブ能力と固有の直線性が歪みの違いとなって現れています。

 なお、電球を使った振幅安定化回路は回路固有の限界があって歪みはある値以下にはなりません。これは熱的な「慣性」を時定数として使っているためです。 もし、その時定数が無限大なら電球そのものは歪みの原因にはなりません。しかし、それでは振幅安定化もできません。相反する効果のバランスの上に成り立っているため完璧ではないのです。だから歪みが残留するのです。 それでもOP-Ampを選べば0.01%以下の歪み率が得られます。 それに、0.01%以下の歪み率と言うのはかなり良い数字です。 何がしか対策しなければ、1%以下の歪み率を得るのは簡単ではありません。これは実際に発振器を作ってみれば実感できます。

 確実に0.01%以下の歪みを得たいなら、NE5532P、LM4562NA、NJM4580D、NJM2068DDが良さそうです。その上で、発振振幅を5〜7V(rms)にセットすれば良いでしょう。

 この表は特定の回路、特定の部品を使ったケースに於ける性能比較です。従ってまったく別の回路への適用には慎重さが必要です。

                 ☆ ☆ ☆

 超々低歪みとは言えないので少々中途半端かも知れません。 ほぼ同等の歪み:0.01%ならWien Bridge発振器でも可能なので特徴が見いだせない気がします。 ここでは豆電球を使った位相シフト型発振器の振幅安定方法を試してみました。この試みは、なかなか旨く行ったと思います。OP-Ampによる違いも明らかになりました。 OP-Ampと豆電球で作った場合、全般的に見てWien Bridge発振器よりも調整は容易な印象を受けました。 移相シフト回路はブリッジ回路ほどシビアではないからでしょう。そのあたりが特徴と言えそうです。

 振幅安定に豆電球を使った回路はシンプルで調整もいたって容易で、発振の起動も確実です。容易に低歪みが得られますから、歪みの評価手段を持たないときには有利かも知れません。

 悪くない回路なのですが、ネット上でポピュラーな2石の発振回路はトランジスタの選び方によっては発振が旨く起動しないことがありました。簡単そうに見えても意外に手強いこともあるようでした。 OP-Ampを使う方が難しそうに見えますが、発振回路としてはむしろ容易です。配線を間違えなければ一発で0.01〜0.02%くらいの低歪み発振器が作れます。 自身の定番として登録(記憶)しておくことにしました。(笑)

 ところで、この Blogはセカンドバージョンなのです。 OP-Ampを使った部分は完全に入れ替えています。 最初、タカをくくって(今になって思えば性能が悪すぎる)μA741CHを2つで試作してみたのです。一旦はその結果でBlogを纏めました。 しかし結果を振り返えればドライブ能力が低いのは歴然で、3V(rms)で0.1%の歪みがやっとと言う有様でした。 それでも2石の回路から見れば1/10なのですが、いま一つ釈然としません。μA741CHの選択は『失敗』と言えるでしょう。 しかし旨くなければやり直せば良い訳です。 そこで選択肢の多いDualタイプのOP-Ampで再試行したのです。 その結果OP-Ampを選ぶことで大きめの出力が得られ歪みも更に一桁減らすことに成功しました。 もはや部分修正では済まずセカンドバージョンに書き換えることにしたのです。 きちんとした性能を出すには回路と素材の吟味が大切だと言うアナログの基本を再認識した思いです。簡単で程よい性能が得られる「正弦波発振器」として纏めることができました。

 やるべきテーマは他にも沢山あるのですが、あまりにも特殊な実験は一般性がありませんし、また要素的すぎる実験では目的不明で面白くもないでしょう。 従ってシンプルでわかり易いテーマが主体になってしまいます。 まあ、これもやむを得ませんね。 今回も作る人は稀だろう思いますが、正弦波発振器を作りたくなったとき思い出してもらえたらと思っています。de JA9TTT/1

# 手持ちの豆電球にゆとりがあるので必要な方に差し上げます。作りたくなったらメールでもどうぞ。

(おわり)nm

2017年4月11日火曜日

【測定】Repair an oscilloscope CO-1303G

【測定器修理:オシロスコープ CO-1303G】
 【TRIO CO-1303Gとは
 おもにSSBでオンエアするアマチュア無線局のオンエアモニタ用として作られたオシロスコープです。AM局にもたいへん有益だった筈ですが、時代は既にSSB全盛になっていました。  CO-1303Gは1970年代半ばに販売された製品で、定価38,500円だったようです。(TRIOは現在のKENWOOD社)

 何がアマチュア無線局向きだったかと言えば、低周波の2トーン発振器を内蔵しており、さらに送信中の電波をピックアップする回路が付いているからです。 オンエアしながら自局電波をモニタするのにはたいへん便利です。

 当時、一般用として販売されていたCO-1303Dと言うオシロスコープに上記の発振器とRFのピックアップを追加したのがCO-1303Gなのです。 その後はデザインを無線機に合わせた「ステーションモニタ」と称する機器も販売されましたが、それらの前身となる測定器でしょう。

 現在では広帯域なオシロスコープがあるのでありがた味はありません。 しかしその当時はCRT(←リンク)の偏向板にRFを引き込む「直接軸による観測」が一般的なRF波形の観測方法でした。 当時CRTの偏向板が引き出されたオシロスコープはたくさんありましたが、RFのピックアップ回路を作るのが面倒でした。CO-1303Gはその部分を内蔵しています。

 そろそろSSBが全盛になり観測には2トーン発振器が必須だったので合わせて内蔵したのでしょう。 スペアナのようにIMD特性まではわかりませんが、少なくともアンプが飽和してフラット・トップになっているとか、バイアス不適切でクロスオーバー歪が酷いなど、SSB波の品質は十分判断できました。

 オンエア中のSSB波をビジュアルに監視する目的には今でも有効でしょう。 交信中の相手局に「当局の音はどうですか?」なんて聞くよりも遥かに頼りになります。 お世辞抜きで電波の状態がわかりますからね。

                   ☆

 あまり記憶にありませんが20年以上前に中古品を手に入れたものでしょう。 高級なオシロを常時モニタに使うのは勿体ないですし消費電力も大きすぎます。それに冷却ファンがうるさいです。 CO-1303Gのような簡易なオシロは今どき「オシロとしての使い道」はあまり考えられません。しかしオンエアモニタ用なら十分活躍できそうです。

 購入当時はきちんと使えたと思います。 最近になってシャックの整理中に「発掘」したのですが久しぶりに灯を入れたら不調のようです。 今さら直しても仕方ないとは思ったのですが、半ば興味本位で修理してみました。 結論を言うと、オイルコンの全滅が原因でした。以下はその修理記録です。 あまり役立つとも思えませんが。(笑)

CO-1303Gの回路図
 姉妹機のCO-1303Dの回路図ならネット上で幾つも発見できました。 しかしCO-1303GはHAM用だったので販売台数が少なかったのでしょう。回路図は見付けられませんでした。 幸い手持ちの資料から回路図が見つかったので修理に役立ちました。但し殆どの部分はCO-1303Dと同じでした。

 このオシロは「強制同期式」のオシロスコープです。入力波形を管面に止めて見ることはできるのですが、時間軸(X軸)が校正されないため波形の周期や周波数を読み取ることはできません。それでも波形の良し悪しくらいなら十分良くわかります。 でも「強制同期式」のオシロなんていま一つですよね。(笑)

 ちなみに、今ある殆どのオシロスコープは「起動掃引式(トリガ・スイープ式)」のオシロスコープです。これは時間軸(X軸)が校正され、観測波形の時間周期や周波数を読み取ることが可能になるからです。 その昔、国産オシロのメジャーメーカーであった岩崎通信機は自社の「起動掃引式オシロスコープ」を「シンクロ・スコープ」と称していました。 そのため日本国内においては「シンクロ」の名が一般化していました。 ベテラン・エンジニアが「シンクロで波形を見ろ!」とか言ってましたね。 いまではオシロスコープと言えばすべて「起動掃引式」が常識です。 これはデジタル・オシロでも同様です。 オシロのことを「シンクロ」って言うのは年寄りだけでしょう。

 肝心の故障原因ですが、図の赤で囲ったコンデンサが劣化していました。 オイルコンが4つと電解コンデンサが一つです。 このオシロではオイルコンは図の電源回路部分に4つあるだけです。 従って、オイルコンは全滅と言う訳です。 ネット上にも同様の修理を試みる例が散見されますが、いずれもオイルコンの劣化(絶縁低下)によるものです。

 以前から喚起していますが、オイルコンは年数の経過で必ずと言って良いほど劣化するため使ってはいけない電子部品と言えます。 特殊なものを除けば、すでに生産されておらず、いま売られているのは怪しそうな長期在庫品だけです。そうしたオイルコンはすでに劣化済みか時間の問題です。

 話しは変わりますが、CO-1303Gの特徴は青矢印で示した部分です。図右上のRFピックアップ回路と、図下方のツートーン発振器です。 ツートーン発振器は低周波でありながら、LC共振回路を使った珍しい回路が使われています。GDMのようなコルピッツ型LC発振回路になっています。RF屋さんが設計されたんでしょうかね。(笑) CR回路よりもQが高いため簡単な割に発振波形は良いようです。 発振周波数は概略で1kHzと1.575kHzです。これはSSB送信機テスト用の標準的な周波数です。

 オシロスコープとしてのメイン回路はCO-1303Dとまったく同じで、プリント基板もそっくり流用しています。 垂直軸は入力にFET(2SK30-O)を使ったハイ・インピーダンスな差動形式の広帯域アンプで全段DC結合になっています。 また、水平軸(時間軸)はトランジスタを2石使ったノコギリ波発振器で作っています。 垂直軸アンプの最終段から信号を引き出してノコギリ波発振器に加えることで入力信号に同期が掛かるようになっています。たいへん旨く同期が掛かるので波形観測は容易です。 CRT(いわゆるブラウン管)は直径3インチ(75mm)でフラット管面の丸形です。75ARB31と言う静電偏向型のCRTが使われています。 安価なCRTなのでしょう。内面目盛りではないためスケールは少々読みにくいです。

 十分な輝度を得るためにCRTは1kV以上の高電圧が必要です。電源トランスの500V巻線を高圧整流用ダイオード2本で両波倍電圧整流しています。 偏向板へ直線性の良い十分な偏向電圧を与えるためにY軸の広帯域アンプ、及びX軸の掃引回路の出力部には約200Vの電源電圧を与えています。 このように半導体を使った測定器でありながら、かなりの高電圧を扱うため修理に当たっては感電に十分な注意が必要です。

警告:機器の修理は事故や怪我のリスクを伴います。自身の判断で十分気をつけて行なって下さい。修理の相談はご遠慮を。

 【音がして、やがて輝度低下
 故障確認中の様子です。 電源投入直後は輝線も見えて正常そうなのですが、やがてほとんど光らなくなるのです。

 直後の輝線が見えている状態でも、間欠的に「チッ」と言う放電のような音が聞こえます。やがてその放電音はしなくなりますが、輝線も消失するのです。

 このような症状から考えて、まちがいなく高圧電源部に放電現象などの不具合があるのだろうと当たりをつけました。 このオシロの高圧電源回路はごく単純な回路になっています。 従って部品数も限られるため全部を当たっても数は知れたものです。 放電音がしていたのはC124あるいはC125の0.1μFで耐圧1,000Vのオイルコンデンサらしいことを発見しました。故障箇所を分離するためにテストをしている様子です。一旦CRTを外さないと電源部分にアクセスできません。

C124とC125
 写真上方に見える2つの灰色の筒型が倍電圧整流回路に入っている0.1μF 1,000Vのオイルコンです。トランスの巻線電圧は500Vですから、 耐圧1,000Vなら十分な耐圧があります。

 しかし、オイルコンデンサは高耐圧品とは言っても劣化は免れず、年月が過ぎれば絶縁は低下します。 このオシロも製造されて40年くらい経過した筈ですから劣化してもやむを得ないでしょう。20年くらい前には使えていたのですから良く持った方かも知れません。

 少々耐圧不足なのですが、定格以上の実力(?)を見込んで実験的に630V耐圧のフィルム・コンデンサ(青色)に交換して様子を見ている様子です。(安全を見込めば750V以上の耐圧が必要) 直りそうでしたので、この部分のコンデンサを交換することにしました。 しかし修理に使えるような1kV耐圧のコンデンサは手持ちにありませんのでどうしましょうか・・・・

 【オイル漏れ発見
 いちばん怪しそうだったC125を撤去してみたら、べっとりとオイルが漏れていました。

 絶縁が低下して漏れ電流がかなり流れたのでしょう。だいぶ発熱したらしく、膨張してオイルを噴いたようでした。

 幸い、漏れたのは絶縁性のオイルですから腐食の心配はありません。良く拭き取っておけば大丈夫です。 なお、古い電気製品ではPCB含有のオイルコンが使われていることがあります。 このCO-1303Gが作られたころには使用禁止になっていましたからPCB入りではないでしょう。

 【セラコンで補修
 近所に売っているお店はないし適当な高圧部品も手持ちにはありません。

 あちこち探していて見つかったセラコンを使ってC124とC125を交換しました。 0.1μF/500Vがあったのでシリーズ・パラで0.1μF/1kVを合成しました。 AC500Vの整流ですから十分な耐圧マージンがあるでしょう。

 手前の方に0.1μFで2kV耐圧と1.6kV耐圧のオイルコンが見えます。 これらも怪しいとは思ったのですが、とりあえず使えそうに思えたのでそのままで行くことにしました。もちろん交換用の部品があるなら無条件で取り替えるのですが、すぐには思いつきません。

が、しかし・・・・

オイルコンは全滅
 2つだけの交換では済みませんでした。 暫く通電していたら再び輝度の低下が発生です。 残っていたオイルコンも絶縁劣化で電流がリークしており、特に0.1μF・2kVの方が酷かったようで発熱で触れぬほどの高温度になっていました。物理的な破裂さえありそうなたいへん危険な状態です。

 1kV耐圧のコンデンサでさえ手持ちがないので困ったのですが、630V耐圧の0.068μF(フィルム・コンデンサ)ならたくさんあったのでこれを使いシリーズ・パラで合成することにしました。 安くない部品を12個も使うのはなんですが、まあ使わずに死蔵している方が勿体ないですから。w

 耐圧は1.9kVくらいになるのでまずまずですが容量は約0.045μFなので半減です。しかし負荷電流も少なそうですから何とかなるでしょう。 どうしてもダメなら正規の容量が手に入るまでの応急処置としましょう。 ちょっと心配でしたが様子を見た範囲では十分行けそうでした。

 【1.4kVを確認
 部品交換したら電圧くらいは確認しておきたいものです。 しかし一般的なテスタでは1,000V以上は測れないことが多いと思います。 正常であれば間違いなく1,000V以上の電圧になっているので、1,000Vレンジしかなければスケールアウトしてしまいます。

 デジタル・マルチメータなら1.99kVまで測定できる可能性もありますが、1kV以上は許容していないことが殆どなので耐圧オーバーで壊してしまうリスクを伴います。仕様を良く確認してから測定する方が良いです。

 ここでは5kVレンジがある米軍用テスタ:USM-223で測定しました。ご覧のような目盛りですから細かくは読めませんが、約1,400Vであることがわかりました。 USM-223はごく普通のメーター式テスタです。電子電圧計(VTVM)ではありません。内部抵抗は20kΩ/Vですから5kVレンジは100MΩの内部抵抗になります。十分大きいため、テスタを当てたことで起こる電圧降下による誤差は僅かでしょう。

 500Vの2倍電圧整流ですから整流後の電圧はその約2.8倍になっていれば正常です。従って、約1,400Vなら合格ですね。(注:対シャシ電圧ではマイナス1,400Vです。CRTの電源回路は負の高電圧になっています) なお、取扱説明書には約-1,300Vと書いてありました。

 半分くらいしか電圧が出ないときは、高圧整流用ダイオードの故障が疑われます。HVT-22Z-3と言うダイオードが使われていますが入手困難でしょう。 秋月電子通商で売っている「ESJA57-04」(←リンク)と言うダイオードで代替できます。できたらD107とD108の2つとも交換します。 参考ですが、こうした高電圧用ダイオードは順方向電圧が高いため一般的なテスタのダイオードチェックでは良否判定できません。簡易的には電流計と可変電源を使って調べます。

 【電解コンデンサも怪しいが
 オイルコンよりマシだと思っていますが、電解コンデンサも怪しくなっています。

 200V電源の平滑に使ってある47μF250Vのケミコンでゴム封止部分に液漏れの跡が見つかりました。念のため交換しました。外して確認したらリーク電流は大丈夫そうでしたが液漏れした痕跡のあるコンデンサは信用できません。

 横型(チューブラ型)の手持ちがなかったので、縦型を寝かせて使っています。 振動の多い環境や頻繁な持ち運びには不適当な実装方法ですが、シャックで使うなら支障ないでしょう。面倒ですけれどグルーガンで止めてしまえば一段と安心でしょうね。

ダメだったコンデンサ
 写真のコンデンサがダメになっていました。 結局、オイルコンは全滅です。 この製品が製造されたころ安価な高圧コンデンサと言えばオイルコンだったのでしょう。 何十年もの製品寿命は考えていませんから合理的な部品選定だった筈です。

 オイルを含浸した紙を挟んでアルミ箔を巻いた構造です。 構造・材質上、幾らか吸湿性があってそれが絶縁劣化の原因だと思います。 それでも国産品はかなり優秀だったのだそうです。 輸入機器に使ってあるようなオイルコンは日本の梅雨時を超すだけで劣化してしまう物さえあったそうです。 なお、オイルコン(オイル・コンデンサ)はペーパー・コンデンサ:紙コンデンサとも言われます。 またMPコンデンサも同類です。(MPと言うのはメタライズド・ペーパーの略) すべて紙を絶縁材に使ったコンデンサは絶縁性が悪くなる問題を抱えていることになります。

 今となっては「当面は大丈夫」であってもあえてオイルコン使う時代ではないでしょう。耐圧が必要なら高圧用のセラミック・コンデンサやフィルム・コンデンサを使うべきですね。(笑)

 低圧部分のケミコンにも劣化はあるかも知れません。 今のところ大丈夫そうですが、次々に壊れるかも知れません。 基板を点検していたら半導体のリード線が銀メッキの硫化で黒くなっていました。こちらも劣化の心配があります。 内部はホコリの堆積もなく、奇麗でしたが40年前の製品ですからいつどこが壊れても不思議ではありません。

参考:実際には電源部のほかにもう1カ所だけオイルコンが使われています。垂直軸の入力端子にあって、アンプをAC結合に切り替える部分に0.1μF630Vがあります。(部品番号:C1)このオイルコンも劣化が疑われますが、今のところ実害が無いのでそのままです。機会を見てフィルムコンデンサあるいはセラミックコンデンサに交換するつもりです。

 【ツートーン発振器
 修理とは関係ありませんが、CO-1303Gの特徴部分を見ておきましょう。 パネル面から見て右側後方に実装された2トーン発振器の基板です。 緑色の円筒が発振回路のコイルです。

 裏面からマイナスドライバを調整穴に差し込んで、2トーンのバランスと出力レベルが調整できるようになっています。

 SSB送信機(トランシーバ)の健康診断に2トーン発振器は必須です。 オシロスコープをシャックにおくようなHAMなら持っていてしかるべきです。 しかし今なら2トーン発振器はOP-Ampを使って簡単に自作できます。 あえてこうした機器を探す必要はありません。 それにCO-1303Gの発振波形はオシロでの観測用としては十分そうでしたが、スペアナでの観測用には満足できないと思います。 歪率の調整もできないので簡易な観測用と割り切るべきです。

RFピックアップ回路
 電力の大きな送信機から安全にRF信号を引き出すのは意外に難しいものです。 このピックアップ部はCRTの直近に置くことでRF信号を長く配線で引き回さないことを前提にうまく作ってあります。

 JARLやARRLのハンドブックなどを見るとM結合で取出す例が載っています。 使い物にはなりますが、あまりスマートな方法ではありませんでした。

 この回路ではC結合で直接ピックアップし、さらに直列容量(結合容量)をスイッチで切り替えることで適切な観測振幅になるよう考えてあります。 HF帯から50MHzあたりで使うのならアンテナ系のSWRにはあまり影響を与えません。

 この部分は自作でも真似できそうですが、ピックアップ部はオシロの近くに置かなくてはなりません。 写真下の部分に見える2つのM型コネクタに送信機とアンテナあるいはダミーロードを繋ぎます。 上の左方にあるRCAジャックは低周波2トーン信号の出力端子です。

                  ☆

 よく考えてあったとしても、普通に設計された電子機器が数10年を経て正常に働くとは考えにくいでしょう。 せいぜい10〜15年くらいが設計寿命だった筈です。 40年も前の機器を使ってみようなどと思う方が酔狂なんです。(笑)

 しかし、電子部品すべてが劣化する訳ではありません。 経年劣化し易い部品さえ交換してやれば意外に機能・性能を取り戻せます。 ただ、それが現代に通用するか否か・・と言う部分が大いに問題でしょうね。既に時代は終わってますから。 結局、直してみるのは面白いけれど実用性はありませんでしたと言うオチになりそうです。古い機械の修理なんて所詮そんなものです。

 このオシロはSSBのオンエア・モニタくらいならそこそこ実用になります。 あるいは、近ごろ流行のAM局の変調度モニタにも最適です。 深い変調でありながら、過変調にならぬよう直接見ながら管理できます。 SSBやAMなんて40年前から変わっていませんから役立つのも当然かも知れませんね。 ジャンク(危険ゴミ)になるハズだったんですから、保管などせずに積極的に使いましょう。ずっと使っていてCRTが焼けて来たところで惜しくもないでしょう。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2017年3月28日火曜日

【回路】An OP-Amp Keyer , another one.

【回路:もう一つのOP-Ampを使ったキーヤー】

 【他にもあったOP-Ampキーヤー
 少し前のBlogで長年気になっていたキーヤーの一つとしてOP-Ampを使ったもの(←リンク)があって「この際実験したみました」・・と言うように書きました。

 気になった切っ掛けはCQ hanradio誌の「技術展望」と言うページにありました。 外誌ほかから技術的にめぼしい情報を見付けて簡単に紹介するページでした。 そこに「OP-Ampを使ったキーヤー」として紹介が掲載されたのです。 面白いと思って切り取ってスクラップ・ブックに挟んでおいたのですが、すっかり行方不明でした。

 元の記事が掲載されていたはずのQST誌からそれらしい記事を探し出して実験したのが前回のBlogだった訳です。 ところが、そのQSTの記事は私がCQ hamdadio誌の「技術展望」で見たものとは別の記事だったことがわかりました。 ずっと探していたCQ誌の保存記事が見つかったからです。

                   ☆

 前置きが長くなりました。私がCQ hamradio誌の技術展望で見掛けたのは1971年11月号(左図)のQST誌に掲載されたものです。「An Integrated-Circuit QRP Keyer」と言うのが記事のタイトルです。 「技術展望」は要約であって翻訳記事ではないため筆者の製作動機や経緯のようなことは省かれています。しかし読み返してみると回路の動作はきちんと説明されていました。 さらに元記事の主旨も書かれており移動運用に適した省エネなキーヤーだと明記されています。

 切り抜き記事が発見されたことで元の記事がこれであることがわかりました。 原典の記事は回路図を含めたった2ページの簡単なものでした。 これはGimmicks and Gadgetsと言うコーナーの記事だからでしょうね。 使用デバイスは何でも良かった筈で、もちろん「OP-Ampで作る」のが目的ではありません。(笑)

 当時のロジックICはDTLやTTLですから消費電流が大きかったので、それを使ったキーヤーは移動運用向きではなかったのでしょう。 ディスクリートで省エネに作ると言う手はありましたが、簡単ではありません。 そこでOP-Ampを工夫してみたら消費電流の少ないキーヤーが旨くできあがったと言うのが記事のポイントのようです。

                  ☆ ☆

 今ではC-MOS ICの発展やローパワーマイコンの登場で意味は薄れたかも知れません。 あえてお薦めするつもりはありませんが、旨くチューニングするとエレクトロニック・キーヤーでありながら個性をもったキーイングができそうです。 コンデンサの加減と言うアナログな方法で自身の好みを符号に反映できる訳です。(笑) そのあたりも試してみたら意外に面白かったので興味が湧いてきたらこの先もご覧下さい。近代化した上で製作に必要な情報は網羅されています。

 【オリジナルの回路図
 2017年の今から数えて46年も前の1971年11月号の記事です。 使用しているOP-Ampはキャン・パッケージのμA741型です。もちろん当時は登場から間のない先進のOP-Ampだった筈です。

 そのμA741を2つ使って短点、長点、スペースをコンデンサと抵抗器:CRの値を使った時定数で実現しています。 μA741はいすれもコンパレータ(電圧比較器)として動作しています。増幅の目的ではありません。

 但し、スピード調整をCRの値を変える方法にすればスピード変更のたびにそれぞれの比率について再調整を要するかも知れません。 それを防ぐため、スピード調整は電圧を変えて行ないます。 各タイミングを作るコンデンサ:Cへ電荷をチャージするための電圧を任意に変えることで可変スピードを実現しています。

 さらに長点は短点の三倍の長さになるよう時定数がおおよそ三倍になるように切換えます。 スペースは短点と同じ長さになるよう時定数を揃えてあります。 Cが充電されて閾値に達するまでの時間は電圧で変えられます。 このような方法なら短点、長点、スペースの時間比率は原理上一定に保たれる筈です。

 なお、厳密に言うと必ずしも考えた通りにはならない要因が含まれます。私の試作ではその対策も考えてみました。確かに効果は認められたのですが、あえて対策をとらなくても十分使えそうでした。(条件次第ですが・・・)

 前回のBlogで紹介したOP-Ampを使ったキーヤーでは、始めに短点とスペースが1:1になるように発生させたあと、OP-Ampを使ったFlip-Flop回路を使って2分周してからダイオードによるORゲートで合成して長点を得る方式でした。これはロジックICで作るキーヤーとまったく同じ考え方です。

 それに対して、こちらのキーヤーは短点、長点、スペースの全てをCRの時定数で各々個別に得ている「純アナログ方式」です。

 741型OP-Ampを使いながら、片電源で済ませるためにツェナー・ダイオードを使ったレベルシフト回路が使われています。 設計された当時、まだ片電源動作に適したOP-Ampは登場していなかったのでやむを得なかったのでしょう。 その後、片電源に適したOP-Ampが登場したので今から作るなら幾らか回路の簡略化が図れそうです。

 【私の試作品
 写真は私が試作したものです。 オリジナルの考え方を踏襲しつつ、741型OP-Ampの時代よりも進歩した部品を使うことで回路を簡略化してみました。

 何だか部品数が多くなったように見えるかも知れませんが:
(1)フォトカプラを使ってアイソレーション(絶縁分離)されたキーイング回路
(2)サイドトーンモニタ回路と発音体
・・・などを追加してあります。それらを除けば部品はだいぶ減っています。

 これは、今では4回路入りのOP-Ampがたいへん廉価で販売されておりそれを活かした設計が合理的だからです。 4回路あることでキーヤーとして必要な機能のすべてを含めることができました。 電源電圧の範囲が広くなるなど、性能も改善されています。 消費電流も741型OP-Ampを2個使うよりもだいぶ少なくなっています。 詳細は次項の回路図をご覧下さい。

 一見して部品数が多くて作りにくいように見えますが、ブレッドボードを使った試作なので面積を必要としているためです。 OP-Ampは4回路入りですし他の部品数も僅かなので、ユニバーサル基板に載せるとたいへんコンパクトに製作できます。

 上方の黒くて丸い物は「圧電サウンダー」(←秋月にリンク)と言うものでです。低周波の電圧を与えると「音」が出ます。 ある種のスピーカのような物でモニター音を鳴らすために使っています。 普通のスピーカと違いインピーダンスが高いためトランスなどを介さず直結できて便利です。(ただし、音声や音楽の再生には向きません。あくまでも発音体であって一般的なスピーカとは違います)

 【改良版回路図
 短点、長点、スペースを発生させる回路部分はオリジナルの考え方を踏襲しています。 但し、使用した324型OP-Ampは741型OP-Ampと違ってマイナス電源(GND)側に「残り電圧」が殆ど生じません。 そこでオリジナルの回路にあったようなツェナー・ダイオードを使ったレベルシフト回路は必要としません。 4回路入りのOP-Ampは配線しにくいと感じるなら、2回路入りのLM358Nを二つ使うと良いでしょう。回路定数の変更は不要です。

 また、トランジスタとベース抵抗が集積さている通称「デジトラ」という複合部品を使ったので、見かけの上で抵抗器が6本削減できました。 このあたりがオリジナルが設計された当時よりも便利になったところです。 記事の当時と同じ部品もまだ手に入るので、そのままそっくり作ることもできますが、省部品で作りやすくする方が良いでしょう。(:デジトラと言うのはデジタル回路で便利なトランジスタの意味でしょうね)

 デジトラはROHM社のDTC144ESAと言うものを使っていますが、これも手持ちの都合です。 少し消費電流は増えますがこのような類似品(←秋月へリンク)でも大丈夫です。 小信号用のデジトラはいずれも安価です。部品屋さんに置いてあれば単価10円程度のものです。 わざわざ買いたくなければ2SC1815GR(2SC2458GRでも良い)と47kΩの抵抗器を2本(等価回路のRaとRbに使う)で代替できます。性能は変わりません。

 長点、短点、スペースの比率を決めるのはコンデンサや抵抗器の値です。従って、幾つかの部品は精度が必要です。 抵抗器は±5%以内の精度が普通なので問題ない筈です。 コンデンサのうち、C1、C2、C3はできればタンタル・コンデンサにします。容量誤差は±10%以内が望まれます。LCRメータで実測して値を揃えれば完璧でしょうね。

 実際には容量の値そのものではなくて比率が重要なので、C1=C2、C3=[C1の2倍]になるようすればOKです。逆に考えればこれらの比率を少しいじってやれば「短かめの短点」とかが実現できる訳です。面白がって色々やってみたら収拾がつかなくなりました。本来の比率をあまり逸脱しない範囲が良さそうです。(笑)

 なお、漏れ電流さえ少なければアルミ電解コンデンサ(普通のケミコン)でも十分使い物になります。テスタで測って抵抗値が500kΩ以上に落ち着くものなら大丈夫です。

 オリジナルにはないサイドトーン発振器を追加しています。 市販の「圧電ブザー」はどれも音程が高すぎるように思います。 好みの音に変えられるよう「低周波発振器」を組み込みました。 弛張発振回路を使った簡単な矩形波発振器です。 発振回路の抵抗器:R11(4.7kΩ)の値を大きくすると低い音になります。 発振波形は矩形波ですから少々ブザーっぽい音がします。w

 キーイング回路には手持ちのフォトカプラ:TLP-521-1(GBランク)を使ってみました。これはごく一般的な物ですが同等品は数10円で手に入ります。 新規に買うなら秋月電子通商にて単価20円で売っている東芝のTLP-785GB(←リンク)が良さそうです。 TLP-521-1の耐圧は50Vなのでブロッキング・バイアス・キーイングにはやや耐圧不足のようです。 しかし幾らかマージンはある筈なので概ね支障無く使えるでしょう。(単品の実測ですが、OFF耐圧は100V近くありました) TLP-785の方なら規格上の耐圧は80Vありますから少し有利です。

 それでも気になるようなら出力トランジスタの耐電圧が100V以上あるフォトカプラあるいは、フォト・モス・リレーに交換します。 または前に扱ったDTL-Keyer(←リンク)のようにリードリレーと言う手もあります。一般的なフォトカプラで間に合わせればフォト・モス・リレーを使うより大幅にコストダウンできます。 但しリグと接続する時には極性に気を付ける必要があります。 

 オリジナルに存在したPNPトランジスタを使った負電圧のキーイング回路・・・ブロッキング・バイアス・キーイング用の回路・・・は省略しました。 フォトカプラならどちらの端子をGND側にしても構いません。極性に合わせた配線さえすれば良く、リグのキーイング回路の極性は問わないからです。あえて負電圧のキーイング回路を設ける意味はありません。

 非常に古い送信機や自作送信機で終段真空管のカソードキーイングをするにはドレイン耐圧が1,000V程度あるパワーMOS-FETが適しています。 回路図のU1bの7番ピンからMOS-FETのゲートをドライブすればOKです。ゲート回りには過電圧保護を付けておきます。 MOS-FETのドレイン・ソース間で終段管のカソードを直接キーイングできます。くれぐれも感電には気をつけましょう。 文章では旨く伝わらなければお問い合わせでもどうぞ。

                   ☆

 作る人は稀かも知れませんが、消費電流も少なく電源電圧の範囲も広いので「実用品」になります。 電源電圧は9Vが標準ですが、図のままで6V程度まで下がっても正常に動作します。 消費電流はパドルを操作しない「待機状態」で2mA以下、「キーイングしている時」が5mA程度です。 消費電流が少ないのであえてAC電源を内蔵するよりも乾電池もしくは充電池でコードレスに使う方法が良さそうです。移動運用のお供にするならもちろん乾電池でしょうね。 自宅のシャックで使うなら小型のACアダプタも良いかも知れません。 もともと低速のデバイスなのでRFの回り込みには強いと思われます。

324型OP-Amp
 改良版を作るために活用したのが324型OP-Ampです。今ではこれよりも進歩したOP-Ampがたくさんあって選択に困るほどです。

 324型も十分古くさいOP-Ampなのですが廃れた訳ではありません。 十分な性能を持っていますし、何と言っても安価なのが有難い汎用パーツです。

 秋月電子通商では何と4個150円でLM324N(←リンク)が売られています。一つ40円もしませんがこのキーヤーには十分すぎる性能です。 各社からセカンドソースがたくさん登場しておりどれでも同じように使えます。 自作好きなら既にパーツボックスに一つや二つ入っていることでしょう。単品買いでも100円くらいで手に入る筈です。

 上記の試作例ではNEC製のμPC451C(通信工業用)を使っていますが、たまたま手持ちがあったまでの話しで一般的なナショセミ(TI社)製のLM324Nで支障ありません。この写真のものと交換してみましたが何も違いません。 仕様書上の動作温度範囲が違うだけで、他はまったく同等です。 真夏の砂漠や冬期の山岳地帯でオンエアする予定ならμPC451Cの方が良いかも知れませんけれど・・・。(笑)

 このOP-Ampに限らず、使ったいずれのパーツも安価なので収納ケースやツマミのような外装部品を上手に調達すれば500円くらいの材料費で十分行けそうです。 ワンコインで作れるキーヤーですね。実用的なキーヤーがいくらで作れるかチャレンジしてみるのも面白いかも知れません。(笑)

                   ☆

OP-Amp. Keyer Type-2のテストムービー
注意:再生すると音が流れます)
video


 キーヤー恒例(?)のテストムービーです。 このキーヤーはサイドトーンモニタ発振器、フォトカプラを使ったキーイング回路など全てを内蔵しています。 従って、これだけの回路で完結できます。 BL-006P型の9V積層乾電池とスイッチ、スピード調整用の可変抵抗器を小箱に組み込めば完成です。 ムービーではリグのキーイングではなくボード上のLEDをキーイングでチカチカさせています。

 意外に実用性がありそうなので、ロジックICやマイコンを使ったキーヤーに飽きた人には面白いかも知れません。 長短点メモリはありませんので超高速キーイングには向きませんがムービーの程度なら支障もなくキーイングを続けられます。

 回路構成上、スクイーズ・キーイングはできませんので写真のようなシングルレバーのパドルに最適です。 なかなか良い感じにキーイングできました。

                 ☆ ☆ ☆

 新しいキーヤーを作ってもっとアクティブにオンエアを楽しもう・・・と言うほどCWでの交信はしていません。 話しの流れとして、ずっと気になってきたキーヤーを次々に試してきただけです。 これまで扱った他にもカーチス社のキーヤー専用チップ:8044とか彼の有名なWB4VVFのAccu-Keyerなどもありますが、いずれチャンスがあったらと言う事にしましょう。電信やそれにまつわる機器には奥深い趣味の世界が広がっています。それだけで一冊の書物になるほどです。深入りしていたらいつまで経っても終わりは見えてきません。

 キーヤーにOP-Ampを使う必然性などないと思っていました。しかし、よく回路を見れば意外にオーソドックスでした。しかも実現される性能は思った以上に実用的です。 これを本格的に使うことはないかも知れませんが世の中にはこう言う物もあると言う楽しい経験ができたと思います。 三月も終われば新年度が始まります。ちょうど良い区切りですから、色々試してきたエレクトロニック・キーヤーの話題はこのあたりでおしまいにしましょう。 まずは目出たく卒業と言う訳ですね。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2017年3月12日日曜日

【部品】AD8307A Log Power-Meter Chip

AD8307Aを使った対数圧縮型パワーメータ
 【QRP-Power Meter
 暫く前からAD8307Aと言うICが売られています。 入力信号の大きさに対して出力の大きさは対数的に変化する、一種のLogアンプのICです。 入力信号は高周波(RF)電圧が想定されています。直流の電流や電圧が対象ではありません。 従って昔からあるようなトランジスタのベース電流:Ibとベース・エミッタ間電圧:Vbeの指数特性を利用した対数アンプとは異なるものです。

 出力は入力されたRF電圧の大きさに対数で(Logで)比例した直流電圧として得られます。 簡単に言えば、出力端子には入力された高周波電圧に従った直流電圧が得られる訳です。その直流電圧は、RF電圧の大きさに比例するのではなく、対数で比例します。

 活用法の一例としてAD8307Aを上手に使ってパワー計を作ると:(1)ごく小さなパワーが高感度で測定できる。(2)大きなパワーでも振り切れにくい。・・・と言った特徴を持ったRF電力の測定器が作れます。

 写真の左側は私がAD8307ANを使って製作したパワーメータです。80dBフルスケールのほか10dB、25dB、50dBフルスケールで測定できるほか、任意の電力レベルでオフセットが掛けられその部分を細かく読めるようになっています。
 また、右のコンパクトなものはJR1ING菊川さん(2008年6月 Silent Key)がAD8307ARを使って製作されたものです。 コンパクトなワンレンジで製作され小型ながら拘りを持った作品です。これは故人の形見として頂いた宝物です。

                   ☆

 AD8307Aを使った製作は一時期かなり流行りましたが最近は見ないようです。ICチップが比較的高価なのと、製作したRFパワー計なりRF電圧計がLog目盛り(デジベル単位)では直感的ではなくて使いにくいからではないでしょうか? しかし、RFや電子回路のベテランでしたらdBの扱いには精通しているでしょうから、直接dBで数値が得られるのはかえってFBだとも言えます。

 最近になって大陸方面から面実装タイプのAD8307A(R)が安価に手に入ったとのことで、テストのご要望がありました。 そこで以前製作した自作品に装着して試してみました。 結論から言いますと「正常に使える」ようです。 かなり安価だったそうですが、FBではないでしょうか。用途は限定されそうですが有効活用されることを期待しています。

 【自作品の中身
 自作測定器の基板を見たからと言ってさして役立つとは思えませんが、このようになっています。(笑) 基板外にレンジスイッチやオフセットのポテンショメータ、指示メータなどが付いています。

 肝心のAD8307Aは基板の左端に実装しています。 500MHzまで性能を発揮させるのでしたら、ICソケットなど使わず直接最短距離で入力コネクタに直結すべきです。 ここではそこまでの周波数特性は追求せず100MHzあたりが目標です。 金メッキされた小型コネクタの裏面にチップ型の終端用抵抗器などが最短距離で実装され周波数特性の劣化を最小限に抑えるようにしています。 AD8307Aを出た信号は単なるDC電圧ですから高周波の配慮は必要ありません。

参考回路図
 まったく回路図がないと寂しいので、便宜的に載せましたが詳細は掲載誌の記事をご覧になって下さい。
 部品定数はもちろんですが、調整方法についても順を追って説明されています。回路図だけがあっても作れるものではないので部品定数は省いています。

 但しこれ単独で製作をお奨めするようなものではありません。 もともと、RF発振器とセットで使い水晶振動子の精密な周波数特性や、(自作)クリスタル・フィルタの特性を観察するために製作したものです。

 スイープ・オシレータやオシロスコープなどとセットで使いますと、縦軸dB目盛りで管面に周波数特性を描かせることができます。 詳細は雑誌記事でご参照下さい。 雑誌のバックナンバーは、古書、図書館、JARL資料室、出版社のコピーサービスを使うなどの購読方法があります。(掲載誌:CQ Hamradio 2006年4月号pp124〜129)

AD8307AN
 AD8307ANの部分を拡大してみました。 拡大して見たからと言って特に意味はありませんが、次の写真を説明する都合で掲載しています。

 AD8307Aは周波数の上昇とともに感度誤差が大きくなって行きますが、カタログスペックによればおおよそ500MHzまで実用になります。

 本格的に性能を発揮させるためには、ICソケットなど使用せず専用基板を起こして50Ωに設計されたストリップラインのパターンに50Ωの終端抵抗とともに直付けすべきでしょう。 そのようにして初めてカタログの性能が実現できます。

AD8307AR
 写真はテストを依頼されたAD8307ARです。これは表面実装タイプです。

 通販で中国から安価に手に入ったのだそうです。 最近はそのようにして電子部品を調達するお方が増えてきました。 しかし、まがい物(フェイク)も多いらしく、高周波用のパワートランジスタではほぼ全滅だったと言うようなお話も聞きました。

 このAD8307Aもかなり安価だったそうです。それだけに「印刷だけの偽物」の可能性も否定できません。 誰かテストして欲しいと言うご要望はごもっともでしょう。

 ここでは、容易に比較テストを行なう目的で変換基板に載せています。 対象物の中身が間違いなくAD8307Aであることを確認できれば良いのでこのようにしました。 10MHzあたりで比較テストを行なうつもりですが、その周波数なら変換基板に実装してもまず問題はないと思います。ICチップの真偽くらいなら正しく判定できるでしょう。

10MHz・0dBmでテスト
 自作のLog Power-MeterにRF信号発生器・レベルジェネレータから0dBm(50Ω)の高周波電力を加えてみました。 周波数は取りあえず10MHzです。 周波数特性を追求しても変換基板への実装ではあまり好結果は望めません。従って周波数特性の追求は程々にしておきます。

 ソケットからAD8307ANを取外し、AD8307AR(被検査品)に載せ換えてメータを読んでみました。 写真のように少しのズレもなく0dBmピッタリを示しました。

 これだけでは不安なので、10dB刻みに信号を変化させてメーターの読みを確認しました。 ローレベルの領域で正しく測定するためには、チップ個々のバラツキを補正するためのオフセット調整が必要です。 従って単純に交換しただけの未調整のままでは誤差が大きくなりました。 しかし、-50dBmくらいまでなら目盛りと良く一致していましたので評価対象のチップは正常に動作していると思って良いでしょう。 それ以下のローレベルでは個別チップごとに調整が必要なので、精度が悪くなっても異常ではありません。

                   ☆

 QRPPerでもせいぜい1mWまででしょうから、このパワー計の単独では高感度すぎます。 QRPerが精密にLow-Powerを測定するには悪くないパワー計かも知れません。但し、そのためには10dBの固定減衰器(アッテネータ)を何個か用意しておく必要があると思います。他に-20dBカプラもあったら便利です。-20dBカプラは容易に自作できます。 校正次第ではありますが、良いアッテネータを手に入れておけば良い精度でQRPppなパワーでオンエアする際の助けになるでしょう。 他にはIF-Ampの出力部に置き、AD8307Aの出力をAGC電圧として取出しIF-Ampの出力がLogで比例するように制御を行なう・・などの考えもありそうです。 まあ、そんな所が思いつく用途ではないかと思います。ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

2017年2月26日日曜日

【回路】Akizuki DDS-OSC

DDS:Akizuki DDSモジュールの挽歌
 【秋月のDDS発振器
 これは有名な秋月電子通商の「DDS発振器」です。多くの自作好きのお方と同じように過去に何台も製作しています。

 一見して周波数設定の部分をジャンパ・プラグ式で製作したので、DIP-SW式と違うように見えるかもしれません。 他にも少し変更した部分があって、あとで説明があります。

 もう既に「中華DDSモジュール」でさえ盛りを過ぎた今頃になって何で「秋月DDS」なのだろうか? 疑問を持たれたかも知れませんね。

 ここに来て製作した理由は2つあります。
(1)理由の一つは、このまま活用しないと勿体ないと思ったからです。このキットは最近買ったものではありません。かなり前に買ったまま死蔵していたのです。活用しなければいずれゴミになります。
(2)二つめの理由は検討している目的にマッチしていそうだからです。今となっては高性能ではありませんが発生周波数を半固定で使うには便利そうなのです。 アキュムレータのビット数も適当です。

                    ☆

 以下、思い付きのニーズからリバイバルさせてみたものです。 既に高性能なDDSモジュールがたくさん登場しています。これを今どき使う必然性はあまりないでしょう。 しかし、この秋月DDSが登場したころを懐かしく思い出しながら、味わいつつ製作したいと思います。 今回は単にキットを組み立てるだけでオシマイです。懐かしさは感じられても何かの役に立つとも思えません。単なる製作記録なのです。(笑)

 【自分で作る必要があった
 秋月のキットには有料の製作サービスが有ったと思います。 しかしDDS発振器が必要なら殆どの人は自分自身で製作したはずです。

 これ単体でも最低限の使い方ができるように考えられています。 基板の端面に並んだDIP-SWで発振周波数のセットができたからです。(実際にはマイコンで制御しないと実用性はあまりないのですが・笑)

 DIP-SWで周波数セットするのは手間が掛かります。 欲しい周波数を決めたら、クロックの周波数とアキュムレータのビット数からセットすべき数値を求めます。 しかもその数値を純2進数でDIP-SWにセットする必要があります。 関数電卓を駆使してセットすべきビット列を求めなくてはならないのでした。

 それでもマイコンのプログラムなしに単独でテストできるのは大きなメリットかも知れません。作ってすぐにテストできるからです。 今回、リバイバルさせてみようと思ったのもそんな特徴からです。 周波数を半固定して組み込み用に使います。そのような時には外付けマイコンなしで済むのは便利です。

 キットではハンダ付けの難しい部品は予め実装済みです。 DDS-ICとR-2R式のDAコンバータ用抵抗アレーは基板にハンダ付けされていました。

 初期のバージョンではクロック発振器が16.777216MHzになっていた記憶があります。 その後、高い周波数が発生できるように67.108864MHzに変更されました。 現在でも後継のキットが発売されていますが(*注)、クロック発振器が写真とは異なるタイプに変更されています。プリント基板もそれに合わせたニューバージョンに更新されています。
*注:当初の6,400円が5,400円に値下げされたあと、暫く販売されていましたが現在は販売終了したもようです。2017.05.14)

 【部品はそれほど多くない
 写真に写っている部品がすべてです。 大した部品数ではないので容易に製作できます。

 購入時には周波数設定用のDIP-SWが3つ付属していたような気がします。 しかし何かの製作に流用したらしく欠品していました。

 基本的に付属してきた部品をそのまま使って製作します。 但しキットのままではローパス・フィルタ(LPF)の遮断周波数が低すぎました。 フィルタ部分のみ手持ち部品に置き換えることにします。 また、テストが済んだらクロックの67.108864MHzは外部から与えます。テスト時のみ付属の発振器を使います。

 【DDSの心臓部:Wellpine-DDS
 心臓部のDDS-ICです。 Wellpine社というのは設計会社だったように思います。 製造はどこかの半導体メーカーのはずです。型番から何となく東芝製のようにも見えますが・・・。

 中身はゲートアレーなのではないでしょうか? DDSの論理回路を汎用のゲートアレー上に実現したものと想像しています。

 ピン数が多くハンダ付けが難しいので、写真のように予め右隣のD/A変換用R-2Rラダー抵抗器と一緒に実装済みになっています。 従って残りは普通のリード線型の電子部品をハンダ付けするだけですから作るのは容易です。

旧キットはきれいなクロック
 これはキット付属のクロック発振器です。 消費電流が大きい、周波数の微調整ができない・・・などの欠点はありますが、出力信号そのものは奇麗だったのでDDS発振器の基準クロックとしては支障のないものでした。

 暫く前のBlog(←リンク)に書きましたが、いま手に入る「秋月DDSキット」にこの写真のタイプは付属しません。 写真の物が調達できなくなってから「プログラマブル・水晶発振器」を使ったクロックが付属するようになりました。 特に信号の奇麗さを要求されない用途なら新しいプログラマブル・水晶発振器でも支障はないかも知れません。

 しかしHAM用の送・受信機に使うなら写真の旧クロック発振器の方が遥かに望ましいのです。 そうは言っても手に入らないのですから仕方ありません。もし最近購入したキットを製作するなら、クロックは前回のBlog(←リンク)のような発振器を作って与えたいところです。

 【組立完成
 写真は秋月DDSモジュールの完成状態です。

 一部に付属にはない部品を使っています。そのため多少見た目が違うかも知れません。

 周波数設定用のジャンパ・プラグは未挿入です。 このあと必要な周波数に合わせて所定の位置に装着します。

 様々に周波数を変化させたいなら外付けマイコンでシリアル・コントロールする方が良いでしょう。 しかし、なかば恒久的に同じ周波数を発生させるのが目的ならジャンパ・プラグのセットで周波数を「プログラミング」する方法が手っ取り早いです。このあたり、どの様に使うのか目的次第でこのキットの扱い方も変わってくるところでしょう。

 【LPFは部品定数変更
 DDSに必須のローパス・フィルタですがキットのままでは約8MHzの遮断周波数になっていました。

 クロック周波数が低い時にはそれが適当ですが、67.108864MHzのクロックで使うには遮断周波数が低すぎて最適とは言えません。

 ここでは遮断周波数:fcが約15MHzになるように変更しています。 具体的にはL1〜L3に0.47μHを使います。C12とC15は220pF、C13とC14は440pF(=220pFのパラで実現)にしました。 これで15MHzあたりまで使えるようになります。

クロックは着脱式
 付属してきたクロック発振器は完成後の基板テストの時だけ使用します。 ハンダ付けしてしまうと取り外すのは厄介です。ここでは「ピンソケット」という部品を使って着脱式にしました。

 テスト時には写真のクロック発振器を装着し動作確認が済んだらクロックを外部から与えるようにします。 なお、外部クロックで動作させる際に追加を要する抵抗器:R20(=100kΩ)は基板の裏面に実装しておきました。この抵抗器は付けたままで支障ありません。外部クロックの与え方次第ですが、この抵抗はなくても良いことが多いはずです。

                   ☆

 ありふれたキットを当たり前のように組み立てただけです。 他のDDS発振器が登場している今となっては少々色あせて見えるかも知れません。 しかし、1990年代の末にこのキットが登場した時のインパクトたるや強烈でした。 PLL発振器では困難だった1Hzや10Hzといった細かいステップで周波数変化が可能な発振器がいとも容易に可能になったからです。 PLLのような自動制御に付きものだった過渡応答のようなものはありません。PLLで細かい周波数ステップを実現するには多大な努力が必要でした。その殆どすべてが一発で解消されたのですから・・・。

 DDS(ダイレクト・デジタル・シンセサイザ)はそれ以前から存在していた技術です。しかし、それはたくさんのICを並べたとても高級な製作でした。 それがキット化されコンパクトで扱い易い形状で発売されたのです。 無銭家にとって6,400円はお手軽とは言えませんが「高度な技術を買う」と考えれば十分納得できるものでした。 だからこそ死蔵せずに活躍の機会を与えてやりたいと思うのです。

 それで、きちんと動作したかって? ずいぶん長い間、退蔵してきたキットでしたが大丈夫でした。 付属してきたクロック発振器の状態でちょうど10MHzが出るようにセットしてみました。 出力は正弦波で、0.7Vppくらい得られました。 肝心の周波数を測定した結果は3.7Hzくらい低くなりました。これは0.4ppmくらいのマイナス誤差です。 クロックの周波数精度は±5ppm程度でしょう。0.4ppmの誤差なら十分スペックに入っています。 これで製作したDDS発振器の動作は正常だと確認できました。 ではまた。 de JA9TTT/1

【コラム:はんだコテ】
製作には2回前のBlogで紹介した「温調式ハンダこて」(←リンク)を使ってみました。細かいパターン部分の作業に付属していたコテ先チップはやや大きめでしたが、概ね支障なくハンダ付けできました。 温度設定は300℃で使いました。焼け過ぎることもなくハンダの乗りも良好です。 但しベタGNDの部分では長めにコテを当てる必要がありました。なかなか快適に作業できましたが、もう少し高めの温度設定でも良さそうです。
(おわり)nm

2017年2月11日土曜日

【回路】67.108864MHz OSC, Adjustable.

回路設計:周波数調整できる67.108864MHzの発振器
ブレッドボードで試作
  あまり手が進まなかったので小ネタの紹介です。今回のテーマは67.108864MHzの水晶発振器・水晶発振回路です。
           ☆

 DDSで精度の高い発振周波数を得たいと言うテーマでクロック発振器を模索しています。 この発振器はその目的のために設計した特殊なものです。作ってみたい人は稀ではないでしょうか? 自家用メモの域を出ない内容ですし地味なテーマなので覗き見ても退屈でしょう。 こんなところで時間を浪費しないでもっと楽しいサイトへジャンプをお奨めします。ジャンプしたらもう帰ってこなくていいんですよ。(笑)

                  ☆ ☆

 67108864と言う数字は2を26乗した値です。 では、なぜこんな周波数が欲しいのかと言えば、DDS発振器の基準クロックに使うと正確な1Hz刻みの発振周波数を得るのが容易になるからです。

 例えば、DDS-ICにAD9834を使うとします。 AD9834のアキュームレータは28ビット長なので、発生できる周波数の刻みはクロック周波数の2の28乗分の1になります。 従って67.108864MHzのクロックを与えると得られる周波数の刻みは0.25Hzになります。クロックさえ正確なら、この0.25Hzに小数点二位以下の端数はまったくありません。 例えば40,000,000倍で10MHzちょうどが得られる訳です。そしてこの10MHzに周波数の端数は付きません。(40,000,000は2進数表記では、0010 0110 0010 0101 1010 0000 0000となる)

 ほとんどの用途では必要周波数に対して1Hz以下の誤差で設定できれば支障はありません。 受信機や送信機で必要とされる周波数精度は厳しく見積もっても誤差±数Hzでしょう。それにSSBでは相手局にゼロインしているのかが問題になるのであって、周波数の絶対精度は問題ではありません。あるいはCWなら各自が好みの音調でダイヤルしているので完全なゼロインなど要求されません。 従って、必ずしもこうした特定の周波数で与える必要はありません。 マイコンのプログラム処理によって容易に誤差1Hz以内の周波数に設定できるからです。あとはその周波数でずっと安定していれば良いのです。

 しかし非常に精密な測定のような用途では設定誤差がまったく含まれない正確な周波数が欲しくなることがあります。 その為にはDDS-ICに与えるクロック周波数は任意の周波数ではダメです。プログラム処理ではごく僅かな誤差が残存してしまい取り除けないからです。 従ってクロックは2のN乗の周波数であって、しかも調整によって必要とする周波数へ合わせ込めなくてはなりません。このようなことから周波数調整が可能な2のN乗周波数の発振器が欲しくなるのです。

 DDS-ICに与える基準クロックなので、2のN乗周波数でもなるべく高い周波数が有利です。AD9834を例にとれば、2^25=33554432あるいは2^26=67108864が適当でしょう。 具体的な周波数としては33.554432MHzまたは67.108864MHzになります。 用途次第ですが、高周波の発生が目的なら2^24=16777216(→16.77216MHz)ではやや低すぎます。そうかと言って、2^27=134217728(→134.217728MHz)ではAD9834が受け付けてくれません。(クロック上限周波数が高いAD9850やAD9851なら大丈夫です)

 【67.108864MHzの発振器
 図は67.108864MHzに調整可能な水晶発振回路です。 水晶発振器ですから大きく周波数を変えることはできません。もちろん目的の67.108864MHzに調整で合わせることはできます。

 ただし、それがずっと維持できるだけの安定度はありません。 一番下の桁は4で40Hzを意味しますが、それは67MHzに対して約0.6ppmにあたります。 いくら調整しても長時間維持することは不可能です。どうしても維持したいなら、恒温槽(オーブン)に入れるなどの対策が不可欠でしょう。

 もしDDSで得る周波数の精度が1ppm程度で良いなら、この67MHzの方も絶対精度は1ppmで良いので幾らか楽になります。 ±67Hz以内の周波数安定度が維持できれば済みます。 まあしかし水晶発振器とは言えども無補償で1ppmの周波数安定度を維持し続けるのは困難と言えます。従って1ppmの精度を求めるなら時々校正しながら使うのが現実的です。

 発振回路、及び逓倍器のいずれにも中華製のRF用トランジスタ:S9018Hを使いました。 国産のトランジスタでも支障ありません。 67MHzは大して高い周波数ではありませんが一応VHF帯です。 ここで使うトランジスタはft=300MHz以上の小信号用なら何でも大丈夫です。 しかし2SC1815のような汎用トランジスタは不適当です。  S9018Hは「秋葉原価格@¥10-」くらいのチープなRF用トランジスタです。でも、ft>800MHzですから、このくらいの周波数ならとても快適に動作してくれます。(中華トランジスタ:S9018HのShopping Report ←リンク) 写真のブレッドボード試作例では発振部のQ1に2SC2668Yを使っていますが、S9018Hでまったく支障ありません。足ピンの並びが異なるので気をつけます。

 2逓倍回路はPush-Push形式にしました。トランジスタ1石の逓倍回路でも周波数の2逓倍は可能ですが基本波の通り抜けが多いのが欠点です。 従って1石式でやるなら後続のフィルタはしっかりしたものが必要です。 Push-Push形式は基本波の通り抜けがずっと少ないので後続のフィルタが簡単になります。 安価なトランジスタを1つ追加するだけで、スプリアスの除去にたいへん効果があります。 なお、回路図のようにダイナミック・バランスがとれるようにして一段と不要成分の漏洩を低減するようにしました。

 【出力周波数
 出力周波数です。 この例ではユニバーサル・カウンタで測定しています。もちろん普通の周波数カウンタでOKです。 トリマ・コンデンサ:C6で周波数調整します。 但し、発振トランジスタ:Q1のコレクタ側の同調状態によっても幾らか発振周波数が変化します。 もしC6だけでうまく合わせ込めない時にはC4も微調整してみます。

 この状態で暫く様子を見ていましたが、10Hzの桁あたりが漂動しているようでした。 従って常に67.108864MHzちょうどが維持できる訳ではありません。 何の温度補償もしていない水晶発振器としてはごく普通の周波数安定度でしょう。(こんな多桁で見るから変動が多いように感じるのですが)

 【ダイナミック・バランスの調整前
 2逓倍器のダイナミック・バランス調整の効果を見てみましょう。 写真は調整前の状態です。 出力端子で観測しています。

 写真のように一つおきに波形の振幅が変化しています。 これは、逓倍回路のトランジスタ、Q2とQ3の特性が完全に一致していなかったり、トランジスタのベースに信号を与えるトランス:T1の2次側巻線の2つが良く揃っていない・・・などの影響があるからです。

 ゼロ・バイアスのC級増幅なので、Q2とQ3は交互に動作しており各々のコレクタ出力は合成されて出力に現れます。 各トランジスタのドライブ状態や増幅度に違いがあって一つおきに山の高さが異なっているのです。 このままの状態では基本波の通り抜けや、高調波成分は多くなっています。

ダイナミック・バランス調整後
 Q2とQ3のエミッタ間に入っている可変抵抗器:VR1を調整すると図のように山の高さが揃ったきれいな波形になります。 観測場所は同じく出力端子です。

 よく見るとまだ完全に同じにはなっていませんが、上記の状態よりも明らかに改善されたことがわかります。 この程度ならDDSのクロック用として支障ありません。 用途によっては、よりピュアな信号が欲しくなるかもしれません。それにはもう1段同調回路を加えます。

 Push-Push形式の2逓倍器は入力側のトランス製作が少し面倒ですが、それ以外は特に厄介な部分はありません。 スプリアスを抑えつつ、効率良く周波数の2逓倍が可能なので以前から好んで使っています。 逓倍器としてパワーゲインも大きいので、逓倍を重ねるような用途にも適しています。 なお、奇数次の逓倍、例えば3逓倍・・・したいときはPush-Pull型式にすると偶数次の高調波を抑制できるため有利です。ご参考まで。

                 ☆ ☆ ☆

 複雑なシステムもシンプルな回路の組み合わせです。 ごく基本的な要素回路ですが、テストしてデータをメモっておけば応用するときの安心感はずっと違います。 それぞれの回路にはクセのような物があって、それを知らないと後で問題になることがあります。 この発振+逓倍回路にも幾らかクセがありましたが試作したことで要点は掴めました。 安心感を持ってこの先の活用に進めます。

 以前、秋月電子通商で販売されていた67.108864MHzの発振器をDDS-ICのクロックに使ったことがありました。 電源を与えれば目的周波数の信号が得られるのは便利でしたが、周波数の微調整ができないのが欠点でした。少々精密な用途になるとそれが支障になったのです。 モジュールに加える電源電圧を変えると幾らか発振周波数が変化します。 その性質を利用して「周波数の微調整」を行なう例も見掛けました。  ほかに適当な代替パーツもなかったので、やむなく周波数誤差はソフトウエア的に補正する方向へ進みました。 しかしそのようなソフト処理では済まないことがあります。 そんな時は普通の方法で周波数調整できる発振器にニーズがあります。 さらに消費電流の削減は主目的ではありませんが既成の発振器よりも電源電流が少ないのも一つのメリットになりそうです。 では、また。 de JA9TTT/1


(おわり)fm

2017年1月28日土曜日

【その他】Shopping Report 2017, part 1

【2017買い物レポート:Low price Soldering kit
 【安価なハンダ付けキット
 中国製はんだ付けキットの購入レポートです。

 最近のamazonを見ていると、安価な中華製グッズが多数販売されています。 品目は従来からあったようなIT機器や家電品に限らず、半導体やCRのような電子パーツまで、さらに工作用ツールなど非常に幅広くなってきました。

 かなり怪しそうな商品を販売する業者もあって、悪い評価が重なるとアカウントを閉じて新たに別の名で商売を始めていると言ったウワサも耳にします。

 amazonですから変な商品に引っ掛かっても最終的にお金は取り戻せるのかも知れませんが掛かった手間や時間は取り返せないので慎重さも必要でしょう。 しかし非常に安価なら「ダメもと」で試してみるのもスリルがあって楽しいものです。 もし使い物にならなかったら深追いはせず半ば「あきらめる」つもりで怪しげなお買い物を楽しんでいます。(笑)

 写真は1,599円で販売されていた「ハンダ付けキット」です。 これに限らずACコード途中にスイッチが付いたタイプや、付属品の種類や数が違うキットなどたくさんの出品があります。 ただし良く見るとはんだコテ本体はどれも類似なので、あとは付属品やお値段で選んでみるのも良いでしょう。

 この1,599円のキットは(1)温度調節付きはんだコテ本体、(2)交換用コテ先チップ5個、(3)やに入りハンダ少量、(4)簡易こて台・・・・がセットになっています。 この(3)のヤニ入りハンダは錫60%-鉛40%なので「鉛フリー」ではありません。 しかし一般の電子工作にはその方が好都合だと思います。 メーカーは規制があるのでやむなく使っていますが鉛フリーは確実なはんだ付けが難しいため趣味の電子工作には不適当です。なお(3)の「はんだ」はお試し用ですし(4)のコテ台は昔の蚊取り線香立てのような構造の完全なオマケの品なので期待しない方が良いです。要するにはんだコテと交換用コテ先チップのセット販売なのです。w

 はんだコテだけでもきちんとした日本メーカー製なら5,000円以上する筈です。 それが色々付いて1,599円なのですから本当に使い物になるのか怪しそうです。 以下、評価結果を交えてご紹介したいと思います。 最初からBlogの「ネタ」の為に買ってみたのではありませんが、はんだコテに困ってもいないので半分は「ネタ」みたいなものです。 以下、もし良かったらご覧下さい。

 【温度調節付き
 分解してみれば仕組みもわかるので、調子でも悪くなったらバラしてみましょう。 しかし、評価前に分解するのも何ですから、そのままテストしてみましょう。

 ダイヤルは200℃〜450℃の目盛りがあります。 ツマミを回してみますと単なるVRではないようです。 感触からステップ状に設定できるようです。

 温度調節できると言うのがこのはんだコテのポイントでしょう。 従来型の無制御のはんだコテは連続して作業している時は良いのですが暫く手を休めて放置すると過熱してしまいました。 そのため焼け過ぎてこて先チップの酸化が進んで付きが悪くなる、更には細いコテ先なら熱で曲がってくるなどの問題があったのです。 そうかと言ってワット数の小さなコテでは少し熱容量の大きな部品にハンダ付けしようとすれば温度が下がってハンダが溶けてくれませんでした。 その点、温度調節付きのコテなら焼け過ぎが防げるほか、大きな部品のハンダ付けで温度が下がれば加熱量が増えてコテ先の温度を維持しようとするため使い勝手は優れています。

#安価なコレは本当に広範囲の温度調節ができるのでしょうか?

予備のコテ先チップ
 元から付いているコテ先チップは、鉄メッキされた耐腐食型の耐久コテ先です。 従って、大昔のように付きが悪くなったらヤスリで表面を削って磨く・・・と言うような作業は必要ありません。 むしろヤスリ掛けなどしたらコテ先を一発でダメにしてしまいます。 はんだコテ用の濡れたスポンジなどきちんとしたコテ先クリーナを使ってきれいに保てば常に快適なハンダ付けが続けられます。

 しかし、しばらく使っていると少しずつ酸化してハンダの乗りが悪くなってきます。減りにくいとは言え幾らか摩耗もあるのでいずれ交換が必要になります。 良くハンダ付け作業をするのなら予備のコテ先チップは用意しておきたいものです。
 このキットには5種類の交換用チップが付いていました。 このうち、普通の電子回路のハンダ付けで使えそうなコテ先形状は2〜3種類のように思います。 それでも予備があるのは良いことで、はんだの溶けが悪くなった時に慌てずに済みます。

 amazonで売っているハンダ付けキットには交換用コテ先チップが10個も付いてたものまであって様々です。 使い易いコテ先形状の替えが1〜2個あれば十分なので沢山はいらないと思います。 良さそうな形状の交換用コテ先が数個付いていれば十分でしょう。

 交換は簡単に出来ます。 冷えている時にヒーター部分を覆っている金属スリーブ部分の手元側にあるリングを回すとコテ先が外れます。内部のセラミックヒータを損傷しないように気をつけてコテ先チップを交換します。 なお、このキットには付属しませんが交換用ヒータも安価に売っていました。 しかしヒータが切れるほど使えば丸ごと新品を買った方が良いかも知れません。

コテ先温度の実測特性
 怪しいと思っているだけでは非科学的ですから、実際に測定してみましょう。 コテ先に温度センサの「熱電対(ねつでんつい)」を取り付けて温度を測定してみました。 左図はその実測結果です。 横軸が時間で縦軸が温度になっていて、こて本体のダイヤルで温度設定してから安定するまでの時間を追った経過がわかるようになっています。

 できるだけ小型の熱電対ということでSUS保護管入りでφ1.4mmのK型熱電対(=クロメル-アルメル:CA型)を使いました。 コテの先端部分に錫メッキ銅線を数回巻いて固定しています。 幾らか誤差はありそうですが熱容量はそれほど変化しません。極端に温度がずれることもないでしょう。 温度表示器にはadvantest製のデジタルマルチメータ:R6341Bを使いました。

 200℃の設定から実験を始めました。 通電から約2分で200℃を超えるのでそろそろハンダ付け可能になります。 その後もゆっくり上昇して10分ほどで安定状態になりました。 コテ先温度は80℃くらい設定よりも高くなりました。 誤差が大きすぎますが、実際のところコテ先が200℃ではハンダ付け作業には低すぎます。 はんだが溶けないようでは困るので意図的に高くなるようにしてあるのかも知れません。
 さらに300℃に設定してみました。設定よりも30℃くらい高くなりましたが、200℃の時よりも誤差は少なくなっています。 その後250℃に設定温度を下げてみました。 まだ20℃程度高いところで安定しますが、まあまあと言った感じでしょうか? 再び200℃の設定にしてみましたが最初の設定のように約270℃あたりで安定しました。取りあえず温度設定の再現性はあるようです。

参考温度の「自動制御」は行なっていない可能性があります。 要するにダイヤルで通電電流の加減が出来るだけで、コテの温度をフィードバックする温度の自動制御などしてはいない可能性があるのです。 安価ですから単なる「可変電力型のはんだコテ」なのかも知れません。(その可能性は否定できません・笑)
==>自身で検証はしていませんが、他の評価者によれば温度が収束するに伴い消費電流が減少する特性を示すそうです。そうであれば温度の自動制御が働いていることになるでしょう。(温度が高くなるとセラミックヒータの抵抗値が大きくなるので、そのように見えているだけかも・・・)

 左のグラフにはありませんが、450℃に設定したところ448℃前後で安定しました。設定温度が高い方で誤差が小さくなる傾向にありました。(注1) 逆に、200℃と言うのは目盛りに数字はあっても設定はできないようでした。 だいたい250℃以上でないと温度設定は効かないようです。

 以上、時間対温度の関係を見ると、どこかの温度に収束するのでコテ先の温度は制御されているように見えます。 少々誤差の大きな温度制御ですが、それなりに機能しているような感じです。 まずは「温度調節機能付き」のはんだコテと言えるでしょう。

注1:450℃の設定で使うのはお奨めできません。 測定の為のごく短時間でさえ何となくコゲ臭くなってきました。 そのまま通電しているとゴムや樹脂の部分が変形しそうです。どうやら300℃以下の設定で使う方が良さそうでした。

                   ☆

 はんだが溶けなければクレームにもなるでしょう。 しかし温度を測ってみる人はまずいません。 ですから製品個々に温度調整などしていないでしょうし簡単な検査さえも省いているかも知れません。 何しろ通電した痕跡さえもありませんから・・・。

 正常な品でもコテ先の温度には個体差(ばらつき)がずいぶんありそうです。 ここで示したグラフは私が購入した品の特性です。購入したどれもが同じになるとは限りません。取りあえず参考程度に見ておいてください。

 他の購入者のコメントによれば熱でプラスチック部分が変形したとか、中から火花が散ったと言うような物騒な事例までありました。逆に200℃の設定では温度が低くてはんだが溶けないと言うレポートもあります。 ただ、そうした異常さえなければ実用性は十分あります。耐久性などは未知数ですが「アマチュア用」として使えそうです。

 安心感を求めたり高級な性能を望むなら国産品に相応の費用を払うべきでしょうね。 チープな1,599円ハンダ付けキットを同列に並べてダメ出しをしても意味はありません。 初めから満足できそうもないならこうしたヤスモノに手は出さないことです。 しかし価格からみたらコレはこれで十分使えます。私は250℃の所にダイヤルをセットして使おうと思います。 下手な温調ナシのはんだコテよりずっとマシですからね。(笑) ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

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