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2016年9月17日土曜日

【回路】AD9834 DDS-VFO Design

【AD9834を使ったDDS-VFOの設計】
 【AD9834 DDS Chip】
 AD9834と言うDDS-ICに再び注目してみました。 このBlogで初めて本格的に扱ったDDS-ICはこのAD9834でした。 しかし、その直後にAD9850と言う別のDDS-ICを搭載したDDSモジュール・・・いわゆる「中華DDSモジュール」が安価に登場したので移行した経緯があります。 その中華DDSは既に旬を過ぎたらしく安価な入手が難しくなってきました。一つ5〜600円で買うことはもうできないでしょう。*1

 一旦はAD9850の活用に移行したDDSですが再びAD9834に戻りたいと思っています。 何故かと言えば、何と言ってもAD9834は消費電流が少ないのが魅力だからです。 しかもここ数年でチップの価格もこなれて来ました。 次なるDDSとしてAD9834は良い選択だと思うのです。 それほど高い周波数の必要がないならAD9834の性能で十分でしょう。 ただ戻るのではなく以前の試作を見直して回路全体として更に消費電流を減らせたらと思っています。 合わせてモジュール化の検討もしてみましょう。

 写真のようにAD9834は20ピンのTSSOPパッケージに入っています。ピン間隔は0.65mmです。ハンダ付けは容易とは言えませんが困難と言うほどでもありません。 左の旧型はクロック周波数の上限が50MHzでした。AD9834BRUZです。その後バージョンアップされて写真右の75MHzバージョンも登場しています。こちらはAD9834CRUZです。いずれも幾らかのオーバークロックは可能なので、もう少し高い周波数のクロックまで動作できます。

 現在では1,000円以下で入手できることもあるようです。ちょっと前に共同購入のお話があったので陳腐化しない程度に確保しておくことにしました。これからも安価に手に入る機会はあるでしょう。 AD9834は現在も販売されているDDSチップです。仕様の詳細はメーカ(←リンク)のデータシートを参照して下さい。

*1:中華DDSの入手状況(参考・Aliexpress調べによる)2016年9月現在、中華DDSモジュールは単価$8〜$12-程度で売られているようです。送料など含めて1,000〜1,500円で入手できそうです。最盛期よりも値上がりしていますが未だお買い得感は残っています。AD9834では発生できない高い周波数が必要なら手に入れておいて損は無いかも知れません。

                    ☆

 いつものように備忘録がこのBlogの目的です。 ほかのお方に特定の部品を推奨する意図はありません。メモ書きを纏めただけなので貴方が知りたいことのすべてが書かれている訳ではないでしょう。
 AD9834の制御にはマイコンを使います。基本的な使い方は以前のBlog(←リンク)にあります。  活用の際には用途に応じたプログラムを書きます。その部分のハードルが幾らか高いことはわかっています。そこは各人がニーズに合わせて考える部分なのでBlogでの対応は難しいのです。どうぞ悪しからず。 データの送り方は少し違っていますが中華DDS・AD9850用ソフトの小変更で行けます。

 【TSSOP-20 ピッチ変換ボード
 検討を始めて便利なパーツを発見しました。 写真左側の小型変換基板がそれです。以前は無かったので最近発売されたのでしょう。 変換後のピン列間隔は10.16mmです。多くのデュアルインラインICよりもやや広いですが十分にコンパクトです。

 従来は右側のような変換基板に載せて試作していたのですが余分な部分が多いと感じていました。 その点、左側の基板は必要最低限の面積に作られています。 コンパクトな製作に向いていますし、試作ではなく実際に使う際にも小型化が図れそうです。

 この基板が登場したこともAD9834で再開する切っ掛けになりました。 aitendoで2枚100円で購入できるのもFBでした。

AD9834を搭載
 さっそくチップを搭載してみました。 出来上がりは写真のように十分コンパクトなので目論み通りと言って良いでしょう。

 但しランドサイズが小さいのとメッキが鉛フリーのようでハンダの乗りが悪かったです。 フラックスを塗布するなどかなり気を付けたのですが数カ所の未ハンダが残ってしまいました。

 何回か修正して写真の程度になりましたが十分満足できる仕上がりとは思っていません。 確実なハンダ付けにはなったので良しとしました。 良質のハンダでランド部分を予備メッキしておくべきでした。

 足ピンはブレッドボードやユニバーサル基板などを治具として使って位置決めしてからハンダ付けすると列間隔が正しく揃います。

#このような状態に変換しておけばAD9834を手軽に実験することができます。

クロック発振器の検討
 DDS-ICは基準になるクロック信号に基づいて出力信号を作成しています。

 従ってクロック信号の品質は非常に重要です。 出力信号の周波数精度や安定度は使うクロックに依存します。 更にジッターのような揺らぎがあれば出力信号も揺らぎを含んでしまうでしょう。 従ってDDSのクロック源には良質の水晶発振器が望まれます。

 市販の発振器にも優秀なものがあります。しかし価格と消費電流の面で満足できませんでした。特に数mAの消費電流で満足に働く発振器の入手は難しいようでした。

 HAMにとって水晶発振回路はお手の物と言えます。ここでは自作することにしました。写真は回路検討の様子で75MHzを発振させています。 後の回路図のようにFETを使ったピアースD-G型オーバートーン発振回路を使いました。 コルピッツ型発振器と等価です。

発振回路のトランス:T1
 LC同調回路を含まず調整の必要がないオーバートーン発振回路と言うのもあるのですが回路的に苦しいようです。 周波数選択回路の無い発振回路は確実な動作に無理があるように思います。 LC回路は使いたくないし調整もせずに済ませたい・・・と言う気持ちはわかるのですが水晶発振回路としてはどうも不利なようです。

 ここではオーソドックスにLC同調回路を使ったオーバートーン発振回路にしています。 FETやトランジスタと言った能動デバイスも重要ですが、確実な発振回路を実現するポイントの一つはLC回路にあります。

 なるべくQの高いコイルやコンデンサを使います。 コイルにはVHF用の#10と言うコア材を使いました。 写真のように試作に便利なように4×4穴のミニ基板に実装しています。 今はこのような基板が廉価に販売されいて重宝しています。  写真は50MHz用のコイルで75MHz用よりも巻き数が多くなっています。 コイルの詳細は次の図にあります。

オーバートーン水晶発振回路
 3次または5次のオーバートーン発振をすれば良いのでFETを使った発振回路にしました。 FETのIdssランクにより回路の消費電流が変化します。 例えば2SK241の場合、Yランクなら5mA程度ですがGRでは10mAくらいです。 GRの方が発振勢力は強いのですがYランクでも十分でした。 消費電流を優先してYランクを使います。

 J-FETの場合、発振が始まるとゲートジャンクションでの自己整流による負バイアスが掛かります。発振振幅が抑制されるとともに消費電流も減少します。これは真空管の発振器と非常に良く似た動作と言えます。 2SK241のようなMOS-FETで同様の効果を得るには、ゲートとソース間にダイオードを追加します。カソードがGNDになる向きに小信号用のSi-Diを入れます。

 もっと高次のオーバートーン発振が目的ならゲインの大きなバイポーラ・トランジスタ(普通のトランジスタ:但しfTが高いもの)を使うと有利です。 AD9834のクロック上限周波数はオーバークロックを考えても100MHz程度です。 周波数範囲から考えて3次もしくは5次のオーバートーン発振で十分なため部品点数の少ないFETを使った発振回路にしました。 5次以上でも発振はしますが3次オーバートーン発振よりも発振勢力は弱くなります。水晶発振子を選んでなるべく3次オーバートーンで行くべきです。

 ここでは50MHzの3次オーバートーン用に作られた水晶発振子のほか、HC-49/US型で基本波が25MHzの水晶で75MHzを得る実験を行ないました。いずれの水晶発振子も図の定数で旨く発振できました。 発振周波数はジャスト50MHzや75MHzにはなりません。真値は実測で求める方法もありますが、仮の数値で信号を発生させて見ます。その仮の値で発生させた信号の周波数を周波数カウンタで測定して比例計算から補正値を求めても良いでしょう。マイコンでコントロールしますから端数の付いたクロック周波数でも支障はありません。プログラム的に補正してしまうので水晶発振器の発振周波数は調整不要です。

 50MHzの3次オーバートーン用水晶発振子は米国製のジャンク出身です。また75MHzのオーバートーン発振に使った25MHz水晶(基本波)は秋月電子通商で購入したものです。 他の水晶発振子でも3次や5次のオーバートーン発振が可能なものはたくさんありました。手持ちを試してみると面白いです。いずれ役立つ時があるでしょう。
 本来オーバートーン用ではない水晶発振子でオーバートーン発振させるのは、水晶屋さんに言わせれば邪道でしょう。アマチュア的には支障ないと思っていますが、販売を目的とした商品・製品に使うのは保証外の使い方になるので慎むべきです。専用の水晶発振子を使って下さい。

 ドレイン側の共振器はなるべくQの高いコイルを使い、同調容量を少なめにしてHigh-Lに設計すると発振が容易です。(共振インピーダンスが上がりゲインがアップするため)

AD9834 DDSモジュールの試作
 AD9834を使った「DDSモジュール」の検討として写真のように試作してみました。

 左側に検討して来たクロック発振回路が載っています。 その右がAD9834を変換基板に実装したDDSの心臓部です。 DDS-ICの出力は巻き数比2:1(インピーダンス比で4:1)のインピーダンス変換トランスを介して出力されます。負荷インピーダンスは50Ωです。 写真右側のトランスはメガネ型コアを使っていますがフェライト・ビーズ:FB801-#43にトリファイラ巻き(6t×3)で作っても同等です。

 DDS-ICの出力には「折り返しスプリアス信号」が含まれているので低域濾波器(ローパスフィルタ:LPF)の付加は必須です。 但し遮断周波数は用途ごとに異なるため外付けするようにしました。 従って実際に使うためには出力の後ろに用途・目的に合ったLPFが不可欠ですです。

 このモジュールは単独で使うものではありません。 発振周波数を制御するためのマイコン回路を必用とします。 シリアルでデータを送れば良くマイコンの種類は問いません。

75MHzクロック発振回路
 クロック発振回路は先に実験済みのオーバートーン発振回路そのままですが、コイルは7mm角のコア入りボビンに巻きました。 トロイダルコアが駄目と言う訳ではありません。

 ちょうどVHF用と言う7mm角ボビンの手持ちがあったのと、トロイダルコアとトリマコンデンサを使うよりも回路の小型化が可能だったからです。コアによる調整範囲は意外に狭い印象がありました。発振周波数に応じて巻き数を細かく加減する必用がありました。 もし新規に部品を購入して製作するならトロイダルコアを選ぶ方が確実でしょう。

 性能的にはトロイダルコアに巻いた方が良さそうでしたが実用上の差はないのでこちらを使ってみました。  調整方法の考え方は同じです。 コアを右に回し入れて行くと発振のピークが現れます。 さらにコアを右回しに押し込むと急に発振が停止するでしょう。一旦発振ピークの位置にコアを戻してから、さらに左に回して少し戻した位置で調整終了します。 調整にはオシロスコープもしくは高周波電圧計を使って下さい。簡易な検波プローブとアナログテスタの組み合わせでも何もないよりマシです。(笑)

 FETはジャンクション型の2SK19Yや2SK192AY(どちらも東芝)、あるいは最近売られているBF256B(Fairchildほか)でも発振は十分可能でした。しかしMOS型の2SK241Y(東芝)あるいは2SK544E(旧・三洋)の方が発振させ易いようです。 使う水晶のアクティビティが低いと発振しにくいかも知れませんから2SK241Yや2SK544Eを使うと良いです。足の並びは異なりますが2SK439E(旧・日立)も良い選択です。

AD9834 DDSモジュールの回路図
 上記のクロック発振回路とAD9834 DDS-ICの部分をモジュール化するための回路図です。 モジュール化せず他の回路と一緒に作っても支障はありません。

 クロックに50MHzを使う例と、75MHzの場合を例示しています。AD9834チップの上限クロック周波数に合わせて決めます。なお、いずれのバージョンでも多少のオーバークロックは可能なようです。AD9834の消費電流は50MHzと75MHzで顕著な違いはありませんでした。(1mA以下)

参考:出力電圧の半減を許容するか、200Ωの負荷で使う前提ならこのモジュールの消費電流は12mAくらいまで低減可能です。図のT2を巻き数比1:1に変更します。またR2の2.7kΩを5.6kΩに変更します。更に水晶発振のFETを2SK192AYにすることで発振部の消費電流も減少できます。出力として200Ω負荷に約300mVppが得られます。なお後続のLPFはインピーダンス200Ωで再設計しなくてはなりません。(過去のBlogに設計事例あり)

 専用の基板を作りDDSモジュールとして組み立てておくと汎用の発振器モジュールとして便利に使えるだろうと思っています。 いずれそのような基板化ができればと思います。将来の課題です。

 このモジュールは発振周波数をマイコンでコントロールします。 私はAVRマイコンを使いましたが、PICマイコンでもArduinoやラズパイなどなんでも良いです。データは3線式のシリアル伝送で簡単な方式です。 電源電圧は5Vが標準ですが水晶発振回路およびAD9834のいずれも3Vでも働きます。 一段と省電力のために3Vで使うのも良いでしょう。 なお、3Vの時はオーバークロックはしない方が良いです。

DDSモジュールを使ったVFO
 AVRマイコンと組み合わせてDDS-VFOを構成した回路例です。 ロータリーエンコーダで周波数を可変し周波数はLCD表示器に表示されます。

 図では発振周波数の上限はクロック周波数の1/3となる25MHzを想定しています。但し75MHzのクロックの場合、LPFの設計を変更すれば30MHzくらいまで可能でしょう。  またクロックを50MHzにするならLPFの遮断周波数は15MHzあるいは20MHzに設計変更する必用があります。 図のLPFは切れの良いElliptic型(楕円関数型、連立チェビシェフ型とも言う)になっています。回路図中の印が付いたコンデンサはすべて0.1μF/25Vまたは50Vです。できたら積層型セラコンを使います。

 消費電流はLCD表示器のバックライトをOFFした状態で約40mAでした。もちろんこの数字はマイコンやLCD表示器を含んだDDS-VFO全体の消費電流です。 昔から売っているLCD表示器のバックライトはかなり暗いので十分な明るさを得るためにはバックライトだけに40mAも流す必要がありました。 全消費電流80mAのうち半分がバックライトの分だと言うのではナンセンスです。 従ってもっと発光効率の良いバックライトを持った表示器に変更するか、最初からバックライトは無しで考えた方が良さそうです。

  DDS-ICをAD9834にしてクロックも低消費電流に作ったことで大幅な省電力になりました。 乾電池電源の機器にはまだ消費電流は大きめではありますがマイコンやLCD表示器を工夫すれば更に削減は可能だと思います。 しかし現状の40mAならまずまずだと思っています。 また200Ω負荷を前提でDDS部分の省電流動作を行なえばマイコンやLCDを含んだトータルで33mAくらいまで低減できました。(バックライトはOFF)

 DDS-VFOとしての機能は以前の試作品と同等です。 個別の事例ではありますがもし興味があれば詳細は以前の記事(←リンク)に戻って下さい。  SSB/CW受信機やトランシーバ向きのVFOになっています。 ここでは試作中のTCA440を使った7MHz受信機を想定してプログラムを修正しています。中間周波は3577.8kHzとなっています。 信号純度も良好なため良好な受信ができています。 AD9834を使ったVFOへの変更は受信機全体の消費電流を低減するために大変効果的でした。

参考:AD9850を使った「中華DDSモジュール」はそれ自体で150mAも消費していました。搭載されているクロック発振器により消費電流には大きな違いがあります。 実測によれば少ないもので120mA、平均的には150mA、多いものでは180mAも流れるようです。 従ってマイコンやLCDのバックライトを加えたらDDS-VFO全体では250mA近く流れていました。

DDS-VFOのテスト風景
 テストには以前開発に使った「AD9834を使ったVFO」の試作品を部分的に流用しています。

 DDS部分は新しいものに置き換え、マイコンと表示器の部分を流用しています。 クロックの周波数が異なるのでプログラムの書き換えを行なっています。
 使用を予定するTCA440を使った受信機に合わせて中間周波のオフセット量も異なるのでそれも変更しました。 取りあえずATmega8という古いチップを使っています。機能に支障はないのですがATmega168Pあるいはmega328Pへ移行したいと思っています。 プログラムはBASCOM-AVRを使って作成していてオブジェクトのサイズは5kバイトくらいです。

 自作のクロック発振器は温度補償型ではないため発振周波数は幾らか周囲温度の影響を受けます。 しかし消費電流が少ないので電源を加えてからの変動はごく僅かでした。温度による周波数変化も普通の水晶発振器並みですから十分な性能です。TCXOには敵いませんが総合的に見て既製品の発振器(SPXO)を使うよりも良好でした。

 実証実験は済んだので、実際の応用に向けて本格的に製作するのが次のステップと言うことになります。AD9834は発熱も殆どなく安心して使えるDDS-ICだと思います。スペクトルを確認しましたが、十分きれいな信号が得られています。

                   ☆ ☆ ☆

 いわゆる「中華DDSモジュール」は安価で扱い易いため一世を風靡した感がありました。 扱いが面倒な面実装型のDDS-ICが基板に実装されておりクロック発振器も搭載され使い易い形で供給されたからでしょう。しかも中国からの直輸入ならとても経済的でした。 このBlogでも様々に活用すべく検討してきました。DDSと言えばVFOへの応用が着目されがちですが、安価なので水晶発振子の代用に使うと言った利用さえ考えられたのです。しかし幾つか欠点もあって消費電流が大きいこともその一つでした。

 最近になってその「中華DDSモジュール」もそれほど経済的ではなくなってきました。 主要部品であるAD9850の調達が割高になったのでしょ うか? 安価が取り柄のモジュールでしたがいずれ供給が途絶えればそれで終わりです。 あえて高額で買うほどの品質でもありません。 新しいDDS発振器を検討しておくことにしましょう。

 中華DDSモジュールが手に入らなくなったからと言って昔に帰りたくありません。 特にHAM用機器では自励発振のVFOやVXOには戻りたくはないのです。 周波数安定度に優れたVFOの製作は部品事情から言っても難しく、またごく簡易なRigを除けばVXOと言うのもいまさらの感があります。 やはりDDSのような近代的な発振器で周波数安定度と読み取り精度をがっちり確保するのがトレンドです。マイコンを使いこなす苦労はあってもVFOとしての製作はむしろ容易です。

 価格がこなれてきたAD9834を使い自前のDDSモジュールを開発しておけば様々な活用が創造できます。 消費電流が少なく信号純度の良いクロック発振器を備えたDDSモジュールが開発できたと思います。やたらと電気を喰わないので中華DDSよりも活用範囲は広がるでしょう。 製作費用もAD9834等の価格低下で「ミズホのVFO」をずいぶん下回るようになっています。 次は具体的な活用を探りましょう。 ではまた。de JA9TTT/1

Dual Gate FETの記事はAD9834/DDS-ICが先行したため機会を改めます。

(つづき)←リンクします。(準備中)fm

2016年9月1日木曜日

【その他】a little rest

【ちょっと一休み】
遅い夏休みです・笑
 ちょっと遅い夏休みです。 いつも忙しくしている訳でもないのですが・・・。 台風が来たり、少し疲れました。

               ☆

 写真はDual Gate FETの3SK22BLです。 次のテーマはDual Gate FETにしたいと思って準備を始めたのですが、途中で疲れてしまいました。 すこし休んでからまた歩き出すことにします。

・・・と言うことで、何時かのテーマは再びFETになりそうです。

良かったらコメント欄にDual Gate FETの思い出とかご自由にお書きください。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2016年8月18日木曜日

【Antenna】 Half-size G5RV Antenna

【ハーフサイズのG5RVアンテナをテストする】
 【G5RVアンテナとは?】
 G5RVアンテナは英国のHAM:Louis Varney氏(Silent key:2000年6月28日)によって1966年ころ考案され発表されたワイヤー系のアンテナです。

 左右対称な水平のエレメントと、その中央に平衡フィーダ(ラダーライン)が接続され、その平衡フィーダと同軸ケーブルとの接続点にソータバランが置かれます。 その後、任意長の同軸ケーブルでシャックに引き込みます。詳しくはこのあと図面があります。 写真は水平エレメントと平衡フィーダの接続部です。

 このアンテナの特徴は:
(1)マルチバンドである。
(2)構造が簡単で費用もかからない。
(3)SWRは必ずしも低くならない。
(4)アンテナチューナを介して給電する必要がある。
(5)聞こえも飛びも良好である。
 ・・・・と言ったところでしょうか?(噂も含む・笑)

 SWRが限りなく1.0に近付かないと気が済まない人が多いJAのHAM局にはいま一つ人気がないようです。 SWRが1でないと言うのは『飛ばないアンテナ』と言う意味ではありません。 これは給電点のインピーダンスが純抵抗の50Ω(または75Ω)ではないと言うことですが、だから飛びの悪いアンテナだとは言いきれません。 極端な例ですがダミーロードのSWRは1.0ですが電波はぜんぜん飛びません。同じようにSWRが低くても良く飛ばないアンテナは幾らでもあるのです。

 うまくアンテナ・エレメント上に定在波が乗り、輻射効率が良ければアンテナとして機能します。その状態で給電点のインピーダンスは50ΩでないのでSWRは1にならないのです。G5RVアンテナはそのようなアンテナです。 SWRは低いが飛ばないアンテナとは対極をなすようなアンテナと言えるでしょう。 原理上SWRが低くなる筈のアンテナが高いSWRを示しているならそれは飛びも悪いでしょう。 その状態とは違うのです。G5RVアンテナはある程度高いSWRを示すのが正常なのです。

 あとは何らかの方法で50Ωに整合して使えば良いわけです。 一般的にはオート・アンテナ・チューナ:ATUを使います。 手動のアンテナ・チューナ(=アンテナ・カップラ)でもSWR=5程度まで整合可能なものなら十分使用できます。 これで送信機側から見たSWRはめでたく1.0になります。 アンテナその物はハイパワーも可能なので、送信電力に見合ったチューナがあればリニヤアンプを付けた運用も可能でしょう。

 オリジナルのG5RVアンテナは3.5MHzから28MHzをカバーします。そのためエレメント全長は約30mもあります。 ここでは目的から7MHz以上がカバーできれば良いと考えてハーフサイズで製作することにしました。  従ってエレメント全長は半分の約15mとなります。 平衡フィーダ部分も同様に半分の約6mです。 ハーフサイズなら比較的狭い敷地でも架設可能でしょう。 ハーフサイズはG5RV-Juniorとも呼ばれるようです。ハーフサイズについてはG5RVも自著で触れていますので勝手な変形アンテナと言う訳ではありません。 そもそもアンテナ・チューナで整合して使うのが前提です。バンド幅も広く取れるそうですからシビアに共振周波数を追い込む必要はないようです。 ある程度調整したらあとはチューナ任せで良いのです。いい加減が好きなワタシ向きアンテナですね。(笑)

                    ☆

 このアンテナをテストしたのは架設済みの4バンド逆Vアンテナ(←リンク)を補えるアンテナを探ることが目的です。 4バンド逆Vアンテナはトラップ形式です。また、構造上やや短縮型になるため7MHz帯では使用可能なバンド幅が狭いのが弱点でした。 具体的には下側100kHzはカバーできるものの、上側の100kHzはSWRがずいぶん高くなってしまいます。 G5RVアンテナは比較的広帯域とのことなので7MHzのオンエアを補助できれば・・・と考えています。

 結果は後ほど示しますが、一言で言って悪くないアンテナです。 ハーフサイズではなくオリジナルの寸法で作ったG5RVアンテナならHF帯を運用するHAM局のメインアンテナとして十分使えると思います。 HF帯ハイバンドでビームアンテナを主に使う局の補助アンテナとしても意外に重宝するでしょう。 マルチバンド・アンテナとして、確かにATUは必須ですがトラップ式で苦労するよりも良いかも知れませんね。

# アンテナ製作には体を動かす行動力が必要ですがお暇と興味があれば実験レポートにお付合いください。 アンテナのレパートリーが増やせるかも知れませんよ。

                  −・・・−


 【Half-size G5RVの製作図】
 図のように架設しています。 左側が架設の状態を示します。 タワーの約13mの所から傾斜型に架設しています。エレメントはφ2.0mmの裸銅線です。この銅線は古いアンテナをリサイクルしました。(笑) 地面に近い方は地上高2m程度です。 ラダーラインはエレメントにほぼ直角になるようシャック方向に引き下ろしています。

 ラダーラインと同軸ケーブルの接続点にはあとで説明するソータバラン(Sortabalun)が入っています。 そのあと任意長の同軸でシャックまで引き込んでいます。当局の場合はリグ(ATU内蔵)まで約6mあります。 なお、50Ωの同軸が良いのかも知れませんが、既設の75Ωケーブル(5C-2V)があったので、そのまま使いました。 どうせATUのお世話になるなら50Ωでなくても良いだろうと言う解釈です。 後で読んだG5RVの記事(*1)によれば75Ωでも50Ωでも支障はないようです。 要するにどうやっても定在波は立つので何でも構わないのでしょう。

                    ☆

 【G5RVによる設計法
 以下、開発者:G5RVによる設計方法を要約しておきます。オリジナルは3.5MHz〜28MHzをカバーするアンテナです。従ってフルサイズでの設計になります。
 まず、エレメントの全長ですが、14MHz帯で(3λ/2)×速度係数:VFに相当する長さにします。中心周波数を14.15MHzとすれば:

(1)水平部の長さ:LA=(300/14.15)×(3/2)×0.98=31.17m・・・・・となります。

各エレメントはその半分ですから約15.58mにします。速度係数:VF=0.98としました。

ラダーラインも同じ周波数で計算します。 ラダーラインの長さ:LL=(λ/2)×フィーダの速度係数とします。いま中心周波数は14.15MHzですから:

(2)ラダーラインの長さ:LL=(300/14.15)×(1/2)×0.98=10.39m・・・となります。

なお、ラダーラインはオープンワイヤを使うので、速度係数:VF=0.98としています。他のフィーダを使うと速度係数:VFが違いますから長さも異なります。

 以上はフルサイズのG5RVの場合なので、ハーフサイズでは何れもその半分になります。従ってエレメント全長は約15.58mです。片側のエレメントはその半分の約7.79mとなります。ラダーラインも半分で良いので、約5.19mとなります。

 あるいは元の設計を単純に半分にするのではなく、設計周波数を28.5MHzにして設計式の通り計算を行なった方が良いのかも知れません。その場合、エレメント全長は:LA=約15.47mとなり片側あたり約7.74mです。ラダーラインの長さ:LL=約5.16mとなります。

(3)給電方法:ラダーラインの終わりの部分にソータバラン(1:1)を入れるのが基本です。ソータバランのあとは任意長の同軸ケーブルでリグ(ATU付き)まで引き込みます。

 以上がG5RVアンテナのすべてと言うことになります。構造としては単純ですね。

                    ☆

上図ではG5RVの設計法に従っていない部分があります。これは初期段階に於いて種々調査しても明確な答えが見つけられなかったためです。 やむなく長めに製作して調整で追い込む方針でスタートしました。 今では設計法がわかったので、新たに製作するならオリジナルの設計寸法を基本に製作開始するでしょう。(もちろん、最初は多少長めに作ります)

                    ☆

 図の右側はラダーラインの製作図です。 ラダーラインに使うワイヤー径はφ1.6mmです。インピーダンスが450Ωになるよう線間は34mmです。φ1.6mmを使ったのは手持ちの材料の都合なので、エレメントと同じφ2.0mmにしても良いです。但し、線間の寸法を43mmに変える必要があります。定在波を載せて使いますからラダーラインのインピーダンスは極端でなければ何Ωでも良いです。 調整は主にラダーラインの長さの加減でHAMバンドにてSWRが低くなるように合わせます。

 G5RVアンテナとしてはイレギュラーな傾斜型の架設ですが十分使い物になるようです。いくらか指向性が出るのはやむを得ないでしょう。 ただ7MHzでのオンエアでは余り指向性は感じられませんでした。 垂直偏波に近くなりそうなのでローカルノイズを拾いそうですが、逆Vアンテナとの切換え比較では顕著な違いは感じませんでした。 一応、平衡型ですから不平衡な接地型アンテナよりも有利なのかも知れません。

 開発者のG5RVによるお薦めの架設方法ですが、水平エレメントはなるべく高く水平に張ることが理想だとしています。DP系のアンテナですからこれは当然です。 しかし敷地が限られるなら、逆V形式やエレメントの先端を折曲げた架設でもよく働くとしています。 他の実験者によれば傾斜型に張っても良い成績が得られたそうです。 もちろん理想型での架設でないなら条件に合わせるための調整は必要でしょう。

【ラダーライン】
 いわゆる梯子フィーダの部分です。 このアンテナの場合、バンドによっては輻射エレメントとしても動作します。 従ってリボン・フィーダよりもこのようなオープンワイヤ形式の方が有利なのではないでしょうか?

 電線はφ1.6mmの銅線です。 セパレータは次の写真に示すようなアクリル樹脂製のパイプを使いました。 割り箸をパラフィンで揚げる方法でも製作は可能でしょうが今どきかえって面倒臭いです。 それにパラフィンで揚げても割り箸が何年も持つとは思えません。ノスタルジーの追求なら別ですが樹脂製のセパレータが良いです。

 アクリル樹脂は取りあえず耐候性があるので屋外使用でも安心です。 ワイヤーとの固定は接着などの方法も考えたのですが、面倒臭いですが写真のような方法が確実でしょう。 屋外用の束線バンドを使っても良いかも知れません。セパレータ相互の間隔は30cmにしてみました。

参考:ラダーラインの設計
ラダーライン(梯子フィーダ)の設計法を以下に示します。ここではインピーダンス:Zo=450Ωで設計します。600Ωについては結果のみ示しました。

なお、d:電線の直径、D:電線の中心間距離で単位はmmです。Z0は特性インピーダンスで単位はΩです。

Z0=276・Log(2D/d)・・・・・・(1) 注意:Logは底が10の常用対数です。

いま、Z0=450Ωにするための線間距離Dを求めようとしています。(1)を変形して:
D=(d/2)× 10^(450/276)・・・・・(2) となります。

d=1.6(mm)です。 また、450/276=1.630434・・・ですから:
D=0.8×10^1.630434・・・・(3)になりますので、以下関数電卓で計算して:

D=0.8×42.70068=34.16054(mm)・・・(4)となります。

 直径1.6mmの銅線を使い、450Ωのインピーダンスをもった梯子フィーダ(ラダーライン)を作るには、2本の電線の間隔(中心間)を約34mmで製作すれば良いことがわかりました。 あるいは直径2mmの電線で作るなら電線の間隔:D=約43mmにします。

 参考 1・600Ωのラダーライン:直径:d=1.6mmの電線を使ってZo=600Ωにするには電線の間隔:D=119mmにします。また、電線の直径d=2.0mmで作るなら、間隔:D=149mmです。

参考 2・450Ωのリボンフィーダ:同じ450Ωでも最近よく使われるようになっている「450Ωのリボンフィーダ」は速度係数が違います。 450Ωのリボンフィーダを使うには速度係数:VF=0.91なのでオープンワイヤよりも8%くらい短くする必要があります。

参考 3・300Ωのリボンフィーダむかし懐かしい300ΩのTV用リボンフィーダも使用可能なようですが、速度係数の違いで長さが変わります。一般に手に入る300Ωのリボンフィーダは速度係数:VF=0.85です。一段と短くなる訳です。 なお、リボンフィーダは雨天や降雪によって特性変化するため開発者のG5RVは推奨していません。もし可能なら「中ぬき」してあるリボンフィーダを使うと改善されるでしょう。

# 損失など考えるとオープンワイヤ形式が最良のようです。

 【セパレータ】
 ラダーラインのセパレータです。 外径10mm、内径7mmのアクリルパイプを長さ50mmに切って作りました。ラインの間隔は34mmなので所定の位置に穴加工しておきます。 電線を通す穴径はφ2mmです。

 ラダーライン用として450Ωのリボンフィーダーも販売されているので購入すると手っ取り早いです。 但し、必要な約6mを切り売りしてくれる所はありませんからこのアンテナを作るだけでは余りが出て勿体ないかも知れません。

 趣味ですから手間と時間はかかっても可能なところはなるべく手作りで・・・と思いますがそれなりに大変なので、特にお奨めはしません。しかし活用できる部材の手持ちがあれば手作りは楽しいものです。

 材料費は電線とアクリルパイプの合計で1,500円くらいです。 手に入る450Ωのリボンフィーダは輸入品の特殊な物なので600円/mくらいです。 製作の手間を考えれば既製品も安いと思いますが、手作りすれば1/2以下の費用で作れます。
 
 【ソータバラン】
 ・・・と言うと聞こえは良いのですが、同軸ケーブルを直径150mmくらいにぐるぐる巻きにしただけです。12回巻いてあります。12回の根拠は特にありません。長さに余裕があったので12回にしましたが、10回でも15回でも良いでしょう。

 ボビンに巻き付けた方がそれらしくて良いのですが、面倒なので巻き束ねておしまいにしました。 これでも高い周波数では十分にバランとして機能します。 空芯ですから低い周波数ではインダクタンス不足になるためあまり効いていないかも知れません。重量があるのでロープで吊っています。

 バランは製作事例で良く見掛けるため取りあえず入れていますが、実際の効果は良くわかりません。 開発者:G5RVの説明によれば同軸ケーブル上に定在波が生じてTVIが発生するのを抑止する効果があるそうです。高い周波数のHAMバンドでは意味があるでしょう。

 G5RVアンテナと称するものは色々なバリエーションがあって、給電点に1:4のバランを入れている例も見掛けます。梯子フィーダのインピーダンスを同軸ケーブルのインピーダンスに変換しようとする意図でしょう。しかしこの考えは梯子フィーダ部分に定在波が立っていないことが前提なので、G5RVアンテナの動作から言えば間違っています。 また1:1の一般的なコア入り強制バランを使う例もあるようです。 米国ではすべてを含むG5RVアンテナのキットがたくさん市販されていますが、中には勘違いしているキットも見掛けます。

 殆どのHAMバンドで給電点インピーダンスがリアクティブになるためコア入りのバランは適当ではありません。 条件次第でしょうがコア入りの1:1バランは損失による過熱のため損傷する危険があると指摘されています。 十分なインダクタンスは得られませんが磁芯のない同軸バランならどのような状況でもあまり問題は起きないようです。 コア入りのバランを避けるよう記述している例も見ますが、そのような理由からです。

 同軸ケーブルは使わず、すべてラダーラインで給電しリグの近くに平衡型のアンテナチューナを置く方法があります。 これは良い給電方法で、もちろんこの場合は途中にバランなど入れる必要はありません。 ラダーラインには定在波が立っていますので他のケーブルや金属から十分離して引き込む必要があります。

【SWR特性・初期状態】
  左図は作ったままの初期状態のSWR特性です。 横軸の左端が1MHz、右端が100MHzです。対数目盛りになっています。 縦軸は一番下の赤いラインがSWR=1です。縦軸一目盛りの刻みは約2.0です。

 マーカーは7MHz、14MHz、28MHz、50MHzの各HAMバンドに相当する共振点を示していますが何れも周波数は低めです。 主目的の7MHzバンドは6.456MHzでSWRがもっとも低くなっています。このままではHAMバンド外なのでアップする必要があります。 他のバンドも全般に低めなので調整する必要があるわけです。 これは当然でエレメントおよびラダーラインともに調整を見込んで長めに作ってあるため共振周波数も低くなるのです。 しかし設計値そのままを作ったとしてもまったくの無調整では済まないようでした。もちろん架設環境しだいだと思います。

 G5RVアンテナのSWRはかなり高いので一般的なSWRメータでは少し測定しにくいようでした。ケーブルの途中に挿入するインライン型のSWR計はSWR=3を超えると不正確になります。 ここではネットワーク・アナライザと方向性結合器を使って測定しています。画面はリターンロスの値をSWRに換算した表示になっています。 ネットワーク・アナライザを使ったのは稼働率を少しでも上げる意味もあります。 そうでもしないとネットアナは使用頻度がたいへん低いので完全な遊休設備になってしまうでしょう。w

 最近ポピューラになって来たアンテナ・アナライザでも類似の測定が可能でしょう。当たり前ですがアンテナ製作に向いています。但し、よほどのアンテナマニアでもないと使用頻度は非常に低いでしょう。大抵のHAM局には勿体ないです。 工夫次第なので高級な手段が不可欠と言う意味ではありません。従来型のアンテナ・インピーダンス・メータやSWR計でもあらかたの様子はわかります。 もちろんビジュアルな測定器を使った方がわかり易いのは言うまでもありません。

 測定場所はシャックのリグの近くまで引き込んだ同軸ケーブルの先端です。 ケーブルを含んだ測定になるため予め同軸ケーブルの影響を確認しておく必要があります。 数mのケーブルを追加して周波数特性の変化を見るのです。 アンテナその物の共振周波数はほとんど変化しませんが、ケーブル自身、あるいはケーブルとの相互関係で現れる共振点は追加のケーブルによって変化するので簡単に判別できます。

 ものの本によれば「アンテナの特性は給電点で測るべし」と書いてあります。それが理想かも知れませんが実際の使用時にはケーブルでシャックに引き込みます。 従って実際に近い状態で測定するのもあながち不合理ではないと思っています。但しケーブル長の影響を良く確認しながら測定する必要があるわけです。

参考:予め電気長がλ/2のn倍(nは整数)になるよう調整した同軸ケーブルを用意しておき測定する方法があります。別のアンテナの例ですが、バンドごとにケーブルを用意して実際にやってみたところたいへん旨く測定できました。但しそのようにしなくても上記のような注意を払えばHAM局のアンテナ調整には支障ないようでした。

 【SWR特性・調整後】
 左図は調整後のSWR特性です。 横軸の左端が1MHz、右端が100MHzです。 縦軸は一番下の赤いラインがSWR=1です。上の特性図よりも変化が大きくなったように見えますが、わかり易いように縦軸一目盛りの刻みを1.0に変更しています。

 アンテナ建設の目的から7MHzを最優先に調整しました。 具体的にはエレメントの長さを短くするとともにラダーラインも短縮しました。 従って既出の製作図面よりもエレメントもラダーラインも短くなっています。

 図面の寸法から始めて、調整ではエレメントは両端それぞれ15cm程度カットしています。 さらにラダーラインも約1mカットしました。 マルチバンドで使用するつもりならエレメントは逆に数10cmくらい長くし、ラダーラインの方を長さ5.2m程度(かなり短くする)を目安にスタートすると良い筈です。*1 7MHzのSWRはやや高くなりますが14MHz、28MHz、50MHzのSWRは低くできます。ハーフサイズのG5RVアンテナでは28MHzがもっともSWRが下がるバンドになります。 個々の周波数で調整できないため、このあたりは各バンドの兼ね合いではないでしょうか。 最後は妥協と言うことです。(爆)

 マーカーは7MHz、10MHz、14MHz、28MHz、50MHzバンドに相当する場所を示しています。 画面の下部に各マーカーの周波数とSWR値が数値表示されています。 7MHzはSWRの底が旨くHAM-Bandに入りました。 しかし、他のバンドでは底の周波数が上の方に上昇し過ぎています。 エレメント長とラダーラインの加減で7MHzの共振周波数を上げながら、他のバンドのSWR最低点がが高くなり過ぎないように出来そうですがその方法も程度問題なので妥協が必要でしょう。

 なお、もともとWARCバンドはあまり考慮されていないアンテナです。10MHzはSWR=7近くあるのでオンエアには適しません。ほか18MHzや24MHzもSWR=5以上なので旨くATUでチューニングできないかも知れません。また21MHzもあまり良くないようです。 使用予定はありませんが28MHzと50MHzはまずまずFBなようです。(以上、ハーフサイズのG5RVアンテナの場合です)

【7MHzの詳細特性】
 7MHzの特性を詳細に観測しています。 横軸の中心は7MHzです。横軸一目盛りは50kHzでリニヤスケールです。 また、縦軸はいちばん下の赤いラインがSWR=1で、縦軸一目盛りは1.0です。 マーカーは7.0MHz、7.1MHz、7.2MHzに置いています。

 このように7MHz帯を優先に調整したのでまずまずの特性になりました。但し、いちばん低くなる所でもSWR=2.5くらいあるのでATUの併用は必須です。 7.0MHz〜7.2MHzでSWRの急変がないのでHAMバンド全体で使う事ができます。 どうやらうまく目的の特性が得られました。 これで良く聞こえて飛んでくれれば言うことなしですね。

【WSPRで飛びのチェック】
 今回もWSPR(←リンク)で飛び具合のチェックをしてみました。 盛夏の7MHzですから、コンデイションはいま一つで飛びは良くありません。 特に昼間の7MHzは遠方にはぜんぜん飛んでくれませんねぇ・・・。

 なるべくコンディションが上がって来た時刻を見計らって確認してみました。 既設の4バンド逆Vアンテナとの比較で検討したいと思います。 WSPRを使った比較ではG5RVの方が指向性が少ない関係で北米方面は有利な感じでした。 逆Vは南南東方向への指向性からオーストラリア東岸、ニュージーランド方面には明らかに良いようです。 逆Vアンテナの方が架設条件が良いため幾らか有利なようですが、送受ともG5RVの方が良いケースもあって決定的な差はないようです。

 7MHzのWSPRは7038.6kHzのUSBモードで受信します。 耳でワッチしていますと近接した周波数でオンエアするロシアの「Letter Beacon」(レタービーコン)が聞こえます。 「F」の繰り返しが7039.2kHzのウラジオストック(新潟の対岸:当局から1,000km弱)、「K」の繰り返しが7039.3kHzのペトロパブロフスク(カムチャッカ半島:約2,400km)、「M」の繰り返しが7039.4kHzのマガダン(オホーツク海北部:約2,700km)のようです。 他にも数局オンエアしているようですがこの季節あまり聞こえないようでした。

 ハムバンドに居座っていて邪魔な存在ですが、アンテナを瞬時に切り替えた時の比較に便利なのでワッチしてみました。 中距離の伝搬状態の比較ができます。 逆Vアンテナとの比較ではG5RVが良い場合と、逆Vが良い場合とがあるようでした。偏波の違いなどが原因かも知れません。 しかしノイズフロアの差なども含めほぼ同等の受信性能だと言えそうです。

参考:WSPRの継続運用
一連のアンテナ製作ではでき具合の判断にWSPRはとても便利でした。どれも普通のQSOのためのアンテナですが使っていない時はWSPRの運用に使いましょう。ずっと続けられるよう整備しています。 連続オンエアがちょっぴり役立てば良いなあ・・と思っています。


追記:【既設アンテナへの影響について
 狭い敷地・・・「猫の額」に密集して複数建設したアンテナです。しかも同じ周波数帯を含みます。 アンテナ相互の影響があって然るべきかも知れません。

 指向性への影響を調べるのは難しいですがSWRの変化は確認しています。 4バンド逆Vアンテナへの影響がもっとも懸念されましたが、実際には何ら変化は見られませんでした。
 エレメント同士が平行になるよう張ったアンテナなら影響もあるでしょう。 しかしほぼ直交した形に架設していますから結合しないようです。 4バンド逆VアンテナのSWR値への影響は認められませんしSWRがボトムになる周波数の変化も見られませんでした。7MHzほか各HAMバンドでも同様です。
 従って補助アンテナのテストと言いつつもハーフサイズのG5RVを恒久的に使おうと思っています。 接続部分を耐候性に処理するなど対策を行なっておきました。 飛び方、聞こえ方が幾らか異なるため同一バンドでアンテナを切り替えられるメリットはあると感じます。トラップタイプのアンテナと違い雨天の影響を受けにくいのもFBです。(写真は借りてきたにゃんです・笑)

                  ☆ ☆ ☆

 HAMのコールサインが付いたアンテナは沢山あります。古くはKRAUS博士の8JKアンテナがありました。HB9CVアンテナは2エレメント・ビームアンテナの代表でしょう。W3DZZアンテナも古くから有名なマルチバンドアンテナですね。飛ばないアンテナの代表はT2FDでしょうか? 但しこれはコールサインではありません。 G5RVアンテナも結構古くからあって知ってはいましたが注目したことはありませんでした。多分アンテナ・チューナが面倒だったからかもしれません。今はチューナ内蔵のリグが普通になったのでハードルはだいぶ下がりましたね。

 ハーフサイズのG5RVアンテナですが、正直なところそれほど期待していませんでした。 取りあえず7200kHzあたりまでオンエアできるようになればいいなあ・・・と言うくらいの気持ちでした。ローカルさん相手にそこそこ飛べば御の字だろうと・・・。 架設条件もメイン・アンテナと比べるとだいぶ悪くなっています。

 7MHzを優先に調整したところうまくバンド全体がカバーできました。 更に実際に使ってみると受信感度も良好で飛びもまずまずのようです。 まんべんなく飛ぶと言うわけでもないでしょうが夕刻になって北米が開け始めると他のWSPRビーコン局より逸早く太平洋を渡るようでした。 パワーやロケーションの違いもあるので一概には言えませんが悪いアンテナではないようですね。 打ち上げ角が低いのでバンドの開き始めに特に有利なのかも知れません。

 WSPRビーコンが太平洋を渡る頃にはロシアのレタービーコン「F」と「M」と「K」もQSBを伴いながら聞こえ始めます。 G5RVは結構いけるアンテナではないでしょうか。 何かダイポール以外の変わったアンテナを使ってみたくなったらお奨めできると思います。 いつか7195kHzのAMでお会い出来るかも知れませんね。 ではまた。 de JA9TTT/1

(おわり)fm

参考記事*1:タイトル:『The G5RV Multiband Antenna ... Up-to-Date』、著者:Louis Varney / G5RV、掲載書籍:ANTENNA COMPENDIUM:Volume1 、掲載ページ:pp86〜90、発行:ARRL, 1985年、現在の価格:$20-、ISBN:978-0-87259-019-9、Amazon.co.jpで購入可能、オリジナルはRSGBの機関誌Radio Communication July 1984,pp575-575からの転載です。 内容:フルサイズのG5RVアンテナについてWARCバンドを含む各バンドの波の乗り方を解説し、構造を説明しています。給電方法など使用上の注意が書いてあります。このアンテナに関する開発者自身による正式な見解や解釈がわかります。 残念ながら実際の調整法や特性の実測例が示されている訳でもないので必読とは言えません。執筆当時すでに73歳とご高齢ですからもうアンテナの製作などなされなかったのでしょう。

2016年8月3日水曜日

【Antenna】 Quad-Band Inverted-V Antenna , plus

【アンテナ:4バンド逆Vアンテナ:製作資料編】

新しくなったLow-Band Antenna
 逆Vアンテナの続きです。 写真は別のアングルから撮影したニューアンテナです。 珍しく曇天での撮影ですが、ワイヤーアンテナは晴天よりも写り易いようです。

 下から見た様子で頂角の開き具合いがわかると思います。 約100度の狭角に開いている方向が南南東にあたるため、無視できない指向性が現れているようす。ニュージーランドやオーストラリア東岸方向が有利なのは0.5WのWSPRオンエアでも明確です。 サイド方向に当たる北米はどうも不利なようですが敷地の関係もあって改善は望めません。 このあたり、アンテナは各局の架設環境の制限があるので思うに任せないのが現実ではないでしょうか?

 先のBlog(←リンク)では旧Low-Bandアンテナの劣化とニューアンテナの製作・調整、そして簡単な試験実績などを紹介しました。 その時点では製作資料は製作途中で書き留めたメモ書きのレベルで纏まっていませんでした。 その後資料のリクエストも頂き、やっとお見せできるようなイラストにできたので掲載することにします。

 自家用の記録が目的なので、あなたが知りたいことのすべてが書かれているわけではないかも知れません。 ほかに何か知りたい所があれば、支障ない限りご返事しますので製作をお考えなら遠慮せずにコメントなりメールでもどうぞ。

トラップのコイル部製作図
 1.9MHz、3.5MHz、7MHz、10MHzの4バンドアンテナです。 動作するエレメントよりも下側のバンドを切り離すためのトラップが必要です。例えば10MHzで動作する時には、その先にある7、3.5、1.9MHzのエレメントを10MHzのトラップによって切り離します。 従って一番下のバンドになる1.9MHzを除いた3.5MHz、7MHz、10MHzに共振したトラップが必要になります。
 図は、3種類のトラップのコイル部分の製作図です。 必要なことは図に書いてありますが、巻き線するためのボビンは全て外径60mで長さ120mmの同じサイズです。肉厚は1.5mmのものを使いました。 全部で6個必要ですが、ホームセンターで十分な長さの塩ビパイプが全国どこでも500円程度で購入できる筈です。
 穴は8個必要ですが、図では6個しか書いてありません。これら6個の穴はφ2mmです。 残りの2個は共振コンデンサ代用の同軸ケーブルを束線バンドでボビンに固定するための穴です。これは巻線に干渉しないない位置に現物合わせで適宜開けて下さい。

 重要なポイントはL2の寸法です。 巻き線はL2の間でなるべく均等なスペースが開くように巻きます。 一部に片寄るように巻くとインダクタンスが予定の値になりません。 巻線が済んだら何らかの手段でインダクタンスを調べておくと安心です。 値のわかっているコンデンサとGDMなどを使うと良いと思います。 図のインダクタンス値と±5%以内になっていれば支障はないです。 空芯コイルですからそんなにずれることは無いはずです。

同調コンデンサ製作図
 トラップを共振させるためのコンデンサには同軸ケーブルを使います。 必ず50Ω系の同軸ケーブルを使います。 ここでは5D-2Vを使いました。 このトラップは設計上500W程度まで大丈夫な筈です。 50Wくらいでしたら3D-2Vでも良いでしょう。
 いずれも十分な長さが取ってあるので容量値は大きめです。上記のコイルと組み合わせると共振周波数は必ず予定よりも低くなります。 コイルと組み合わせる前に容量計で初期容量を測定しておきましょう。長さあたりの容量は1cmあたり1pF見当です。

 GDMと受信機、あるいはスペアナ+TGのほかVNAなどを有るものを使って共振周波数を確認します。 共振周波数と初期容量の値から目的周波数に共振させるためにあと何cmくらい切り詰めれば良いか計算して下さい。但し一気に切り詰めないようします。面倒ですが段階的に切り詰めて行き目的周波数に合わせます。

 切り詰める方法ですが、網線を傷つけないようにビニル外被を除去します。 網線をビニル外被の端面の位置で丁寧に切り取ってから共振周波数を確認します。 少しずつ切り進めて2つのコイルの周波数が予定の共振周波数に良く合うようにしましょう。目標は±10kHz以内です。
 所定の周波数に合ったら網線を切断した部分を覆うように自己融着テープを巻いて十分な防水処理をしておきます。シリコーン系のコーキング剤を塗って固めておくのも良いと思います。 コイルのボビンに一端を固定したら適当なループ状に纏めておきます。ループのサイズは適当で大丈夫です。 前のBlog(←リンク)に写真があります。

4バンド逆Vアンテナの構造図
 図はアンテナの組み立て構造図です。 各バンド用のエレメント長は必ず図の長さよりも長い所から調整を始めます。

 このアンテナは作ったままでは使い物になりません。調整が必須です。 調整の順番は必ず高い方のバンドから・・・即ちこのアンテナの場合は10MHzから始めます。  そのようにすればバンド間を行き来する必要がなく調整の手順が一方向で済むのでもっとも合理的です。それでも1バンドあたり3〜5回くらいの繰り返しが必要でしょう。

 トラップとエレメントの接続部分は初期段階では仮に固定します。 なるべく小型の「ワイヤークリップ」を使ってエレメントとトラップの引出し線とを仮固定すると調整の自由度があります。 仮の段階でもアンテナは最終的な架設状態と極力同じになるようにして調整しないと最後の段階で共振周波数がずれてしまいます。

 アンテナの共振点が概ね予定の周波数に近づいて来たら、20cm程度の調整用のヒゲを見込んでエレメントとトラップの引出し線の部分を笛巻きにしてからハンダ付けで固定します。 ワイヤークリップは除去しハンダ付けが済んだ状態からアンテナの共振点を目的周波数に最終的に追い込みます。 この時にはアンテナインピーダンスメータだけでなく、送信機とSWR計も併用してSWRの最低点がバンド内の所定周波数に来るように微調整します。

参考;図面のエレメント寸法は概略の数値です。架設から3ヶ月後を目処に一旦降ろして状態の確認を行なう予定です。その際に延びがあれば微調整し詳細にエレメント寸法の測定を行ないます。 実測値により数値を書き換えて図面を改訂する予定です。興味があれば9月頃またご覧下さい。

応用:バンド数を減らす方法を説明します。低い方のバンドを減らす場合、一番低い周波数になるバンドのエレメントは図の値より長く必要です。一例として1.9MHzをなくす場合、3.5MHzのトラップを省略するとともに、3.5MHz用のエレメントは7mではなく、例えば7.5mのようにもう少し長く必要になります。 逆に高い方のバンドを減らす場合、すべてのバンドに影響が及びます。トラップは同じように製作して大丈夫ですが、各バンドのエレメント長はかなり違ってきます。その場合もエレメント長の加減で各バンドにアンテナが共振するように調整すればOKです。

                    ☆

  ところで、こうした資料はどれほど役立っているのでしょうかね? 私が思うにコレクションされるだけのような気がしてなりませんが? 図面がBlogに掲載されるとすかさずダウンロードされるお方があります。 しかしネットの徘徊ばかりで行動力はほとんど無いのではありませんか??(笑) どんな製作モノでも同じだと思いますが資料集めの人に何か作れる可能性はほぼゼロでしょうね。hi hi まあアンテナは架設環境が無ければ無理な話しでしょうけれども・・・。 もちろんアクティブにお楽しみのお方も存知ておりますよ!!

                    ☆

 愚痴っていても進歩はないので、アンテナ製作で参考にした書籍を書いておきます。少しでも参考にして頂き、何がしか一歩でも歩み出して頂けたらとても嬉しいです。 入手は特にお奨めしないので、機会があればOMさんのシャックとか図書館ででも眺めてみては如何ですか? それで自分に役立ちそうだと思ったら手に入れて下さい。  絶版が多いので古書店を当たる必要があるかも知れません。 どれもオークションで競り合って入手するほどの価値はないです。競るくらいなら別の新しい本を買いましょう。 高額入札などされませんように!



アンテナ製作の参考書
 マルチバンドのワイヤーアンテナと言う視点で参考にした図書を纏めています。 参照の度合いは異なりますが、製作に必要な情報は一つの情報源からだけでは不十分でしょう。 複数を比較検討する必要がありました。 また、アンテナは架設環境によって調整後の寸法が異なるのは常識なので製作データは鵜呑みにできません。 色々比較してみることが大切です。

アンテナハンドブック
 かつてのHAM局には必ずあるようなハンドブックでした。 逆に言えば、HAM局に向いているアンテナ関係の書籍は殆どありませんでした。 ハムバンドごと区切って典型的なアンテナの製作が掲載されています。 但しWARCバンド以前の書籍なので10、18、24MHzの各バンドのアンテナはありません。しかし他バンドの例で応用が効く筈です。当然ですが長波・中波ハムバンドの例もありません。

 アンテナの製作部材と加工方法、架設用の部材とその使用方法などデータは豊富です。 今でも役立つ資料は多いのですが残念ながら十分古くさくなってしまったので同様のコンセプトで「新刊」が強く望まれます。 JA6HW角居さんのようにハンドブックをちゃんとコーディネートできるお方は居られないのでしょうかね? 写真は1970年の初版です。改訂版が幾つかあります。

ワイヤーアンテナ
 ワイヤーアンテナに特化した書籍です。写真はCQ誌の別冊扱いですが後に単行本化したと思います。 1993年ですからそれほど古くさくありません。 DP系、GP系、スローパ系などワイヤーで作るアンテナの特性と製作法が書いてあります。

 上のアンテナハンドブックには登場しなかったようなアンテナもあって参考になります。 アンテナは購入するものだと思っているHAMには役立ちません。しかしワイヤーアンテナはHAM局のアンテナの基本ですから部材集めから始めて一度は自力で作ってみたいものです。 そんな時には役立つだろうと思います。 この書籍は絶版でいまは類似のワイヤーアンテナ本が出版されていますが、これを選んで紹介しました。他の書籍がダメと言う意味ではありません。 もし最近の本を買うなら大きな書店で手に取って実際に中身を見てからが良いです。いささか物足りない内容のアンテナ本もあります。読み物と勘違いしているようなアンテナ本とかも。(笑)

アマチュアのアンテナ設計
 戦前からのアマ無線の師JA1CA岡本OT(故人)執筆のロングセラーアンテナ本でした。 とかくアンテナの理論を扱った書籍は難しいものです。 しかし基礎的な電磁気学を知ることなくアンテナを論じていたら迷信じみたオカルトチックなアンテナばかりが登場してしまうでしょう。アンテナの基本的なところは常に振り返ってみたいものです。

 比較的平易な書き方でアマチュア局が良く使うであろうようなアンテナに絞り解説されています。 アンテナを理論的に扱う書籍はほとんどが教科書的なので読んでいて眠くなってしまいます。 この本は厳密さには欠けるかも知れませんがHAMの視点なので眠くならずに読めると思いました。 短縮アンテナの原理など考え方の整理にも役立ちます。1974年が初版で確か第3版までだったと思います。最終版は多少改訂されて「アマチュアのアンテナ設計法」と改題されています。類似書が無いためか古書はどれも高いので図書館の利用がお薦めです。

THE ARRL ANTENNA BOOK : 15thED
 米国のアマチュア無線連盟:ARRLのアンテナハンドブックです。 2016年現在では第23版になっています。 電波伝搬から始まりアンテナと給電の理論的な解説のほか、豊富な製作・評価例が掲載されています。 給電技術とアンテナチューナほかアンテナ系の測定器の製作記事もFBだと思います。恥ずかしいから真似てCQ誌に投稿なんかしないでね。ww

 JAの書籍では往々にして「建てました。SWRは良く落ちました。遠くに飛びました!」的なアンテナ記事が多いのですが、もう少し突っ込んだ内容があるように思います。 ARRLが監修しているので某国の商業誌とはその辺りが違うのかも知れません。 なお、英語ですので、はなから英語嫌いには「うたた寝の枕」になってしまうかも知れません。(笑) 新版は比較的高価ですが、旧版の古書なら数ドルで買えると思います。内容はそれほど違いません。なるべくなら新しい版が良いです。

HF Antenna for all locations
 『どこでも建てられるHF帯アンテナ』という英国の無線連盟(RSGB)の書籍です。 上記のARRLの書籍は機関誌QSTの内容を纏めている関係で、米国の事情に基づいた内容になっています。
 そのため島国の英国や日本のように敷地に恵まれないHAMには少々無理のあるアンテナが多いものです。

 それに対して英国のHAMは環境が似ているので類似の工夫が見られて面白いものです。機関誌RadComの記事がベースでしょうか? コンパクトなアンテナが多いように感じます。 またG5RVのような英国HAMの名前がついたアンテナなど、欧州系のアンテナも扱っているので楽しんで眺めることができました。 同じ英語の書籍でもARRLの本ばかり見ていると米国の事情しかわかりませんからね・・・。2016年現在2nd EDが登場しています。しかし購入はお奨めしません。ARRLやJAの書籍で十分でしょう。

Low-Band DXing
 HF帯ローバンドに特化したハンドブックです。かつてはLow-Bandのバイブルのような存在でした。

 リグへの言及もありますが、やはりローバンド通信の真髄はアンテナにあるでしょう。 ローバンドDX向きのアンテナについて詳しい解析が行なわれています。 ローバンドの電波伝搬に関する記述も参考になります。

 なお、DXingの書籍ですから必然的に巨大なアンテナが多くなります。 従って「兎小屋に猫の額」の当局にとっては垂涎のアンテナばかりです。 しかしローバンドに賭ける各局の意気込みや苦労はたいへん興味深いものです。  巨大なアンテナの無いQRPerは電波伝搬の特徴を捉えないとQSOできませんからバンドの性質を知る研究は大切だと思います。700ページ近い厚さの新版が出ています。Low-Bandマニアなら既に持っていますよね。(笑)

LF Experimenter's Source Book
 長波の通信に特化して情報を纏めた書籍です。 まだJAでは136kHzがライセンスされなかった時代にヨーロッパでは実験的に開放されました。 その頃から長波の通信に興味を覚えたもののJAには参考にすべきアマチュア向きの情報がなかったのです。雑多な記事の寄せ集めと言った感じでしょうか。記事に一貫性はありません。1998年RSGB発行です。絶版でしょうね。あまりお奨めするようなものではありません。

 いまではJA各局の努力で長波の情報も豊富になりましたが、先人の苦労や工夫が感じられて面白いものです。多分、いまではやらないようなことも書いてあります。(笑)

 そのまま4バンド逆Vアンテナの参考にはなりませんが、何とか活用してLF帯にオンエアしようと思い至る切っ掛けになりました。 但し、まだ実行していません。いずれは・・と思っているんですがネ。

                  ー・・・ー

 以上、ローバンドのアンテナにフォーカスしてアンテナ関連の書籍を紹介してみました。 ネットに溢れている怪しげな情報に頼ると方向を誤る危険性があります。 たまには書籍を紐解いてみては如何ですか? 何となく自分には縁遠い世界だと思っていたアンテナがあんがい身近に感じられるかも知れません。もちろんアンテナの楽しさを味わうには行動力が肝心です。



 何か作ったら纏めて情報発信できたら良いなあ・・と思っています。 アンテナは架設環境に左右されるので再現性が良くありません。 しかし自身で建てようと思った時、先達の実例は心強いものがありました。私の製作例もそうであって欲しいものです。

 部材の使い方とか、架設の工夫などアンテナの理論本には書いてありませんし、材料には時代の変化もあります。昔々のように割り箸をパラフィンで煮て梯子フィーダを作る・・・と言うのはノスタルジーでしかありません。

 新しい知識や情報はネットが頼りの面もありますが、どう考えてもおかしいアンテナもあって、そうしたものはいずれ消えてなくなります。過去を振り返えれば良くわかるでしょう。 変なアンテナに騙されたくありませんね。ネットだけに染まったのでは怪しげな小路に迷い込むかも知れませんから視野を広げておきましょう。 ではお空でまた。 de JA9TTT/1

(おわり)nm

2016年7月20日水曜日

【測定】Crystal Impedance Meter and Test Fixture

【測定:クリスタル・インピーダンス・メータとテスト治具】

Crystal Impedance Meterとは?
 クリスタル・インピーダンス・メータ:略してCIメータは水晶発振子(振動子、共振子)の評価を目的とした測定器です。
 写真はAgilent社のE4916AというCIメータです。構造や機能から見て研究開発用の測定器ではなく、水晶発振子の製造ライン向けのようです。

 測定可能な項目は水晶発振子の直列共振周波数とその等価定数です。 モーショナル・インダクタンス:Lm、同キャパシタンス:Cm、同レジスタンス:Rmのほか、並列キャパシタンス:Cpが測定できます。 もちろん、無負荷Q:Quも計算され表示されますが表示器の文字数の関係で一度に表示しきれないため切換え表示になります。 液晶表示器はバックライト付きですが余り見易くありません。製造ラインでは人が直接数値を読むことはなく、GP-IBインターフェース経由で自動測定と自動選別が行なわれていたのでしょう。 測定周波数範囲は1〜180MHzです。

 非常に古くからあるCIメータとは測定法が異なるようで、ネットワーク・アナライザ(VNA)での評価に近い測定方法で水晶定数を求めているようです。 水晶振動子の測定に特化した測定器ですからVNAのような汎用性はありません。 備考:写真で型番の下にLCR Meterとありますがこれはオプションの機能です。

 このCIメータは、Tさんのご好意でテストの機会が持てました。測定用の治具(テスト・フィクスチャ)は付属しないため製作する必要がありました。 その製作のためにテストソケットやアッテネータ用パーツまでご提供頂いたのですが完成までにずいぶん時間が掛かってしまいました。延び延びになり申し訳ないです。

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 一般的ではない測定器を扱っています。 他にも良い方法があるので水晶発振子(振動子,共振子)の評価に不可欠なものとは言えません。 偶々入手されたお方には少しは参考になるかもしれませんが殆どのお方にとって無縁でしょう。 向学の為にご覧頂くのは結構ですが入手をお奨めする意図はありません。 なお、12.5Ω測定治具はネットアナやスペアナ+TGでも役立つ可能性が有ります。製作に興味があれば前のBlog(←リンク)も合わせてご覧下さい。 以下、主として自身のメモですがお暇でしたらお付合いを。

測定用治具を作る!
 正規のテスト治具があれば一番なのですが新品は驚くばかりのお値段です。(笑) 中古品の出物でもあればメンテナンスして使いたいところですが、手動測定用アクセサリは滅多に出てきませんので余り期待できないでしょう。

 せっかくの機会ですが、あまりにも高額な出費になっても困ります。 CIメータのテストに支障のない測定治具を製作することにしました。 もちろん正規の物とは違うので測定精度に何がしかの影響はあると思われます。しかしクリスタル・フィルタの製作に使えるデータが得られれば良いのでその辺りを目標にしてみましょう。

 写真は治具のケースに相当する部分をプリント基板を使って製作しているところです。板取りと穴加工が終わり組み立てる段階です。 組立はハンダ付けによって行ないますが上手に作ると非常にしっかりした物が作れます。 基台部分はt=1.6mmの片面基板を使いサイド部分はt=1.0mmの両面ガラエポ基板を使いました。これは手持ち部材の都合によるものです。

 【テストソケットは重要部品
 こうしたテスト治具では水晶発振子を装着するソケットが非常に重要です。 数回の抜き差しでは済みませんからテスト用に作られた耐久性のあるソケットを使います。

 普通のICソケットを使ったのでは数10回の測定が限度でしょう。 比較的短時間で接触不安定が発生し安定した測定は望めません。 水晶振動子のQは非常に高く、良いものでは直列共振周波数に於けるインピーダンスは数Ωに過ぎません。 従って治具に接触不良があるのは致命的で測定器や測定方法による誤差以前の問題でありきちんとした評価はできないでしょう。

 ここではテスト用として作られたソケットを使っています。 治具の製作用として纏めて入手されたもの分譲して頂いています。 最近販売が始まったaitendoのこれ(←リンク)と類似品ではないでしょうか? 少々高いですが測定の確かさに影響しますから良いソケットを使いましょう。

 【抵抗減衰器で12.5Ωに変換
 水晶発振子の測定には12.5Ω治具を使うのが標準です。 これは一般的なHF帯水晶発振子のRmが小さいため低インピーダンスの治具を使う方が測定し易いからでしょう。 最近の表面実装型超小型水晶では励振電力が非常に小さくRmも大きいためもっと高いインピーダンスの治具を使うそうです。 

 ここでは50Ω→12.5Ω変換回路を使った標準的な12.5Ω治具を作ることにします。もっとも一般的な測定治具です。 アッテネータの製作には高周波特性の良い14.2Ω、66.2Ω、159Ωの抵抗器が必要です。精度も±1%くらいは確保したいところです。

 測定器メーカでは特注によって必要な抵抗器を作らせているでしょう。最初から厚膜印刷抵抗を使ってアッテネータ形式に作ってしまっているかもしれません。 しかし一般には入手できませんからEシリーズの抵抗器を組み合わせで作ることになります。

 実際には14.2Ωの部分に6.8Ωと7.5Ω、66.2Ωの部分に15Ωと51Ω、159Ωの部分には2Ω、75Ω、82Ωの組み合わせで製作しました。 いずれも抵抗器2個あるいは3個の直列で得ています。 誤差1%のチップ抵抗器なので無線別でも良い精度が得られました。 使用周波数はHF帯です。30MHz以上の水晶を扱うことは稀なのでストレー容量に気をつけコンパクトに作れば良いでしょう。
 テストソケット部分とBNCコネクタまでの配線はプリント基板化してストリップライン構造にするのがベストです。ユニバーサル基板では難しいので0.8D-QEVと言う細芯耐熱同軸(50Ω)で配線しました。HF帯ですから効果は同じようなものでしょう。この同軸ケーブルの芯線はかなり細いですがクラッド銅線になっているので適度な強度があります。銅喰われしないよう銀入りハンダを使いました。
 
 【測定治具が完成!
 写真のように完成しました。ネットワーク・アナライザによって周波数特性を確認したところ、概ね50MHzあたりまで減衰特性はフラットでした。治具内部の配線の関係で幾らか位相回りが見られました。

 実際にCIメータで水晶を測定する際にはショート、オープン、ロードの各校正を行なってから使用します。 この治具の素の特性が現れるわけではありませんから精度は十分得られるでしょう。 CIメータ専用と言うわけではなくネットアナ等でも使えますので良い治具ができたと思っています。 30MHzまで安心して使え、気をつけて使えば50MHzあたりまで活用できるようです。

 【CI-Meterで測ってみる
 測定治具を接続するためのコネクタは全て背面にあります。 写真のように使うためには、少々長めの接続ケーブルが必要です。 使用に際してはケーブルも含めた校正を行ないますから極端な長さのケーブルでなければ支障はありません。

 テストソケットに装着可能な水晶発振子の種類・形状は、HC-18/U、HC-49/U、HC-49/USなどです。 足ピンの太いHC-25/Uも無理をすれば装着できますがソケットのヘタリが心配なので別のソケットを介した方が良いでしょう。 HC-6/UやFT-243などの大型水晶を測定するケースは稀だと思いますが直接挿入できないのでそれら専用のソケットを介して測定することになります。 その際はそれぞれのソケットの端子間容量を実測しておき、並列容量Cpから差し引くことで良い精度で測定すことができます。 それほど高い周波数の水晶を測定する訳でもないので神経質になる必要はないと思っています。

 【10MHz水晶の測定例
 10MHzの水晶発振子を測定しているところです。 LCD表示器に各水晶定数が表示されます。 無負荷Q:Quも表示できますが、表示画面の切換えを行なう必要があって少し面倒です。仕様書によればGP-IB経由でデータを取出すことでさらに詳しい情報が得られるようです。

 いずれにしてもラダー型クリスタル・フィルタを作るのでしたら選別のためにEXCELの表に纏める必要があります。 fr、LmとRmからQuは簡単に計算できるのでわざわざ切り替えてE4916Aで表示させなくても良いでしょう。 E4916AのLCD表示ではLmはL1、CmはC1、RmはR1となっています。 また、並列容量:CpはC0で、直列共振周波数:f0はfrの表示となっています。 並列共振周波数fpは表示されませんが、fpは治具などの外部容量によって変化する値なので必要度は低い筈です。 E4916Aの表示で添字の付け方はいずれもIEC標準の標記方法です。 水晶定数の詳細については過去のBlogでも扱っていますのでこちら(←リンク)もご覧を。

 【ネットアナ測定との比較は?
 既存の測定との違いが気になる筈です。 8MHzの水晶発振子についてネットワーク・アナライザ:VNAを使って求めた値とE4916Aで測定した結果を比較してみます。 私のところではVNAによる測定を基準にしています。

 以前のネットアナでの測定では50Ω測定治具を使いました。 従ってCIメータ:E4916Aとは異なる測定治具を使用しています。いずれの測定器にもGPS周波数基準器の10MHzを供給して周波数精度を上げています。これはルビジウム周波数基準器でも良いでしょう。(外部周波数基準は必須ではありません)

 平均値から測定結果を見てみましょう。 まず直列共振周波数:frですが差異は僅かに「1Hz」でした。 周波数基準器の10MHzを与えた効果は十分ありました。 肝心のLmとCmですが、こちらは約-2〜+2.4%の違いになりました。治具の違いや測定器の違いなど考慮するとまずまずの精度で一致しており良い結果ではないでしょうか。

 Rm(=R1)の違いが少し大きくなっています。 これはNo.12とNo.17のクリスタルのR1が特に大きいためのようです。 それに伴って無負荷Q:Quの違いも-3.3%と大きめになりました。 Quの値は直接フィルタの設計計算には使いません。使う水晶の平均値を求め帯域幅との関係から設計補正に使います。従って±10%の違いなら十分な精度です。Quが大きなものを選別してその平均値を求めると言った目的には支障ないでしょう。

 直流:DCや低周波:AFでの測定と違い、僅かなストレー容量や配線インダクタンスが影響する高周波:RFの測定では測定誤差が現れ易くなります。 この比較のように違う測定法による差が2%前後でしたらとても良い再現性と言えます。同じ測定器、同じ治具を使ったとしても±2%程度の違いは容易に現れるからです。

 表はネットアナとの比較です。既にG3UURによる周波数シフト法とネットアナの比較でも精度良く測定できることが確認されています。 ラダー型クリスタル・フィルタの設計・製作に使う水晶はいずれの測定方法で求めても良いことがわかります。

 従ってアマチュア的には周波数シフト法(←リンク)がもっとも手軽と言えるでしょう。 損失抵抗:Rmや無負荷Q:Quを求める必要があるなら紹介済みの書籍:A Tester for Crystal F, Q and R : Doug DeMaw W1FB (W1FB's Design notebook, pp192 to 194)の測定治具がアマチュア的で良いです。自作の治具と手軽な測定器との組み合わせで求めることができます。関連ページ(←リンク)に帰って参照して下さい。(W1FB's Design notebookはネット上に電子データ版があります。おそらく違法なものでしょう)

参考・1:過去にも紹介していますが、測定方法と水晶定数についての比較検討結果はK8ZOAのレポート(←pdfにリンク)「Crystal Motional Parameters」に詳しい報告があります。それによると、各種の測定法の間でC1やL1で2〜5% 程度、R1では5〜20%の違いが生じています。 彼とは測定器やテスト治具がまったく異なる私の比較測定でも概ね同等以上の精度が得られています。状況から見て結果は十分信用できると考えています。

参考・2:CIメータは使い方さえわかれば誰でも簡単に水晶定数を求めることができます。便利な測定器ですが、スペアナ+TGあるいはネットアナのように主共振周波数の近傍に存在する有害な副共振の様子を簡単に見極めることはできません。*1  発振用の水晶を使ってフィルタを作ろうとする際にはこれが欠点だと思います。従って、他の方法で予備測定し共振状態を見てから使う必要があります。CIメータだけでは万全ではありません。(*1 E4916Aにはスプリアス測定モードがあります。但し画面で見るようなわかり易さがありません)

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 ラダー型クリスタル・フィルタの話しは一区切りついていたのですが残った課題があったので扱いました。これでクリスタル評価の一通りの方法と道具について済んだと思っています。 まさかCIメータまで試用できるとは思いませんでした。12.5Ω治具もできたので、様々に活用できるでしょう。
 それまで 汎用測定器でどこまで精度良くクリスタルの評価ができるか努めていた所に、CIメータの登場とは正直な話しかなり脅威を感じてしまいました。結果がぜんぜん違ったらどうしようかと心配したのです。(笑) 自身で比較評価してみた結果、いずれの方法でも良い精度の測定ができるとわかりホッとしているところです。
 振り返って見ると良い精度を得るには治具や手順の違いのような部分で差が現れ易いように思います。 慎重に行なえばどの方法でも良い再現性が得られます。当然いずれのデータを用いてフィルタ設計しても大丈夫です。違いはごく僅かなので製作段階に於いて誤差として処理できる程度に過ぎないでしょう。 上手に測定し、ばらつきの少ないクリスタルを集めることでとても良いラダー型クリスタル・フィルタが作れます。

                   −・・・−

 色々実験していると様子(窮状?)を見かねたお方からご好意を頂くことがあります。 有益な情報ばかりでなく物品のご提供を頂くこともあって恐縮しております。 ご不要品を片付けるケース(笑)もあるとは思いますが、多くは使って試して欲しいお気持ちもあるのでしょう。ですからさっそく試して結果をお知らせするのが礼儀なのでしょうね。
 しかし現実はなかなか厳しいものがあります。 私の実験リストには計画項目が溢れています。なかなか優先順位が付けにくくて比較的容易そうなものから始めている状況です。そうでなくてはリストが少しも減ってくれませんからね。 途中の割り込みも多くてもともと何をやっていたのか忘れてしまいそうです。(爆) せっかくのご好意は無駄にしたくありません。気長にお待ち頂けたなら幸いです。いつかきっとやりたいと思っています。 何だか言い訳になってしまいました。w ではまた。de JA9TTT/1

(おわり)fm

2016年7月4日月曜日

【回路】Review on Radio chip TCA440, Part 2

【回路:ラジオ用IC  TCA440のレビューと活用:その2】

TCA440を活かす
 少し間が空いてしまったのでごく簡単におさらいです。
 TCA440は欧州系のAMラジオ用ICです。 1980年前後の設計のようで、等価回路を見るとアナログICとしてあまり洗練されていません。 その為もあってか検波回路が外付けになっているのかも知れません。お陰でHAMの応用には向いているのでした。 Part-1(←リンク)で詳しく検討しています。

 ここでは7MHzのHAM Band専用受信機に使用します。しかも受信モードはCW(無線電信)だけです。 もし中波AMラジオやBCL用のような短波ラジオを製作したいならTCA440よりも洗練されたラジオ用ICがあるのでそちらがお奨めです。 このBlog内にも旧・三洋電機のLA1600、東芝のTA2003P、2SC1815のような汎用トランジスタで作る短波ラジオのページなどがあります。

 TCA440を使った受信機はCW用に開発した「クリスタル・フィルタ」の評価が大きな目的です。 評価は進行中のため、詳細は次回以降になる予定です。 ここでは試作途中のブレッドボードの様子と終わりに受信状態のムービーを掲載しました。 例によって自家用メモです。 お暇ならどうぞ。

試作回路全景
 厳密にはこのブレッドボードの他にDDS-IC:AD9850を使った局発部があるので全景ではありません。 局発部を除いたアナログ部分の全景と言うことになります。

 受信機の主要な機能を司るTCA440は左側手前にあります。 左奥のCWフィルタが大きいので合理的な部品配置には苦労しました。 これでも完全ではないのですが、いずれブレッドボードを脱却するので評価用と言うことでここまでにしています。 受信回路全体では140dB(1,000万倍)くらいのゲインがあります。最初はわずかに回り込みが残ってしまい動作不安定でした。 GNDの取り方ほか配置の入れ替えなど対策を行ない現状では安定した動作が実現できています。

 今回はICを積極的に使用しています。 他にダイオードを数本使いましたがトランジスタは一つも使いませんでした。 そのICも局発部を除けばアナログ部全部で4つだけです。 これだけで高性能な受信機が作れるのですから流石にICです。 以下、部分ごとに見て行きます。

メイン回路
 高周波増幅〜中間周波増幅のメインになる部分です。TCA440には高周波増幅、ミキサー、中間周波増幅、AGCアンプが集積されています。 写真ではほかに外付けのAGC回路が見えます。 AGC用の検波器はゲルマニウムダイオード:1N34Aです。 狭帯域フィルタが実装されているのでこのままでは意味はありませんがAM検波としても動作します。 帯域幅の広いフィルタを使い検波出力を引き出せばAM受信機にもなり得ます。

 CWの検波はダイオードを使ったリング検波器も考えたのですが、復調出力が小さいので低周波アンプを補う必要があります。 BFOも1〜2石必要でしょう。 簡略化の為にもリング検波器はやめてゲインのあるIC-DBMにしました。 IFアンプの出力はAGCによって信号レベルが管理されています。IC-DBMが飽和するほどの信号レベルにはなりません。 CWの復調にIC-DBMを使っても支障はないでしょう。

  SSB/CW受信機のAGC回路はAM受信機と最も違う部分です。時定数のほか効き方をチューニングしたので良い感触が得られました。 保持時間はSlowとFastに切り替えられます。 Sメータの動きも自然です。 TCA440に内蔵のAGC回路だけでは実現が難しいので外付け回路を補っています。

【CW検波回路
 なるべく簡略化する目的で発振回路が付いているIC-DBMを使ってCWを検波します。 SA612/NE612も候補でしたが、ここではTA7310P(東芝)を使いました。 これはTA7310Pが9Vの電源電圧にマッチしていることと、SA612より大きめの信号が扱えるからです。

 TA7310PにはDBMの他にバッファアンプ付きの発振回路が内蔵されています。 その発振回路で水晶発振させてBFOとして使います。 発振出力は内部でギルバートセル型DBMにC結合されています。 発振回路は変形コルピッツ型が構成し易くなっており、ここでは水晶発振子の周波数を下の方へ動かす必要があるのでVXO形式にしました。 なお、TA7310Pにはほかに汎用のRFアンプが内蔵されていますがその部分は使っていません。

 二重平衡型復調回路(DBM)の負荷は単純に抵抗器にしてみました。 製作後に気になったところがあったので動作点の解析をしたところ初期定数のままで丁度良い値になっていました。 パッシブなリング検波と違い検波回路自身にゲインがあります。 検波後は簡単なLPFを通り、音量調整のあと低周波パワーアンプ(NJM386BD)でスピーカが鳴るまで増幅されます。 なお、この検波回路はSSBの復調にも適しています。IFフィルタをSSB用の帯域幅に変更するだけで大丈夫です。

 TA7310Pへ加えるTCA440のIF出力はかなり絞っています。始めは少々絞り過ぎだろうかと思ったのですが全体的な調整が進んだ段階で見ると丁度良かったようです。 もう6dBくらい大きくても復調歪は起こらないと思いますが、ゲインアップした分だけIFアンプで発生するヒスノイズを聞くことになりそうです。従って現状のままがベターでしょう。

低周波アンプ
 電源電圧は9Vです。 低周波アンプには新日本無線製のNJM386BDを使ってみました。これはTI/NS社のLM386Nでも同じです。40dBくらいのゲインで使っています。 無歪で500mWほどしか出ませんが普通に受信する上で支障はありません。

 この部分は単純な低周波アンプなので簡単かと思いきや意外に厄介でした。(笑) よく考えずにやると満足できない性能になってしまいます。 ポイントがわかったので次回は一発でOKでしょう。 コツを掴めば悪くないICですね。 Application Noteそのままの単純な使い方ならともかく、私が思うに案外旨く使えていないことも多いのではありませんか?

DDS-VFO部
 TCA440に内蔵の局発回路は単なるバッファアンプとして使います。 局発としてはAD9850を使った中華DDSモジュールをAVRマイコンでソフトウエア・コントロールします。 周波数ステップは最小10Hz刻みでアナログVFOと同じようにスムースな周波数変化が実現できています。 言うまでもありませんが周波数安定度は抜群です。(笑)

 TCA440を使ったCW受信機の中間周波は約3.58MHzです。(3577.8kHz) 上側に局発周波数を取っています。 LCDにはその分を補正した実際の受信周波数が表示されます。 もともとがCWトランシーバを想定したソフトウエアです。 スイッチひとつで受信している周波数でCWの送信になります。ヘテロダインもせずにトランシーブ可能なのですから、このあたりがDDSの良いところですね。 DDSのあとに数段のパワーアンプを付ければただちにCWトランシーバになります。 詳しくはDDS-VFOのページに帰ってご覧下さい。

 この部分は最終的にパネル取付用に製作しなおす計画です。 この受信機の試作でDDS-VFOが受信機の局発用として良い感触で使えることが実地検証できました。

                     ☆

【TCA440を受信機の動画】
 ごく簡単に受信している様子を動画に撮影してみました。 夏場の7MHzはあまりコンデイションが良くないのですが、取りあえず音が出ているところをです。 AGCはファーストの時定数になっています。 幾らかノイジーなのは受信信号が弱い為です。(参考:パソコンとブラウザの組み合わせによっては旨く再生できないことがあるようです)

video

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 突発したアンテナの故障で復旧に精力を取られてしまい受信機の方はあまり進みませんでした。 それでも少しずつ細部を確認しながら回路の完成度を上げてきました。 おおむねチューニングも済んで部品定数も固まってきたのでこの後はハンダ付けで製作する段階です。 テスト受信ではCWフィルタの特性が良く現れておりオンエアしているCW波の質感がストレートに感じられます。これはちょっと凄いかも知れません。幾つか機能を充実させてメイン受信機として作りたくなってきました。

 TCA440は通信型受信機への適性はあったのでしょうか? 所詮はAMラジオのICなのでゲイン不足だろうと思い当初はRFアンプを外付けする設計でした。  しかし検討半ばでRFアンプの追加はやめました。 TCA440はそこそこゲインがあって検波回路にもゲインがあります。 そのためRFアンプはなくても7MHzのCW用受信機として十分な感度があるのです。 メーカー機の様にカタログスペックを飾りたいならRFアンプの追加は効果的でしょう。 例えばS/N比10dBで0.05μVの感度があり・・・とか書けます。 或はHF帯でもハイバンドならRFアンプの効果はあるでしょう。

 しかし7MHz帯のCWを受信して0.05μVの波は外来ノイズの深い底に沈んでしまいます。 誰も聞くことなどできません。 普通に交信できる相手局の信号は5μVどころかもっと大きいのです。 そうなるとゲイン20dBのRFアンプなど意味はないのです。もし付けたなら常にアッテネータをONで使うことになるでしょう。 送信に使えるようなマトモなアンテナを使う限りHF帯のローバンドはこれが現実です。余分なゲインはむしろ有害です。

 現状ではS/N=6dBで1μVくらいですがそれで十分な感度です。 比較に使ったメーカー機に劣らず良く聞こえますし受信フィ−リングも良好でした。良く聞こえない時はメーカー機でも聞こえません。 AGCの設定も快適なところにあります。 Sメータも小気味良く振れてくれます。 TCA440の通信型受信機への適否はもう言うまでもないでしょう。 結局、CW受信機はCWフィルタとAGCの味付けにポイントがあることが再認識されました。de JA9TTT/1

(つづく)nm

2016年6月20日月曜日

【Antenna】 Quad-Band Inverted-V Antenna

【4バンドの逆V型アンテナ】
 長い間使って来たローバンド用のアンテナが故障しました。 5月初めのことでした。 160m〜40mバンド(1.9〜7MHz)を受け持っているアンテナですから、3バンド同時にオンエアできなくなってしまったのです。 なるべく早く復旧したいと思い補修で済ませたいと考えました。

 しかし、降ろして確認したら既にそれで済む状態ではありません。 まったく新しく作り換えることになりました。 以下は、約20年使ったアンテナがどうなったか見た上で、新たに架設したアンテナをレポートしたいと思います。

 始めに書いておきます。限られた敷地から多バンドにオンエア可能なアンテナを作るのが目標です。 低性能に甘んじるつもりはありませんが、必ずしも高性能なアンテナを目指してはいません。 従って、たっぷりの土地に高性能なアンテナ群を建設したいお方が見るべき話題は何もないでしょう。 しかし、出来上がったアンテナは良く聞こえ、なかなかの飛び具合なので満足できるものになりました。

 基本的に自家用の資料であるとともに新設の記念・記録です。他のお方の役立つものではありません。 もしも見解の異なる記述があってもマジになりませんように。(笑) 以下、かなり長いので暇人向きです。その他のお方は時間を浪費せず早々にお帰りを。


 旧ローバンド用アンテナ
 旧ローバンド用アンテナは、1.9MHz、3.5MHz、7MHzのHAMバンドをカバーするトライバンドの逆Vアンテナでした。 東西に延びるエレメントの途中には7MHzと3.5MHzのトラップコイルが入っていました。(写真は在りし日の旧アンテナ)

 7MHzは無短縮のフルサイズ逆Vアンテナとして動作します。3.5MHz帯は7MHzのトラップコイルがローディングコイルとして作用するためエレメント長は短縮されます。 1.9MHzでは更に3.5MHzのトラップコイルがローディングコイルとして加わるため同じく短縮アンテナとして動作します。マルチバンド化が目的なので積極的に短縮しているアンテナではないため短縮率は大きくありませんでした。

 エレメント長は短縮されるとは言っても、1.9MHzで共振させるための追加エレメントは かなり長く必要です。 その長くなる分はさらにローディングコイルを追加して短縮する方法があるでしょう。 この例ではローディングコイルの追加による短縮ではなく、ワイヤーエレメントを付加して一種の「キャパシティ・ハット」のような動作をさせるようにしました。

 広々した土地にフルサイズのアンテナを伸び伸び張ったのとは比較にならないと思いますが、1.9MHzや3.5MHzでも国内局を相手に十分楽しめたアンテナでした。 フルサイズの7MHzはのんびりDXを楽しむにはまずまずと言った感じでした。 新設するとして、この経験を生かしたアンテナを考えたいと思います。

旧アンテナの給電点
 メモ書きによれば、このアンテナの原型を作ったのは1994年末だったようです。 以下、20年以上のあいだ屋外に架設しっぱなしで放置したアンテナの劣化具合を見ておくことにします。 故障の原因になった部分は改良し良好だったところは新設するアンテナでも採り入れたいと思います。

 写真は旧アンテナの給電点部分です。 この部分はタワーの頂部にネジ止めで固定されていました。 バランは自作の「Sortabalun」(ソーターバラン)が入っていました。 これは今なら一般的なトリファイラ巻きのバラン形式にする所ですが、もともとがSloper Antennaだったころの名残です。 だいぶ前のBlogで触れたことがありましたが、もともとスローパーアンテナからスタートし後に逆Vアンテナに変更した経緯がありました。 SloperにはSortabalunが適当と考えられたからです。

 故障の原因は自作バランから出た巻き線・・・テフロン被覆のAgメッキ線・・・をベーク板端部の圧着端子に接続した箇所の断線でした。 φ1mmとやや線径が細かったのと、積極的な防水処理を怠ったことから腐食が進み断線したようです。 なお、アンテナ・エレメントは碍子により別途固定してあり、ここには張力が直接掛からないようフレキシブルな配線で接続してありました。 断線箇所や状態から見ても応力による金属疲労ではありません。 濡れた異種金属間に発生する起電圧による電食によるらしく断線部分で痩せて非常に細くなっていました。 シャックからの観察では最初は接触不良のような症状を示しました。やがて完全に断線状態になりました。同軸ケーブルの芯線側で断線したので殆ど何も受信できない状態になりました。
 電食に対しては両エレメント間でDC的な電位差が発生しない3巻線型のバランを使った方が良かったのかも知れません。 いずれにしても、観測による雨水のphは4.0〜4.5程度とかなり酸性なので異種金属の接合部を濡らさないのが一番なようです。沿海部においては塩害も無視できません。

 断線部分を除けば防水処理が良く効いていたため状態は良好でした。 写真のように同軸コネクタも銀メッキの光沢がそのままでしたので「自己融着テープ」を巻いて処理しておくと20年でも持つことが実証されています。 自己融着テープは少し高い(一巻き¥1,500くらい)のですが藤倉のFB-Wテープと言うものを使ったと思います。 アンテナに安価なビニールテープなど論外です。それでは1年も持ちません。

トラップ・コイル
 20年ものあいだ空中にあったトラップコイルです。これは7MHzのトラップです。 写真左側はコイル部分を覆っていた自己融着テープを剥がした状態です。  自己融着テープも幾分か表面は劣化していますが、その下は良く保護されており、巻き線下のボビンの塩ビ管も初期のような艶がありました。

 巻き線はフォルマール線(PEW線)ですが、この状態も悪くないものでした。 コイル部分の完全な防水処理は困難なのである程度雨水の浸入はやむを得ないと考えるべきです。 表面に水滴が付けば共振周波数に変化が起こりアンテナとしての共振点も下がるのが普通です。 しかし、晴天になれば案外短時間で元の状態に復帰するのでそれほど気にしないことにしていました。

 ボビンに使った塩ビ管は比較的直射日光に強いのですが、それも程度問題で20年も曝されれば表面はだいぶ劣化します。 それでも程々の強度は維持できているようでした。 しかし写真で見るように張力の掛かった部分で割れが発生しています。 もっと厚肉の塩ビ管もあるのですが重量がずいぶん増えるので思案どころでしょうか。 張力が掛かる部分はアンテナ全体で8カ所あった訳ですが割れたのはここだけでしたので薄肉のパイプでも結構大丈夫だとも言えそうです。新しく製作したトラップでは張力が掛かる部分の穴位置を端部から5mmほど奥の15mmの位置に変更して強度対策しておきました。

同調コンデンサ
 この写真は7MHzのトラップコイルです。内部に見える同調コンデンサにはガラスエポキシの両面プリント基板を使っていました。 表裏のパターン面積を加減すれば任意の静電容量が得られ、また銅箔パターンの周辺に十分な絶縁部分を設ければ十分な耐電圧が確保できたからです。

 同調用コンデンサは送信電力が高々10W程度でも1kV以上の耐電圧が欲しいところです。 そうなるとなかなか良いコンデンサがないのが実情でした。 そのため両面プリント基板でコンデンサを自作したのです。

 しかし、以下の2点から両面プリント基板で作ったコンデンサは旨くなかったようです。 まず、建設当初からの問題です。 送信するとSWRが徐々に変化する現象が見られました。 数kWもの電力ではありません。 僅か数10Wのパワーでもチューニングしている途中でSWRがだんだん変化して行くのです。 詳しく観察するとSWRがボトムになる周波数が移動して行くようでした。
 最初は原因不明でしたが結局この同調コンデンサの問題でした。 エポキシ樹脂は優秀な絶縁材ではありますが高周波における誘電体損失は意外に大きいようです。 ガラエポ両面基板で作ったコンデンサのQuは小さいのです。 そのため送信時の電力で損失が発生し発熱による温度変化でコンデンサの値が変化することから共振周波数が変動してSWRが変化するのでした。送信をやめて暫くすれば元に戻るので発熱現象に間違いないでしょう。 ガラエポ基板ではなく高周波特性の良いテフロン基板なら良かったのかもしれませんね。

 もう一点はエポキシ樹脂にはあまり耐候性がないことです。 写真で見るように直射日光に曝されたであろう部分では劣化が進んでいます。 表面にはコーティング材を塗布しておいたのですが効果は薄かったようです。 このように内部のガラス布が見える状態に風化していました。 直ちに絶縁耐圧低下とはならないでしょうが、劣化が進み易い材料は長期的に懸念がある訳です。 そのような訳でトラップの同調コンデンサが新しいアンテナでの課題となりました。

ワイヤーの劣化
 アンテナエレメントのほとんどの部分はφ2.0mmの銅線を使っていました。 しかし、トラップコイルの引出し部分など一部にφ1.6mmの電線も使っていました。

 緑青を噴いており酸化が進んでいますが、目立った太さの変化はないのでエレメントその物はあまり問題なかったようです。 但し接続した部分で断線が何回か発生しその都度補修した経緯があります。 切れるのは決まってφ1.6mmの部分のように思うので1.6mmでは太さが足りないのでしょう。 風による揺れで細い部分に金属疲労が集中したのかもしれません。 単なる逆Vアンテナならともかく、途中にトラップがぶら下がるアンテナは風圧を受け易く重くもなるのでエレメントに太さが必要なようです。

 なお被覆電線を使うと腐食には強くなりますが被覆材料によって波長短縮率に大きな変化が現れます。 波長短縮係数:0.96の計算から求めるエレメント長よりも大幅に短くなります。 被覆材の経年変化や耐久性に疑問があるのでアンテナ線には常に裸銅線を使ってきました。 耐久性の点では鉄芯の上に銅が被せてある「鋼銅線」が良いのですが入手性は良くないようです。 むかし使ったことがあるのですが固くて扱いにくいのであまりお薦めしません。 錆びないステンレス線を使いたい所ですが抵抗値を見てしまうとどうも・・・。 結論として太めの裸銅線が良いようです。

ロープの劣化
 写真はPVロープと称する一般的な荷造り用だと思います。 あまり耐久性はないと思っていましたが、一度も切れたことはありませんでした。 写真は太さ6mmのものです。 主にアンテナエレメントの端部を引くステーに使用していました。

 ただ、写真で見るように表面は紫外線と風雨による劣化が進んでおり柔軟性もなくなっているようです。 表面がササくれてトゲ状に飛び出していたので、素手での撤去作業は危険な状態でした。 それでもかなり長い寿命があるようで感心しました。劣化してもぼろぼろ崩れるようなものではなく、意外に強度も残っていました。断面を見ると中心部分は大丈夫そうでしたから太さの有るものを使っておけば長期間使えそうです。

 樹脂製品は耐候性に劣るものが多くモノによっては1年も持たないことがあります。 例えばポリエチレンやポリプロピレン製のおかず入れはダメな素材の代表です。 あの半透明の容器は安くて加工が容易なのはFBですが紫外線には弱くて屋外に曝し1年も経つとグズグズになります。 アンテナのマッチングボックスなどに使いたくなりますが、屋外に常設するアンテナの部材としては不適当です。 以前、1.9MHzループアンテナのマッチングボックスに使って酷い目に遭いました。 一般的な物としてはベークライト樹脂、ポリカーボネート樹脂や塩ビ材などが比較的安心できる材料です。

                     ☆

 以上、旧アンテナの劣化状況など観察してみました。アンテナの部材の長期的な劣化を具体的に示した例はほとんど見ないのではないでしょうか。いずれ撤去したアンテナは廃棄してしまうので写真を残して記録しておきました。 良く材料を選んでおけば少なくとも10年くらいは安心して使えるアンテナが製作できるのではないでしょうか。 高所作業は危険を伴うので大変です。アンテナ工事で何がいちばん大変だったかと言えば、タワーの天辺まで登ることでした。2回登っただけでもうたくさんです。 頻繁なメンテナンスは避けたいので吟味した材料で作っておきたいものです。 でも、高所がお得意でしょっちゅうアンテナを交換して楽しみたい人には材料の耐久性など関係ないのかもしれませんね。hi hi



新アンテナの製作
 新たに製作するのはトラップタイプのインバーテッド・V型アンテナです。旧アンテナと同じ形式です。オーソドックスですが「妙な名前」が付いたアンテナよりも確実でしょう。まあ、どんなアンテナを建てるのかは各局のお好みですけれど。(笑)

 新アンテナは4バンドで製作することにしました。 従来の1.9MHz、3.5MHz、7MHzに加え10MHzを追加します。 基本的な構造は踏襲します。 バンドが一つ増えるのでトラップが2個追加されます。 3バンドでも調整は厄介なのに4バンドではさらに製作・調整の手間は増えることになります。 各バンドともにあまり短縮されていないためコンパクトなアンテナではありません。 従って市販の多バンドアンテナと比べて輻射効率はかなり良好です。 手間は増えてもきちんと調整すれば実績のある間違いのないアンテナです。

 ここ暫く10MHzは付け足し程度にオンエアしていました。 別のロケーションでグランドプレーンアンテナを建てていたこともあるのですが、何故か10MHz帯のアンテナ整備が疎かになっていたのです。 間に合わせに傾斜型のDPアンテナを上げていたのですがいま一つなようでした。 実は「いま一つ」には大きな理由があったのですが、原因がわかったのはこのアンテナを作り始めてからでした。対策を行なって試したところ非常に改善されたのでもっと早く気付けば良かったのですが・・・。 新しいアンテナでは10MHz帯の冷遇状態を改善するために4バンドで行くことにします。

以下は新しいアンテナの製作過程を撮影したものです。 

トラップコイルの製作
 旧アンテナを継承して外径60mmの塩ビ管(薄肉)をボビンに使用しました。 入手容易な材料でありながら、耐久性があってしかも高周波特性も優秀だからです。

 写真は10MHzのトラップ用に巻いたコイルです。 巻き線にはφ1.6mmのフォルマール線(PEW線)を使いました。 写真の10MHz用はQu=450くらいあって非常に良いコイルになりました。塩ビ管のボビンは見かけは良くありませんが高周波特性は良好です。

 今回の4バンド逆Vアンテナでは、10MHzと7MHzのトラップコイルにφ1.6mmのPEW線を、インダクタンスが大きく巻き数が多くなる3.5MHzのトラップにはφ1.2mmのPEW線を使いました。 密着巻きを避けスペース巻きにし巻き径と巻き幅の比率が1:1〜1:2の範囲になるようにしてQが高くなるようにしています。 7MHz用がQu=480、3.5MHz用がQu=440になりました。何れも2個のコイルの平均値です。 せっかくコイルのQが高くても、同調コンデンサのQが低くてはトラップとしての性能は低下します。 良いコイルができたら、こんどは同調コンデンサの選定が非常に重要でした。

トラップに使うコイルとコンデンサ
巻き線が終わったコイルは自己融着テープを巻いて耐候性を向上させます。 コイルに密着する物体によってはQの低下を招くことがあります。

 比較テストによれば自己融着テープの影響は大きく見ても数%に留まるようです。 Qもインダクタンスも影響は僅かでした。 従ってこのようなRF部分にも安心して巻くことができます。(以上はHF帯での考察です。V/UHF帯以上では再評価を要します)

 上に並んだ同軸ケーブルは同調コンデンサとして使用します。 50Ωの5D-2Vですから100pF/mの容量を持っています。 やや長めに作っておき次項のような周波数調整の際に徐々に短くカットして行き目的周波数にチューニングします。 コイルの方を加減するよりも容易です。

 トラップに使う同調コンデンサには耐圧が高く損失の少ないもの・・・Quが高いもの・・・が必須です。 新アンテナの製作では真っ先にトラップに使うコンデンサの検討から開始しています。 最初、高耐圧のセラミック・コンデンサを検討してみました。 頂いた物を含め、手持ちから幾つも試したのですが残念ながらいずれもHF帯ではQが小さいのです。ガラエポ基板のコンデンサと似たようなもので、この目的に対しては使い物にはなりません。どれもQu=150〜250くらいでした。同じセラミック・コンデンサでも温度補償系の誘電体材料を使っているものならQは高いようです。しかし、十分な耐電圧の手持ちはありませんでした。秋葉原で手に入る高耐圧セラコンは基本的にRF回路にはダメだと思った方が良いようです。(バイパス・コンデンサ用には良いが、共振回路やフィルタ等には使わない方が良い)

 一般的なコンデンサとしてはディップド・マイカコンデンサがHigh-Qでした。 但し耐電圧500Vのものしか手持ちにありません。 ハイパワー局ではなくても耐圧数kVは欲しいところです。 今の時代ですから希望の部品はネット通販でたいてい入手可能です。 しかしお値段を見てビックリです。 高耐圧のマイカコンを必要数購入したらメーカー製のアンテナが買えてたっぷりおつりが来るほどでした。(笑)

 あっさり同軸ケーブルの採用に決めました。 同軸ケーブルはコンデンサではありませんが使用されている絶縁材のポリエチレンは非常に高周波特性の良いものです。 そうでなくては途中の誘電体損失でケーブルロスが馬鹿にならないでしょう。 信頼できるメーカーの同軸ケーブルを使えば安心できます。私は藤倉製の5D-2Vを使いました。

 実際に同軸ケーブルで作ったコンデンサのQを評価したところ、少なくともQu>1000はありそうなので目的に対して十分でした。まあ、そんなこともあって採用した訳なんですが・・・。 耐電圧も5D-2Vでしたら5kVくらいは楽々です。 切断した末端の加工を工夫すれば放電してしまうことはまずありません。  問題は網線(編組)への雨水の浸入です。 これに対しては接着性が良く耐候性のあるシリコーン系のシーラント(セメダイン8051N)で防水処理を行ない、さらに自己融着テープを巻いて対策しておきました。(注:耐電圧はメーカー保証値ではなくユーザーとしての期待値・笑)

参考:テフロン同軸ケーブルも良好でしたが、細い物しか手持ちがなかったので採用しませんでした。 適度な太さが有れば優秀な「コンデンサ」として使えます。


トラップの共振周波数調整
 合計で6個のトラップについて共振周波数を調整しなくてはなりません。 塩ビ管に巻いたコイルと同軸ケーブルで作ったコンデンサをハンダ付けしたら個々に共振周波数を調整します。

 調整にはデジタル表示付きのグリッド・ディップ・メータ:GDMなどが最適です。 アナログ目盛りのGDMの場合、必ず無線機でディップ点の周波数を確認します。 トラップが所定の周波数で共振するようにコンデンサ(同軸ケーブルの長さ)で調整します。 非常に良くディップしますのでGDMのコイルとトラップを過度に結合させないように注意します。 あまりラフに作ると目的のHAMバンド内でSWRが下がってくれません。

ネットアナで共振周波数調整
 なにも高級な測定器が必要な訳ではありませんが、あるものを温存して活用しないのでは勿体ないです。 GDMでも十分なのですがこの際ネットアナの稼働率を上げることにしました。 写真は7MHzのトラップを調整している様子です。

 グラフィカルに表示されますから調整は容易です。写真の横軸:中心周波数は7MHzで横軸1目盛りは50kHzです。 黄色のトレースが伝達特性でトラップにより共振点で60dB以上のアイソレーションが得られそうなことがことがわかります。 当然ですが共振周波数を外れるとアイソレーションは悪くなります。 SWR特性にも影響が及んできますがマルチバンドアンテナなので割り切りが必要です。

 共振周波数は正確に合わせるべきです。 私の場合、10MHzのトラップが10.125MHzで、7MHzのトラップは7.070MHz、3.5MHzのトラップは3.530MHzに共振するよう調整しました。 せめて±10kHzくらいには合わせたいと思います。  共振の鋭さからトラップコイルの良さが判断できます。 これはGDMでもすぐわかります。 良いトラップは共振周波数でとても鋭くディップします。 ディップがブロードならそのトラップはイマイチでしょう。

完成したトラップコイル
 調整が済んだトラップコイルです。 高耐圧コンデンサの代用にした同軸ケーブルですが、写真のようにループ状に纏めてしまっても殆ど影響が無いことを確認しています。 ここに使う束線バンドは耐候性のあるものにします。 屋内配線用の束線バンドでは1〜2年で必ずダメになるでしょう。

 よく見てもらうとわかりますが、同軸ケーブルの先端部分は芯線側を長く残しています。 ある程度芯線の部分を残して編組(網線)の部分を切り詰めて行き共振周波数合わせをします。 このようにすれば芯線と編組の間で十分な沿面距離が稼げるので耐電圧を保つことができます。 芯線と網線をプッつり同じ位置で切断したのでは沿面距離が足らず耐電圧が下がってしまいます。

 なお、コンデンサ(同軸)とコイルとの接続ですが、同軸の芯線がアンテナの給電点寄りで網線側がアンテナの給電点から見て外側のエレメントに接続されるようにするのがコツです。 そうしないと周波数の高いバンド側で周辺の物体の影響を受け易くなるようです。

参考:このトラップのアイソレーションは非常に良好です。建設途中でトラップを出た外側のところでエレメントの切断事故が発生しました。 それでもトラップ内側のバンド(周波数が高い側のバンド)の共振周波数変化はごく僅かでした。 これが意味するところは高い方のバンドから共振点をジャストに調整して行けば良いと言うことです。 低いバンドをいじっても高い方のバンドに影響は及ばないので調整を逆戻りする必要は無い訳です。もちろん逆方向はダメです。

給電点は市販のバランで
 給電点には市販のバランを使用しました。 耐候性や防水性能など構造を考えると自作品も相応の部材費用がかかります。 バランを作ることが目的ではないので、今回は手っ取り早く市販品で済ませることにしました。

 内蔵されているバラン回路は一般的な平衡型アンテナ用のバラン形式になっています。 たいへんオーソドックスなものでトリファイラ巻きの一つの巻き線がIN/OUTの所でライン間を結んでいる形式です。 同軸ケーブルの不平衡をアンテナ側の平衡に変換するインピーダンス比1:1の標準的な形式です。 外観から一見するとトロイダルコアが使ってあるように見えますが、棒状のフェライトコアが使ってあります。 トロイダルコアでは容易に磁気飽和してしまうため安心して大電力を扱えません。 開磁回路になるため磁束は漏れますがこの種のバランでは飽和しにくい棒状のフェライトコアを使うのが常套手段なのです。(ラジオ用バーアンテナのコア材でも良いバランが作れます)

 このバランの耐電力は1kW(PEP)だそうです。 そんなにハイパワーは要りませんが機械的な強度が十分ありそうなので形状が大きなコレを選びました。 シリコーン系のシーラントでネジ止め部分を耐水処理しておきました。 こうすれば長期間持ってくれる筈です。
 エレメントにはすべてφ2.0mmの銅線を使いました。裸銅線は入手しにくいため屋内配線用VVFケーブルの被覆を除去して使っています。 バランを出た両側で電線の被覆が30cmほど残してありますが、これはタワーとのショートを防ぐ意味からです。しかし十分な距離が取れたのであまり意味がありませんでした。

                   ☆ ☆ ☆

【製作資料について】
 コイルの諸元やエレメントの長さなどの詳しい製作データは別のBlog(←リンク)に纏めてあります。 もし同種のアンテナを計画されているようでしたら合わせご覧ください。(2016.08.03)



新アンテナの架設と評価
 トラップタイプの4バンド逆Vアンテナです。 簡単にイメージできるアンテナですので簡単な紹介にとどめます。 約15mのタワー頂部に滑車を固定し、滑車に通したロープに給電点のバランを結んであります。

 旧アンテナでは給電点はタワーの天辺にボルト止めでした。 アンテナの両端がロープで上下できたので、調整はそれほど困難ではありませんでした。 それでもハイバンド側(7MHz)の調整では調整ヒゲの部分が地上まで降りて来ないのでタワー途中まで何回も登りました。 今度のアンテナは10MHzを含むので前よりも高い所まで登る必要が出てきます。 作業性を考えて両端だけでなく給電点も滑車で上げ下げ自在にしておくことにしました。長期間信頼できそうなステンレス製の滑車は意外に高価(¥3.5k)でした。w

アンテナの調整について
 調整にはアンテナ・インピーダンス・ブリッジ(自作)とSWRメータ(自作)を主に使用しました。 昨今流行のアンテナ・アナライザがあればFBなのですが、頻繁にアンテナを上げる訳でもないので私にはかなり勿体ない感じです。hi

 写真のような自作の道具でも特に不満は感じませんでした。手前のプログラム電卓はコイルの設計・確認用です。 一般に給電点の複素インピーダンスを求める必要は殆どありません。調整作業に於いて要は共振点をHAMバンド内へ追い込むだけです。やることはごく単純です。 おおよそ共振点のインピーダンス(純抵抗分だけになる)が読めれば普通は十分です。
 HAMが使うアンテナのほとんどは輻射エレメントを使用周波数に共振させて使います。 非共振型のアンテナ・・例えばT2FDなど・・は効率が良くないからでしょう。 GDM+SWRブリッジのような簡単な道具でもエレメントの共振点は容易に見つけられます。それで概略のインピーダンスもわかりますからアンテナの調整には十分使えると思います。

 必ず長めのエレメント長から始めます。従って調整初期には共振点がHAMバンド内にはありません。SWR計で探ることはできませんからインピーダンス・ブリッジを使ってどこで共振しているか見つけます。変な共振点にさえ気をつければフィーダーの手元(シャック側)で観測しても大丈夫です。 まずは適当な長さを切り詰めて共振周波数の変化量から共振点がバンド内にくる切断量を比例計算してみます。
 一気に切断はせず、それよりやや少なめに切って様子を見ます。 共振点がバンド内に入ったらSWR計も併用して微調整します。必ず最終的な架設状態と同じ条件で共振点を確認するようにします。 このような繰り返しを高い周波数のバンドから低い方へ向かって順番に行なうことになります。 最終的には全体を再チェックして終了となります。

 一つのバンドあたり3〜5回の上げ下げが必要です。 今回は給電点が上下できるので調整は容易でしたが、バンド数が増えたため以前にも増した手数を要しました。 調整とは言ってもやることは単純です。 しかし、エレメントが建物や植木に干渉するため、一気に上げ下げできないため厄介でした。 ロープを押さえる役目を家内に手伝ってもらったのですが、意味がわからない者にはただ同じことの繰り返しで目に見える進捗が感じられず如何にも無駄な作業に思えたようでした。(笑) それでも何んとか初期の目標に合ったアンテナができたようです。 完成後はビールが旨い!・・・と言う何時ものパターンでお祝いしました。(笑) 以下、架設された状態です。

アンテナの概略構造
 ワイヤーアンテナは写真に写りにくいので「見える化」処理を行なっています。(笑) タワーの最上部付近から東西の両方向へ傾斜型にエレメントを張っています。 従って、いくらか南の方向へ指向性が発生しているようです。このあとのテストでもそのような傾向が感じられました。
 頂角は約100度くらいでしょうか。 狭角の逆Vアンテナなので給電点のインピーダンスは75Ωよりもずっと低めになっているようです。インピーダンスはバンドによっても変わりますが50Ω系の5D-FBケーブルで給電しています。

 10MHz、7MHz、3.5MHzの部分は補助柱まで素直に引き降ろすことができます。 しかしその先の1.9MHz分のエレメントはまっすぐ延ばしたら敷地内に納めることができません。 そのため何らかの短縮手段が必要です。 その辺りの構造は以下の写真で説明します。

(1)10MHzは短縮なしのフルサイズで而も給電点が地上高約λ/2になる関係で打ち上げ角が低くDXには有利でしょう。 後のテストでもダイポール系のアンテナとしてマズマズの飛びのようです。

(2)7MHzはやや短縮型になります。しかし15%程度の短縮ですからフルサイズに遜色ないと考えられます。 トラップタイプなのでバンド幅がとれないのはやむを得ない感じです。 予想通り200kHzフルカバーは無理でした。 中心周波数を7050kHzあたりにしてCWバンドを含むバンド下側に合わせておきました。

(3)3.5MHzも20%少々の短縮なのでまずまずのようです。SWRが良好なバンド幅はやや狭いのですがHAMバンドその物が75kHz幅しかないのである程度割り切って使えば問題ありません。 SWRのボトムは3530kHz付近ですが、もう僅かにアップしても良さそうです。 上の方に点在する3.8MHz帯へのオンエアは無理そうですね。

(4)1.9MHzはバンドが5kHzしかないので良く調整すれば簡単にフルカバーできます。 国内局が相手なら現状で十分満足できます。  DX局の多い1.8MHz帯は課題ですが、どうしても出たくなったら応急にエレメントを足してオンエアすることにしましょう。ワニ口クリップ付きの補助銅線を先端に足せば簡単に共振周波数を下げられます。

各バンドのSWR特性
 各バンドのSWR特性をグラフ化してみました。 1.9MHzはバンド幅が狭いので横軸の1目盛りを1kHzにしています。他のバンドは10kHzです。

 短縮していない10MHzはSWRのボトムがバンドのもう少し上の方にあるようです。 しかしSWRはバンド全体で十分低いためこのままでも良さそうです。

 7MHzはバンド幅が広いので下半分しかカバーできていません。トラップの共振周波数とエレメントの共振周波数の関係でSWR特性が少しうねっています。CWを主に運用するならまずまずでしょうか。 7.2MHz付近のAMに出たくなったら少しエレメントをカットしましょう。(笑)

 3.5MHzもCWを主にオンエアするなら丁度良いところで共振していると思います。バンド上端の方は常連さんがいつも出ているようですからこれで丁度良いでしょう。

 1.9MHzはバンド幅がわずか5kHzしかありません。 共振点は丁度バンド内に入っているので全般にSWRは良好です。 短縮アンテナで、しかも折曲げている関係から共振点でもSWR=1になりませんが、SWR=1.5以下なのでまったく支障ありません。

 特に7MHzと3.5MHzではSWRの立ち上がりが急峻でバンド幅が狭いように感じるかもしれません。 これはトラップ形式で尚かつ短縮型のアンテナなのでやむを得ません。短縮率の大きなメーカー製マルチバンドDPや5バンドGPアンテナではもっと急峻なカーブを描きます。 このアンテナはあまり短縮していないのでずいぶんマシです。 従って、こうしたアンテナは自作品、市販品を問わず自身の運用状況に合わせた周波数に良くチューニングする必要があります。

 今ではRigに内蔵のアンテナチューナを併用してオンエアするのが普通なので、概ねSWR=3程度まで使用可能範囲と考えています。 実際にSWR=1に旨くチューニングできますし、その状態で飛び具合も良好です。 ケーブルには少々定在波が立ってはいますが・・。(追記:2016.06.20)

アンテナの端部の状態
 上の全体写真では良くわからなかったと思います。 この写真では、アンテナの給電点(タワー)は画面とは背中の方向にあります。 写真のように端部まで引き下ろしたら、1.9MHzのエレメントはこのように折り返しています。 敷地面積が不足しているのですから1.9MHzの分は何とか短縮する必要がある訳です。

 余ってしまうエレメントの短縮にはローディングコイルを入れる手があります。 おおよそ数10μHのHigh-Qコイルを入れてやれば「調整ヒゲ」で共振調整できるようになるでしょう。 しかし、そのようにすると1.9MHzで非常にHigh-Qなアンテナになり、5kHzのバンド幅でさえカバーが難しくなることがあります。 また数10Wのパワーでさえ先端放電が起こることがあります。 このようにエレメントを折曲げると輻射効率は悪化すると思われますが一種の「キャパシティ・ハット」のような短縮作用で共振させることにしました。

折り返し部分の全体は以下の写真に示しておきました。

1.9MHzの折曲げ部分
 1.9MHzの折曲げ部分を全体で見た所です。 このようにジグザグになっています。 このようにするとアンテナとしては不利なのですがやむを得ません。 こちらは西側のエレメントですが東側のエレメントもほぼ同じ構造です。 建物や樹木の影響など東西のエレメントに対して均等ではありませんがSWRは良く下がっており、見る範囲では特に悪い影響は感じません。

 このような形状のアンテナですからSWRは下がっても飛びは悪いかと言えばそのような感じは受けません。 電波の輻射に寄与する「電流腹」の部分が地上高のあるタワーの所ですから意外に良く波が出るのでしょう。 6つのトラップコイルは分散したローディングコイルの構造と等価なので短縮型アンテナではあっても幾分有利なのかもしれません。

 ダイポール系のアンテナですから接地型アンテナよりも周辺のノイズに対しては間違いなく有利なようです。 ローバンドアンテナは大きくて大変ですがこんな方法もあると言う一例です。 国内局相手に普通に飛べば良しとして高性能を狙ったものではありませんがその目標は達成できていると思います。

 余談ですが135kHzのアンテナはなかなか困難で、今のところこの逆V-ANTをT字型に結んで接地型アンテナとしてオンエアするしかありません。非常に低性能ですが仕方ありません。なにしろ波長2200mですから住宅地ではマトモなアンテナは不可能に近いです。 475kHzバンドならずっと楽なんですが・・・。

10MHzの飛び具合
 お空のコンディションは時々刻々で変化しています。 図はWSPR(←WSPRnetにリンク)を使って飛び具合の様子を見ているところです。

 WSPRは標準5Wで送信することになっています。オーバーパワーになっては旨くありません。測定誤差も考えられますが終端電力計でPo=5Wにセットしてからテスト・オンエアしました。

 あまりコンディションの悪い時では参考にならないのでバンドがオープンして来たころの様子を見ました。 画面は2016年6月14日、JSTで言えば17時17分のものです。 夏至も近いので日没まであと一時間半くらいと言った時刻です。(参考:2016年の夏至は6月21日、日没19時4分@当地)

 6月のこのバンドは日の出から午前中はほとんど遠方へ飛ばないようです。時刻によっては関東平野を出るのも難しいほどでした。 昼を過ぎると少しずつ良くなり日没前から夕刻・夜半に掛けてかなり開けてきます。 僅か5Wの波ですが米フロリダやオーストラリア南部まで届いている模様です。

参考:時々0.5Wにパワーダウンしてオンエアしています。かなり良く飛んでいます。

 WSPRは誤り訂正機能を持った通信形式でノイズレベル以下から信号の復調ができます。CWのような旧式の電波が5Wで届くと言う意味ではありません。それでもパスが存在することがわかります。 なお、条件が異なる他局のデータを並べる訳にも行かないので自局の飛び具合のみ参考として示しておきました。 リアルタイムにバンドの状況を調べたいならWSPRnetに直接アクセスして下さい。

 感想として標準的な10MHzアンテナだと言う印象を持ちました。 給電点が高くなった分、前に使っていた傾斜型DPよりは良さそうです。 常にオーストラリア方向が良好そうでしたが南に傾斜している関係で幾らか指向性が出ているようです。 このバンドで適度に遊ぶのには良さそうです。 まあ、ダイポール系のアンテナですからビームANTには敵いませんけれどネ。(笑)

注意:WSPRのオンエアには所定の電波形式で免許申請が必要です。送信はせずワッチのみでSWLレポート送る参加方法もあります。ネットの常時接続が必要です。

7MHzの飛び具合
 こちらもWSPRでやってみました。 昼間は国内程度の近距離しか飛びません。 これは他のWSPRオンエア局の様子を見ても同じような感じでした。 夏場の昼間は頑張っても中国大陸までと言った感じです。

 日が落ちて夜になると電離層のD層・E層での減衰が少なくなりF層による反射で遠方まで良く飛ぶようになってきます。 左図は2016年6月13日、JSTで言えば21時11分の様子です。 夏場の7MHzですからあまり飛ばないと言う先入観がありましたが、メキシコ湾岸の局やタスマニアの局あたりまで飛んでいるようでした。 北極圏が白夜になっているためかEuへのパスは開けにくいようです。暫く様子を見ていましたが、何とか北欧あたりまでと言った感じでした。

 冬場になればアフリカやEu方面も十分期待できるのではないでしょうか。 フルサイズではなくなったので少しバンド幅は狭くなりましたが、飛び具合は以前とあまり違わない感じです。短縮率から考えてもそれほど輻射効率に違いはないのでしょう。SSBでは苦しいでしょうがCWならDXingも不可能ではありません。(笑)

                    ☆

 3.5MHzと1.9MHzは主に夜間にワッチしてみました。 今の季節、DXは最初から期待していませんが国内各局の信号がFBに聞こえてきます。 それぞれ交換しているレポートなどを参考にすると似た感じに聞こえているのではないかと思いました。 弱い局も良く拾えているようです。 このあと少し落ち着いて来たらじっくりオンエアしてみたいと思っています。  さらに半年先の晩秋からのローバンドシーズンが楽しみと言ったところです。

                   ☆ ☆

 リグのバンド切換えだけで4バンドにオンエアできるアンテナはなかなか便利です。 10MHzも含めたことで一段と多バンド化しましたが旧アンテナと遜色ない程度のアンテナに仕上がったように思います。 問題であった送信電力によるSWRの変動も感じられませんから今度のトラップコイルは成功のようです。 このアンテナの完成で1.9MHz〜1200MHzの全バンドのアンテナが揃いました。

 今の季節、晴天ともなれば強烈な日差しです。なるべく曇天を選んで屋外作業を行ないました。それでも汗だくですっかり日焼けしてしまいました。 急な建て替えなのでやむを得ませんがアンテナは春先や晩秋のころ建てるのが良いようです。真夏や真冬はやめましょう。hi このアンテナ、また10年くらいメンテナンスフリーで働いてくれれば有難いと思っています。こうしたアンテナの製作〜建設は精緻な部分とおおざっぱな作業が混在するのでなかなか面白いと思いました。ではお空で会いましょう。 de JA9TTT/1

つづき)←詳しい製作データを掲載したつづきにリンクします。fm